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お店が緩くつながって、環境にやさしく街は楽しく【東京都足立区・ナナシノ商店街】

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地域に点在する店が協力して開催したアップサイクル・カルチャー・イベント。「ナナシノ商店街」の「ナナシノ」には、小さな店たちのささやかな試みということで「名もなき」、まだ誰もしたことのない試みだから「名付けようがない」、これから仲間たちと共に「名前のない」未来をつくる、といった意味も込められているという

 東京都足立区にて、5月20日(土)~27日(土)、東武鉄道伊勢崎線梅島駅周辺の個店の有志グループ「ナナシノ商店街」により、「クリーニングデイ 2023」と称する“アップサイクル”カルチャー・イベントが開催された。

 「クリーニングデイ」は、ゴミ削減のためにリサイクル活動を奨励し、かつ地域交流も促すことを目的に、2012年よりフィンランドで始まった活動。フィンランドでは、年に2回5月と8月の最終週の土曜日を「クリーニングデイ」とし、まちの広場や公園、個人の家の庭などいたるところでフリーマーケットが実施されている。この活動に“アップサイクル”を理念として取り入れて実施しているのが、日本版「クリーニングデイ」だ。“アップサイクル”とは、 “アップグレード“した“リサイクル”のこと。本来であれば捨てられるはずの廃棄物に、デザインやアイデアといった新たな付加価値を持たせることで、別の新しい製品に生まれ変わらせるという意味である。

 この“アップサイクル”の理念は、実は「ナナシノ商店街」の発足にも深くかかわっている。同グループの代表でさくら園芸店主の涌井規子さんによると、ことの始まりは2019年、涌井さんが顔見知りのベーカリー店とコーヒー専門店の女性店主たちと世間話をしたことだったという。

 

お店の廃材を持ち寄って製作したローカルバッグ。 これが全てものはじまり

 「当時、国がゴミを減らす政策としてスーパーや小売店のレジ袋を有料化すると決めたことが話題になっていて、そこで自分たちもお客さんのために何かできないかな、という話になって・・・そこから、それぞれの店からゴミとして出される廃材を使ってバッグをつくったらいいのでは、というアイデアがひらめいたんです」


 こうして涌井さんたちは、園芸用ブルーシートや小麦粉の袋、コーヒー豆の麻袋などを持ち寄って繋ぎ合わせることで、おしゃれなバッグをつくることに。地元のお店のアイデアとそのお店の個性を生かしてつくりだされたバッグは“ローカルバッグ”と名付けられ、それと同時に、「お店同士、ローカルバッグを持ったお客様とお店、お客様同士がつながっていければ」という想いも生まれた。涌井さんは、そのつながりを広げようと、想いを共有できる知り合いを誘い、5店舗6人のメンバーとともに「ナナシノ商店街」を立ち上げた。

 以来、ローカルバッグの製作・販売、店舗同士のコラボイベントの開催、商店街ソングや公式ガイドブックの作成など、物理的には地域に散らばっている店のそれぞれが共鳴し合い、つながることを楽しみながら数々の取組みを行っている。

「クリーニングデイ」のイベントでつくられた、トマト缶活用のハーブの寄せ植えと規格外野菜活用のケーキ。右下は、出がらしのコーヒーの粉を使ってテトラ(消臭剤)をつくるワークショップの様子

 先月20日から27日まで1週間にわたり開催された「クリーニングデイ」は、ナナシノ商店街として3回目の開催。現在11店舗となった商店街のメンバーにプラスして、特別参加の店舗や個人も“ナナシノフレンズ”として加わり、総勢19のメンバーでの実施となった。例えば、カフェで料理に使ったトマト缶を捨てずに鉢として再利用し、そこに園芸店のハーブを寄せ植えしてオシャレな鉢植えをつくるワークショップを行ったり、青果販売店の提供する規格外の地元の伝統野菜を使ったお菓子や料理をカフェで販売したり、自家製チョコレートの製造過程で出たカカオ豆の殻を活用してカカオティーをつくって販売したりと、その内容は“アップサイクル”を実現した独創的なものばかり。参加店がそれぞれの個性を発揮しながらつながることで、新しい価値が生まれる取組みとなった。

 「お店とお店が互いにリスペクトしあって、緩やかにつながり、そこから面白いものが生まれれば、私たちお店も楽しいし、お客さんにも喜んでいただけます。そんなことを続けながら、この街を盛り上げていきたい!」と涌井さん。ナナシノ商店街がこれからどんなものを生み出すのか、それがどう広がっていくのか、楽しみは増すばかりだ。

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