東京都世田谷区の商店街「ハッピーロード尾山台」(通称)にて、10月31日(土)、11月1日(日)、毎年恒例のイベント「尾山台フェスティバル」が、オンラインで開催された。主催は、尾山台商栄会商店街振興組合。注目すべきは、近隣の東京都市大学の学生が90人も協力しての開催となったことだ。
石畳のプロムナードが特徴的なハッピーロード尾山台の「尾山台フェスティバル」は、昭和63年(1988年)にその石畳舗装の完成を祝して開催されたのが始まりだ。以来このイベントは回を重ね、振興組合の加盟店のみならず、老人会やPTAなど近隣団体も参加する“地域の祭り”として多くの人々に親しまれてきた。
しかし、コロナ禍の今年、その開催に待ったがかかる。「自粛期間は解除されたものの7月には東京都の感染者数が再び増加し、狭い商店街の通りに人を集めるフェスティバルの開催は不可能だと思えました。でも、30年以上も継続してきたものを易々とあきらめたくなかった」と商店街振興組合理事の高野雄太さんは当時の心境を語る。「コロナで苦しい状況でも頑張っている商店街の姿を、地元の皆さんに是非とも見てもらいたい。そういう強い気持ちで可能性を探ったところ、オンラインでの開催はどうか、となったんです」
そこで高野さんは、東京都市大学の学園祭の実行委員会に声をかけた。デジタルに明るい世代の助けなしには、オンラインのイベントは成功しないと考えたからだ。同商店街は地域住民とともに、自分たちの街での暮らしを豊かにするアイデアを話し合う「おやまちプロジェクト」という取組みを行っているが、そこに都市大学の大学生たちも参画しており、日ごろから関係を築いている。その“つて”を生かした。実は、今年、都市大学ではコロナ禍で学園祭が中止に。活動の場を求めて、なんと90人もの学生の有志が、「尾山台フェスティバル」の企画運営への参加を表明した。
商店街が決めたプログラムの柱は、「デリバリー」「YouTubeによる配信」「ハロウィン企画」「商店街のゆるキャラ企画」の4つ。その各々に、学生たちが具体的なアイデアを肉付けしていく。8月から開催当日までの3か月間、高野さんが参加した学生とのミーティング(=Web会議)は優に50回を超えたという。まさに商店街と学生たちは二人三脚で、準備期間を駆け抜けた。
こうして実施されたプログラムは、イベントのHPから商品を注文すると学生が自宅に届けてくれる宅配サービス「おやフェスデリ」(商店街の19の加盟店が参加)、大学生がDJとなり、商店街バンドや地元の中高の吹奏楽部や太鼓部などのパフォーマンス動画をライブ配信する「おやふぇすちゅーぶ」、自宅で仮装した姿を撮影してSNSで送り、オンラインでハロウィーンパーティーとコンテストに参加する「OYAMDAI HALLOWEEN PARTY」、尾山台のゆるキャラ・オッポンとZoomで一緒に遊ぶ「オッポン広場」。その他にも、イベント後に店舗へ足を運びたくなるようにCM動画を作成してYouTubeで配信したり、店主の人柄をSNSで紹介したりと、大人から子どもまでが楽しめて、商店街の店舗の紹介にもなるユニークでアクティブな内容となった。 当日は、150件もデリバリーの依頼が入り、配達担当の学生たちは大忙し。自転車で商店街の通りを何度も行き来した。売上は50万円を上回ったという。
学生たちからは「学園祭がコロナで中止になった時に、声をかけてもらえてうれしかった」「商店街のイベント、それもオンラインイベントを企画するのは初めてだったので、大変だったがやりがいがあった」「機会があったらまた地域の祭りに参加したい」との声が上がっているという。「学生たちが一所懸命にやってくれました。彼らのアイデアと機動力には心底感心しましたし、自分たちもそこから多くのことを学ばせてもらいました。こうしてできた学生たちとの太いつながりを、これからの商店街の活動に是非とも生かしたい」と高野さんは感謝の気持ちと抱負を語った。