中山道で江戸に一番近い宿場町として栄えた板橋宿の面影を今に残す、東京都板橋区の仲宿商店街。その商店街にある築100年の商家の建物が、この度街の魅力を発信する拠点として生まれ変わった。
再生されたのは、1914(大正3)年に建てられた米屋の店舗。近世の町家建築に、当時モダンとされていた洋風のレンガ壁が融合した2階建てのユニークな建物は、かつての町名「板橋町五丁目」を由来に「板五米店(いたごこめてん)」と呼ばれ、地域住民に親しまれてきた。ここ数年は不定期に貸し店舗として利用されていたが、文化財としての価値も高いことから、中山道の宿場町としての街の歴史を後世に伝える定常的なスポットとして活用されることになった。
この再生プロジェクトは、仲宿商店街振興組合、板橋区、板橋区商店街連合会第一支部と、地域商店主を中心に発足したまちづくり会社「株式會社向こう三軒両隣」が連携し実行しているもの。今年10月の台風19号の影響で雨漏り箇所の修理費がかさむなど困難にも見舞われたが、実働部隊である向こう三軒両隣が、クラウドファンディングを活用し、地域住民と力を合わせて、改修工事やワークショップなどの作業を重ねながら場をつくりあげていった。
新生「板五米店」には、板橋宿のまち歩きをサポートする案内所、板橋宿ゆかりの品を展示するギャラリー、寺子屋をイメージしたワークショップスペースなどが設けられ、今後は大人も子どもも好奇心がくすぐられるような文化講座や体験イベントが企画実施される予定だ。また、米屋との縁で、「おむすびカフェ」も誕生し、施設内で軽食を提供する。地域の住民が気軽に利用できる数々の仕掛けで、人と人とがつながる街のプラットホームとなることを目指す。
向こう三軒両隣の代表取締役の永瀬賢三さんは、「歴史文化がある街ですが、シャッター店舗が増え、マンション開発も進み、地域の特色は少なくなりつつあります。板橋のよさを守りつつ新しいものをつくる。そんなスタンスで、身近な人とともに身近なもので自分たちの街を面白がっていけるような場にしていきたい」と「板五米店」のこれからについて語る。「板五米店」を核に、今後旧街道のこの街にどのような変化がうまれるのか、楽しみだ。
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