神奈川県横浜市の横浜橋通商店街協同組合と株式会社野毛印刷社、横浜市消防局南消防署は連携し、2022年の春から地域防災の取組みを実施してきた。「防災てらこや」と称するこの取組みは、2月28日、「第27回防災まちづくり大賞」(※注)の日本防火・防災協会長賞を受賞した。
3者は、「人が集い、交流し、防災について学ぶ場所」というテーマを掲げ、同商店街の近隣の子どもたちが楽しく学びながら防災の知識を身に着けるような防災関連のイベントを開催してきた。取組みは2022年4月にスタートし、初回は、商店街から徒歩5分のやすらぎ保育園の園児20人を商店街に招き、空き店舗を活用した多目的ルームで『みんな森の仲間とオオカミのサイレン』という防災についての絵本の読み聞かせを行った。この絵本は、横浜市消防局の企画・監修のもと野毛印刷社が製作したものである。その他、徒歩2分のところにある南吉田小学校の児童と保護者を対象に、南消防署見学会を実施したり、小学校を訪問してクイズやゲームを交えた防災体験イベントを行ったり。夏休みには、商店街の多目的スペースで、「防災てらこや2022夏休み 防災自由研究」というイベントも開催し、子どもたちは、ビニール袋を使っての災害時に役立つレインコートや、オリジナルの防災セットを作成し、液状化現象の仕組みについても学んだ。
横浜橋通商店街協同組合の高橋一成理事長は、「絵本の読み聞かせからはじまり、災害時の状況を考えながら防災用品を選んでランドセルに常備するオリジナルの防災セットをつくったり、ARの技術を使って部屋を水没させて水害の疑似体験をしてもらったりと、商店街の空き店舗を活用して、子どもたちに防災についていろいろと体験してもらいました。地域の子どもたちが、親が近くにいなくても、いざという時に自分たちで考えて命を守ることができるようにする、そんな学びの場を、私たち商店街が提供することができたのは、私たち自身にとっても有意義な経験です」と話す。
この取組みは、当初、同商店街及びその周辺でのみ実施されていたが、評判を聞きつけた他の小学校からも依頼が入るようになり、現在は、消防署が市内の他のエリアを回って防災イベントを行っているのだという。「子どもたちが防災を学ぶ機会が、こうして他の地域でも増えていくのは、本当にうれしい」という高橋さんは、「今回は消防署と連携したので、次は警察署とも連携して、認知症に関わる取組みにもチャレンジしていきたい」と高齢者への取組みにも意欲的だ。地域住民が安全・安心で過ごせる街をめざして、商店街は地域連携を進め、活動を展開していく。
(※注)「防災まちづくり大賞」は、阪神・淡路大震災を契機に平成8年度に、総務省消防庁主催、一般財団法人日本防火・防災協会共催で創設された表彰制度。地域に根ざした団体や組織の防災に関する優れた取組や、防災・減災、住宅防火に関する幅広い視点からの効果的な取組みを表彰し、 広く全国に紹介することにより、地域における災害に強い安全なまちづくりの一層の推進に資することを目的として実施されている。