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涙あり!笑いあり!店主たちのドタバタ爆笑喜劇。芝居にのせて商店街を発信【石川県金沢市・森本商店街振興会】

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芝居をきっかけに来客数が増えた店も。逆に、店主たちを見に来て大衆演劇に魅了され、金沢おぐら座に足を運ぶようになった人も。好循環が生まれている

 5月14日、石川県金沢市の森本商店街は笑いの渦に包まれた。場所はIRいしかわ鉄道線森本駅の駅前通りにある芝居小屋「金沢おぐら座」。そこに、舞台化粧をばっちりと決め、江戸の町人や役人に扮した商店街の店主たちの姿があった。「カンバンワ~」と軽快に登場する看板屋の店主、「まずはいつもの日課だ」と言ってハトの餌を撒くように客席にメガネ拭きをばら撒く眼鏡屋の店主、「今日は母の日。隣の小西生花店でまだカーネーション売ってるよ」と花屋の店主が、それぞれ店のPRを織り交ぜたコミカルな芝居で客席の笑いを誘った。

 金沢おぐら座は、全国を巡業する劇団が月替わりに出演する、収容人数200人ほどの金沢市唯一の芝居小屋。ここで年に2~3回ほど、商店街の店主たちがプロの劇団に交じって公演を行っているのだ。きっかけは、支配人の鷹箸直樹さんが芝居を見に来た客から「商店街に行きたいんだけどどこにあるの」と言われたことだった。
 金沢おぐら座も加盟している森本商店街振興会は、かつて100軒以上の店が隙間なく連なっていたが、今では40軒ほどに減少。店が点在してしまったために商店街として認識されにくいのだという。そこで、「商店街を盛り上げるために舞台に出て自分たちをアピールしてみては」と鷹箸さんが店主たちに提案し、市の補助金を活用して2013年に“森本商店街一座”を立ち上げることとなった。

「『自分たちが演技するだなんて…』とはじめは消極的な声が多かったのですが、一度試しにやってみたらものすごく盛り上がったんです。店のPRを入れた芝居や素人ならではのハプニングが受け、お客さんとの距離がグッと縮まりました。そのことが励みになり、芝居を通じて自分たちの顔や店を知ってもらおうと始めました」と、一座で太夫元(演芸の興行主)を務めるムラタ時計めがね店の村田貴人さんは、店主たちが参加するようになった経緯を説明する。

セリフに店や商品の宣伝を入れ込むなど毎回店主たちのアドリブが炸裂。加賀野菜を中心に扱う飲食店の店主は、オリジナルのヒーロー“加賀戦士ヤサイダー”として登場。個性あふれる演出で会場を沸かせた

 そうはいっても演技に関してはズブの素人。自分たちだけではうまく事が運ばない。そこで、商店街のこの活動に賛同してくれる劇団に助けてもらうことに。まずは劇団と顔合わせをして、その時の演目に合わせて店主たちの役を決めてもらったら、早速稽古の開始だ。実は、大衆演劇には台本がない。そのため店主たちはスマホで稽古の様子を録画し、商売の合間にその動画を何度も見てセリフや立ち回りを覚えていく。その後、舞台稽古を終えたらいよいよ本番を迎える。

“森本商店街一座”からは毎回5~10名ほどが参加し、回を重ねるごとに仲間も増えているという。今回の5月公演では、商店街から7名が参加し芝居や舞踊を披露。昨年オープンしたばかりのデイサービスの店の社員も“期待の新人”としてデビューした。公演は昼夜二部制で、各回とも280人もの人が詰め掛けた。

「芝居を始めたことで、お客さんだけでなく他のお店との絆も深まりました。新しいお店ともこうして一緒にやることで互いに人柄が分かるので良いですね」と村田さん。最近ではメディアで取り上げられることも増え、商店街だけでなく森本地区のイメージアップにも繋がっているそうだ。「商店街に来てもらうには、まず知名度を上げることが大切。これからもみんなで芝居を続けながら、商店街活動も活発にしていきたいです」と意気込む。

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