疫病を退散するという言い伝えのある妖怪「アマビエ」が巷でブームになっている今夏、岩手県盛岡市の肴町に、8月20日、商店街を歩き回る三匹の妖怪の足跡が突如出現した。
この足跡は、岩手大学の「地域課題解決プログラム」で創り出された。同プログラムは、学生の積極的な地域社会への参画を促すために、地元企業や団体、自治体などから課題を募り、学生の研究テーマにするというものだ。肴町商店街振興組合青年部は、今年2月、「肴町における高齢者にやさしいアーケードのデザイン」というテーマでこれに応募、プログラムの開始時期は、新型コロナウイルスの拡大時期と重なった。
「感染防止のため外出機会が減ってしまった高齢者が運動不足になり、肥満や体調不良、認知症の進行などで困っているというニュースを見て、商店街でこれらの問題が少しでも解消できないか、と考えました。高齢者の方に肴町を楽しんで歩いてもらって、気がついたら結構歩いたね、ついでにこんなお店もできたんだね、というような仕掛けができないものか、と。そこで、是非ともこのプログラムでお知恵を拝借と思いました。」と、同組合青年部の齊藤健吾さんは経緯を説明する。
その商店街の思いを受け、プロジェクトに参加した学生たちは、「肴町の路面に足跡を貼って、この上を楽しくたどってもらうのはどうだろうか」と提案。テーマがあったほうが楽しさも倍増すると考え、3匹の異なる妖怪が、「DIY」・「食」・「おしゃれ&健康」の各テーマを代表する店を歩いて廻ったように形の異なる足跡を設置することにした。妖怪を登場させたのは、コロナの影響で妖怪「アマビエ」が全国的なブームとなっていることにあやかってのことだという。
足跡のデザインは、岩手大学人文社会学部の3年生の3人が担当。3匹の妖怪の足跡をカッティングシートに出力し、アーケードの路面に設置した。この妖怪の登場に合わせて、青年部メンバーは、「江戸時代の肴町に店を構えていた商家の敷地にあった井戸から3匹の妖怪が現れ『近いうちに飢饉が来るから、それに備えて蓄えをしておくように』と使用人に伝えた」という架空の言い伝えと、その妖怪の足跡を飢餓対策のお守りとして受け継いでいるという設定を創出した。
齊藤さんは、「大学生と一緒に足跡を貼っている作業も大変楽しいものでした。足跡をたどりながら思わず笑みがこぼれます。肴町にいらっしゃるお客様に、是非、この足跡を楽しんでたどっていただきたい」と話している。