ラベンダー畑の絶景やテレビドラマ「北の国から」のロケ地として有名な北海道の観光地、富良野。その街中で、地元らしさを大切にした素朴なおもてなしの取組みを続けている新あいおい商店街(新相生商店街振興組合)が、この度、商店街のPR動画を自主制作した。
コロナ禍で観光客が激減するなか、「こんな厳しい状況だからこそ、逆に楽しいことをやってみたい」と、北海道商店街振興組合連合会の「商店街域内消費喚起事業」を活用して作成したそのPR動画は、ミステリー仕立てで、脚本は、富良野塾(「北の国から」の原作者・倉本聰さん創設の私塾)の卒業生が書下ろした本格的なもの。撮影・制作は、商店街にオフィスを構えるデザイン会社「フラノデザイン」が担当した。
動画のタイトルは、『新あいおい商店街物語 第一話 おにぎりデカ、登場』。撮影の舞台となったのは、富良野駅から徒歩5分の距離にある「北眞神社分祀(通称:へそ神社)」だ。新相生商店街振興組合が2017年に、街のシンボルになるようにとの思いを込めて整備した神社である。
ある朝、へそ神社の中で、理事長の大道久さんが倒れているのが発見された。これは殺人事件か、といつもは平和な商店街が騒然とする。そこに現れたのが、理事の西川啓輔さん。西川さんは、商店街の人々の話を聞き、事件の謎に迫っていく。おにぎりを食べながら・・・という独創的なストーリーの中には、組合の加盟店のPRもふんだんに含まれている。
富良野は、市民演劇の盛んな地域である。1984年に富良野塾が開塾し、全国から脚本家や役者の卵が集まってきた。そんな彼らが卒塾後に当地で演劇集団を起こし、それが、富良野塾閉塾後10年を経た今もなお活動を続け、独自の作品作りや、演劇を通したワークショップ、学校演劇鑑賞会用のパントマイム劇などを恒常的に開催している。こうした動きに触発され、地元の富良野高等学校にも演劇同好会ができ、それを市民が応援するという風土が育まれているという。
「演劇のまち富良野を、新相生商店街の皆で楽しく盛り上げよう」と、できあがったこのPR動画は、地元に根を張って活動するプロの脚本家によるオリジナルの脚本を、商店街の店主やスタッフたちが素人ながらも本気で演じた、いかにも富良野らしい作品だ。撮影は、気温マイナス10℃の中で2日間に渡り行われたが、それでも、誰もが楽しそうだったと、理事の吉田幸生さんは振り返る。そして何より、異なる世代の商店街のメンバーたちが一緒になって一つの作品をつくったことで、今まで以上に組織としての一体感が生れたという。「今回、私たち年上の世代がつくった街のシンボル『へそ神社』を舞台に、若い世代の人たちと一緒に作品をつくったことで、活性化の取組みが若い世代のメンバーへとしっかりと受け継がれていく、と感じました。動画を見た街の人たちからの反響もとてもいいので、ぜひとも第2弾の制作を目指したい」と、吉田さんは熱く語った。
※新相生商店街振興組合のPR動画にはこちらからアクセスできます。⇒https://www.facebook.com/furanoioi/