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メイド・イン・商店街の“メロン”がつなぐ地域の輪【東京都葛飾区・堀切ラッキー通り商店街】

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メロンの苗は、病気を防ぐため土台にカボチャが接ぎ木されている。そのため、カボチャが育ってしまったというハプニングも

 下町の風情漂う東京都葛飾区。区の観光名所である堀切菖蒲園周辺には5つの商店街が隣接しており、その中の一つ堀切ラッキー通り商店街の店先では、ある珍しい果物が鉢植え栽培されている。8月に収穫を迎えたその果物とは、温室で育てられるのが一般的な「メロン」だ。

 この取組みは、空き店舗が増え活気を失いつつある通りのイメージアップを図ろうと2016年に始められた緑化活動だが、商店街の組織力を強めようという目的もあった。

 「最盛期には100あったお店も、現在は31と減少しました。人通りや地域の交流が減った今、商店街を盛り上げるためにはまず、中の結束を強めることが重要で、そのために、皆で同じことに取り組もう思ったんです。インパクトがあるからメロンの鉢植えにしてみました」と、同商店街で会長を務める岩崎修さんは語る。

 そうはいっても誰もメロン栽培など経験がなく、まずは役員だけで挑戦したところ、なんとか実を付けることに成功。そこで2年目からは全会員に参加を呼びかけ、商店街全体での“メロン栽培”を本格的にスタートさせた。わからないことだらけの状況がかえって良かったのか、互いにアドバイスをし合ったり成長過程を報告し合うなど自然と会話が生まれ、以前に比べ格段にコミュニケーションの機会は増えていった。そうして街の雰囲気も明るくなり始めた頃、嬉しいことに買い物客の方から「何を育ててるの」、「自分も参加したい」と声を掛けられるようになったのだ。

 その様子を見た岩崎さんは、地域の人との交流が増えることで、メロンの網目の様なネットワークを広げていけると確信した。そこで、3年目からは地域住民も巻き込んだ「メロン育て隊」を結成。苗の配布会から、肥料や防虫剤の配布、育成相談会の実施など、栽培に関して商店街が全面的にサポートを行った。8月には収穫際も催し、ミニ物産会にカットメロンのおもてなし、さらには育てたメロンの重さを競う品評会も開いたところ、育成者のモチベーションも一気に上がった。

今年の収穫祭はコロナの影響でカットメロンの配布は中止となったが、1位から3位までと、抽選で当たった人へ、なんとメロン1玉が丸々プレゼントされるという参加者には思わぬ“ ラッキー ”も

 しかし、これまで順調に歩を進めてきたかといえば、胸を張って“成功”とは言えない状況だという。年によって実付きや甘さなどメロンの生育状況はまちまちであるし、参加者の増加が売り上げアップに繋がっているわけではない。「このまま取組みを続けるべきなのか」と先行きを懸念する声も上がり始めていた。
 そんな時、背中を押してくれたのは街の人たちの存在であった。「この活動をずっと続けていきたい」と表明する人が現れ、その“愛ある言葉”にメロン育て隊が奮起。揃いのTシャツやフラッグの制作へと取組みは広がっていった。今年は新型コロナの影響もあり、収穫祭は規模を縮小しての開催となったが、集まった人たちは例年と変わらずメロン談議に花を咲かせ、新たにメロン提灯やメロンマスクも登場し話題を呼んだ。

「 メロン育て隊 」のシンボルとなっているメロンマークが、メンバーTシャツやメロン育成中のフラッグなど様々な所にデザインされている

 「このメロン栽培を通じて、行動を起こせば必ず力になってくれる人が現れると実感しました。ここで得た絆を活かしながら、もっと商店街に人を呼び込んでいくために、現在、空き店舗を利用したコミュニティハウスの運営も計画しています。そこで全国のメロングッズを販売して街中をメロン一色にし、また、近隣にある農産高校の生徒さん達が育てた農産物などを販売し、若者と街の繋がりを深めたい。そんな夢を抱いています」と、岩崎さんはさらなる意欲を燃やしている。

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