新潟市南区にある白根商店街で、10月22日、猫だらけの仮装行列「白根子行進曲」が行われた。これは、昭和6年に町の3割を焼失させたという白根大火から2年後に行われた復興祭を90年ぶりに復活させたもので、白根子とは、地元民の愛称“白根っ子”(しろねっこ)と“猫”を掛け合わせた言葉である。
「写真を見た瞬間、その奇妙さと面白さに一瞬で心を奪われ、今後の展開は未定のままとりあえずやってみようと動き出しました」と、今回発起人となったアーティストの 藤井芳則さんは、街の写真展で「白根子行進曲」の写真と遭遇した時のことを語る。
写真は地元の人たちの間でも評判になり、その話題性に藤井さんは「白根子行進曲」の復活の可能性を見出し、昨年小学生を対象に猫のお面づくりワークショップを仕掛けた。すると、次第にその復活を望む声が広がり、白根商工会や住民、地域おこし協力隊を中心に実行委員会が結成され、さらには商店街店主や地元の高校性、大学生ボランティアなど、「白根子行進曲」を未来へつなげようと思う人たちが多方面から結集した。
今年9月、藤井さんは本格的なワークショップ「猫に化けるためのワークショップ」を開催、参加者たちは個性豊かな猫のお面を制作した。また、同市の上古町商店街のデザイン会社の協力も得て、イベントのチラシや手拭い、缶バッジといった記念グッズも、ポップな仕上がりとなった。
その様子を常にSNSで発信していたところ、徐々にネットやメディアで取り上げられる機会が増え、仮装行列の申込者数は予想を大きく上回る結果に。
10月22日の当日は、思い思いの猫に扮した約100名の参加者が、猫のしぐさを真似たり、猫になりきった振る舞いで商店街を練り歩き、メインステージとなる2tトラックまでもが猫の仮装を施され通りは猫一色となった。
さらに、白根高校の生徒と商店街がタッグを組み、菓子店では高校生が考案した猫モチーフのスイーツを販売、書店では白根子しおりが、時計店では白根子の掛け時計が、酒店では白根子ラベルのついた甘酒が売られ、訪れた人を楽しませた。ほかにも、空き店舗のシャッターを塗装するワークショップも行われ、参加者同士が交流を深めるきっかけにもなった。
一枚の写真から新たなつながりが生まれ、実りある一つのイベントが作り上げられていったこの日は、 “白根っ子”のパワーと街の人々の豊かさ・未来への希望を感じる1日となった。