那覇市の国際通り近くにある第一牧志公設市場一帯 (平和通り、市場本通り、市場中央通り) は、戦後の長い歴史が息づく商店街だ。75年が経った今も昔からの専門店が並び、当時の面影が色濃く残る。しかし、店主の高齢化に伴う閉店や老朽化による建物の取り壊し、さらには新型コロナの影響で収入が激減した店が閉店に追いやられるなど、最近はその街並みに少しずつ変化が現れ始めていた。
そんな中、「これ以上お店を潰したくない」と地元の女性4人が立ち上がり、新しく販路を拡げるため、オンラインショップ「マチグヮーストア」(※)を開設。6月20日から運営を開始した。
「今回のコロナ禍の中、商店街に来るお客さんはいつもの半分にも満たず、うちは観光客がメインだったんだと痛感しました。でも、この辺りの商店街には、昔から地域の暮らしを支えてきた専門店が揃っていて、地元の方にもお勧めしたいお店がたくさんあります。『たくさんの方に商店街のお店を知ってもらいたい』、『那覇に来る際は商店街に来て欲しい』、『商店街を忘れてほしくない』、そんな思いでマチグヮーストアを作りました」そう話すのは運営メンバーの一人、金城忍さんだ。
オンラインショップ「マチグヮーストア」で扱うのは、定番のちんすこうや地域の祝いごとで使われる菓子のほか、丸々一本の鰹節や昔ながらの木のおひつ、沖縄伝統の紅型柄をあしらったふろしきなど各店こだわりの逸品。公式HPだけでなくFacebookなどのSNSも活用し、個々の商品の魅力をコンスタントに発信していった。
そんなデジタルを駆使した情報発信を行う一方で、注文品の集荷方法はメンバーがそれぞれの店舗に “歩いて取りに行く”というアナログな一面も。オンラインでの買い物というとどこか希薄な印象もあるが、その運営の様子に、人間味溢れる商店街ならではの温かさを感じることができる。さらに梱包から発送までも手作業で行われ、メンバー4人の愛情も一緒に購入者の元へと届いていることだろう。そんなデジタルとアナログが融合する斬新さのおかげか、地元メディアにも大きく報じられ、運営開始からわずか2週間後には品切れの商品が出るほどの盛況ぶりを見せている。
「商店街をなんとかしたい!という思いだけで駆け出したため、資金の調達をする間もなく今の運営は全てボランティアです。皆本業の傍らで活動しているため色々と大変な部分も多いですが、商店街に人が戻るにはまだまだ時間が掛かると思うので、参加店舗や商品のラインナップを増やすなど内容をもっと充実させ、ストアを継続できる仕組みづくりをしっかりと確立していきたいです」と、金城さんは意欲的だ。
(※)「マチグヮー」は、沖縄の方言で「商店街」の意。
活性化事例 手づくりのオンラインショップで愛する街を守れ!