コロナ禍で迎える東日本大震災10年目の今年 、宮城県仙台市の荒町商店街振興組合が「荒町地域リモート大合唱プロジェクト」を実施した 。子どもたちが作詞したまちの応援歌『1人じゃできないから』が、地域の15団体約400名の参加者によってリレー形式で歌い上げられ、Webで配信されている。
「ぼくは ぼくの町を こんな町にしたいんだ」とまちへの想いがつづられたこの歌は、荒町小学校の3年生が2年生の時に作詞したもの。子どもたちは、生活科の“まち探検”の授業で商店街の店主たちから話を聞いて学んだり、店主たちが講師を務めた授業で“回文団扇”づくりを行ったりしたことで、「こんなに素晴らしい町のことを誰かに伝えたい」という思いが沸き上がったという。その想いは歌詞になり、音楽発表会で披露された。
ちなみに回文団扇とは、柿渋を塗った団扇に回文(上から読んでも下から読んでも同じ文になる言葉遊び)を書き入れたもので、商店街が地域の特性を生かした活動として、一昨年の夏に復活させた幕末の特産品だ。次世代への文化継承として荒町小学校に寄贈したところ、子どもたちに実際につくらせたいとの依頼が寄せられ、店主たちが授業をすることになった。
「子どもたちとの関わりの中からこんなに素敵な歌が生れるなんて、すごく感動しました。作詞した3年生のほとんどが震災の年に生まれたということもあり、震災10年の節目に、まちの未来を想い描くこの歌を地域の応援歌として、荒町の皆で歌いたいと思ったんです」と、荒町商店街振興組合の副理事長・庄子康一 さんは「荒町地域リモート大合唱プロジェクト」発足のきっかけを語る。
こうして、「自分たちのまちだけでなく被災して復興の道を歩む全てのまちの人々に、荒町からエールを贈ろう」とプロジェクトが立ち上がり、地域の学校や施設等に声掛けが行われた。その結果15団体約400名が賛同、昨年の10月から各団体ごとに合唱の動画撮影が進められ、1月にはそれらの動画が組み合わさった“大合唱”が出来上がる。編集作業では、庄子さんのお店(理容室・ビーアークプール) の常連客というつながりから、映像・音楽のクリエイターも協力。まさに『1人じゃできないから』という歌のタイトル通り、地域の人々のつながりの中でこの動画はつくり上げられていった。2月11日には完成報告会が行われ、合唱動画はYouTubeにて配信、3月11日まで閲覧が可能となっている。
さらに、合唱に参加できなかった人も一緒に被災地へエールを贈れるようにと、ピンキーリングスタンプ(小指スタンプ)での参加の呼び掛けも。市民センターの1階にポスターが掲示されており、現時点ですでに2000以上のスタンプが集まっているという。
「震災の時や今回のコロナのような困難な時こそ、近くの人と協力して、この歌が伝えてくれているように、“1人じゃできないからみんなで力を合わせて乗り越えていこう”という気持ちが大事なのではないかと思います。この歌で1人でも多くの人にエールを贈ることが出来れば」と、庄子さんは力強く想いを述べた。
リモート大合唱の様子は、荒町商店街振興組合のHPにて閲覧が可能。
https://www.aramachi.info/