北海道室蘭市の中島商店街(中島商店会コンソーシアム)は、’20年から防災力向上を目指し、「商店街BCP(緊急時の態勢や優先業務を定める事業継続計画)策定」に取り組んでいる。このほどこれまでの活動内容を、同商店街のウエブサイトで公開した。各店舗をはじめ地域に幅広く役立ててもらおうと情報共有を進めている。
きっかけは、’18年9月の北海道胆振東部地震。室蘭市では3日間に渡るブラックアウト(全域停電)が発生し、飲食店を中心に商店街も大きな被害に見舞われた。
この経験から「いざ災害が起こったときに商店街に何ができるのか」を見直す必要性を、当時の室蘭市商店街振興組合連合会理事長・斉藤弘子さんが提唱。
さっそく商店街は、札幌市内の商店街の視察や室蘭商工会議所や室蘭市、市消防団、室蘭工業大学、北星学園大学等と連携しながら勉強会を開始し、BCP策定に向け動き出す。
’20年夏からは、法政大学大学院の石山恒貴ゼミを招き、商店街関係者の他、消防団員、小学校の先生、町会、女性連絡協議会、市職員などさまざまな人が集うワークショップ「防災ワールドカフェ」を4回に渡り実施。カフェ形式の自由な意見交換会は「共助」の大切さを地域で共有する機会となった。
さらに並行して、市の自助共助防災力強化講座プログラムも開催。室蘭工業大学の専門家らを講師に「室蘭市の災害の歴史」「防災・減災とコミュニティの役割」「次の大地震(メガクエイク)に備えて」「土砂災害について」等をテーマに、より深く具体的に学ぶ勉強会やグループワークを重ねた。
「この地域の災害の特性を学びながら、防災に対してみんなで同じ意識を持って備えることを重視しました。さらに商店街の活動らしく、楽しみながら防災について知恵を身につけていくことも意識しましたね」と話すのは、中島商店会会長の金濱元一さん。
’22年7月には、非常食作りや被災体験を聞く学習会など、一般の参加が可能なイベント「ナカジマ防災もしも?ウイーク」を開催。地元の旭ヶ丘小4年の児童らと知利別川沿いを歩きながらのフィールドワークでは、市職員や商店街の店主が講師となり、大雨による浸水を想定した行動を一緒に考えた。
さらに、市民団体ウォーカブル・イン・ナカジマが商店街にあるお元気広場で定期的に実施しているたき火イベント「URBAN TAKIBI」とも連携。火起こしやたき火を用いた非常食のつくり方などの体験イベントも実施。楽しみながら火の重要性や扱い方への理解を深める機会にも繋げた。
今後も、防災を専門とする北星学園大学の鈴木克典教授らと一緒に防災への啓発やBCP策定に向けた活動は継続していく。
今回、商店街のウエブサイトに掲載したのは、「中島商店街BCPを考える」と題し、事業者向けに災害時に備えた行動をまとめたチェックリストやこれまでの講義やグループワークの要約(講義の詳細)など4項目。防災力向上につなげるために幅広く役立つ内容になっている。
「これからも防災・減災に向けた取組みは継続していきます。これまで培ってきた大学・学生とのつながりや医療機関との連携も強みにしながら、市の防災課、商店街関係者と一緒に、災害時に適切に対応するための活動をはじめ、日頃の交流や防災訓練を兼ねた楽しめるイベントも継続していきたいですね」と金濱さんは笑顔だ。
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