JR 浜松駅から北へ徒歩10分、東海道筋の500メートル程の通りに連なる3商店街(事業協同組合浜松ショッピングセンター、田町東部繁栄会、神明町繁栄会)から成る「ゆりの木通り商店街」は、呉服店やふとん店など100年以上続く老舗店舗と、専門性の高い物販店(とりわけメンズセレクトショップが多い)が並ぶ商店街だ。江戸中期以降に繊維産業が盛えた土地柄を反映し、同商店街は今でも職人の丁寧で質の高いものづくりを人々に伝える場として機能しているという。
このゆりの木通り商店街が、4月25日より近隣在住のハンドメイド作家とタッグを組み、手作りマスクの委託販売を始めた。カラフルでおしゃれなものやかわいい柄のものなど、大人から子どもまでファッションの一部として楽しく身に着けられるような豊富な色柄、サイズのマスクが店頭に並び、地域住民に大いに喜ばれている。
「まちからマスク made in ゆりの木通り」と名付けられたこの取組みは、同商店街の有志によるグループ「手作り品バザール実行委員会」が、コロナ禍の今自分たちに何ができるかを考え、地域の人々が必要としているマスクを一つでも多く供給しようと企画、4月16日から開始した。当初、商店街の呉服店やカーテンなどを販売するインテリア用品店など布地を取り扱う店を中心に、それぞれの店で扱う布の特徴や縫製の技術を生かしてマスクの制作・販売を行ったところ、売り切れが続出。そこで規模を拡大し、第2弾としてハンドメイド作家たちのマスクの委託販売を実施することになった。
ゆりの木通り商店街は、10年以上にわたり地域のハンドメイド作家と人々の日常の生活をつなぐイベント「手作り品バザール」を開催している。現在春と秋の年2回(各回2日間)に行われているバザールには、延べ約400の出店者数と14,500人もの集客があるといい、今年も5月16日、17日に開催が予定されていた。しかし残念なことに、新型コロナウイルス感染拡大防止のために中止を余儀なくされる。そんななか、今回33人のハンドメイド作家の協力を得てマスクが製造・販売されるようになったことは、さながら規模を縮小した「手づくり品バザール」が実施されているかのようだ。
「高い縫製とデザインの技術を持つ作家の方々が、一人でも多くの人をコロナから守ろうという想いを込めてつくったマスクはとても丁寧なつくりで、細かい刺繍が施されていたり、洒落た絵柄の生地が使われていたりと、機能性だけでなくファッション性も高いものばかり。今後しばらくはマスクを着用しなければならない日々が続くと思いますが、こういう素敵なものを身に着けていただいて心も体も元気になっていただければ。私たちも商店街の特色を生かして、人のためになることができるというのは嬉しい限りです」と、バザールの実行委員長を務める田町東部繁栄会会長・鈴木基生さんは語る。同商店街では、駐車場でのドライブスルー販売も含め、12店舗でマスクやマスクの生地が売られている。
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