新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急事態宣言が全国的に解除されたが、各地では、引き続き感染防止対策の取組みが進んでいる。
佐賀県有田町の本町商店街では、店舗等のレジ周りに飛沫防止のために設置されたビニールカーテンに、アーティストが絵を描くプロジェクト「レジ前おむかえアート」が、コロナ禍で疲弊した来店客や店主の心を和ませている。
この「レジ前おむかえアート」を手がけるのは、有田町で広告業を営む小松大介さん(プロジェクト代表)、同じく町内の有田焼窯元で絵付けを担当する金ケ江美里さんら。プロジェクトのメンバーで墨絵アーティストの矢野億子さんが、同県武雄市の商店街のコーヒー店から「ビニールカーテンが殺風景で気が滅入るから、絵を描いて欲しい」と依頼されたことがきっかけになった。
プロジェクトの初日となった5月19日には、駅前を中心に商店街のイベント等を実施しているまちづくり団体「駅前スゴロク実行委員会」が発注するかたちで、観光案内所と飲食店、衣料品店の3店舗でそれぞれの希望や個性に合わせた絵柄を描いた。
複合観光施設「KILN ARITA(キルンアリタ)」内の観光案内所では、金ヶ江さんが、有田焼の染付のイメージのもと、青や緑の線で伝統的な有田焼の絵柄である6つのひょうたん(六瓢で無病息災を表す)や、縁起の良いぼたんの花やたこ唐草を描き入れた。
また、レモンステーキのタレを使った唐揚げが自慢の「唐揚げ屋ICHI」ではレモンと鶏をモチーフにしたポップなイラストが、衣料品セレクトショップ「GARO」ではカラフルでにぎやかなキャラクターやアイテムが描かれた。店主たちからは「ビニールカーテンを設置したことでお客様との距離が出来てしまったようで心配でしたが、明るい絵柄で店内が明るくなり、会話のきっかけになりそう」と満足の声が寄せられているという。
プロジェクト「レジ前おむかえアート」代表の小松大介さんは、
「コロナウイルスの影響で、有田の陶磁器産業に関わる職人たちも仕事や活動の機会が減っていました。このような依頼をいただき、職人やアーティストたちが技術を維持し披露できる場になればという思いと同時に、地域に貢献できる機会になれば嬉しいです」
と話している。
引き続き各店舗や事業者には感染拡大防止のための様々な取組みが求められる中、“アートで街と人に彩りと活気を提供する”この「レジ前おむかえアート」の取組みは、今後「新しい日常」「新しい生活様式」を目指す全国の商店街や事業者にとっても大きなヒントになるだろう。