アイスクリームの年間消費金額が全国トップクラスの石川県。その特徴を生かし近年“アイスストリート”として名を馳せている加賀市山中温泉の湯の本町商店街に、昨年12月、“ちょっとユニーク”なフィギュアが入ったカプセルトイ(通称、ガチャガチャ)が設置された。フィギュアは、毎年9月に開催される山中温泉最大のイベント「こいこい祭り」に登場する“獅子頭”がモデルとなっており、祭りの目玉である「大獅子みこし」などが手のひらサイズで再現されている。企画した湯の本町商店振興会の二木克治副会長は、「このガチャガチャを通じて、様々な街の魅力を感じてもらえれば」と期待を込める。
今回のフィギュア制作は、商店街で長らく空き地となっていた場所に「大獅子みこし」の常設展示場を作ろうと話が持ち上がったことがきっかけとなっている。山中温泉の祭りには、前述の大獅子を含め3体の獅子頭みこし、青年団や芸妓による獅子舞披露とたくさんの獅子頭が登場する。それを見た観光客が「こんなに獅子舞がいるのはすごい」と驚いたという。その観光客の声を聞いて、商店街は“獅子頭の街”としてアピールしていこうとの思いを強めたのだ。
「お客さんに言われるまでこれが凄いことだなんて思ってもいませんでした。獅子頭がこの街を象徴する存在になり得る。それならば、普段倉庫に眠ったままの『大獅子みこし』を設置し、商店街のランドマークにしようとなったんです」と二木さん。
こうして、商店街が土地を所有する市へ掛け合い、大獅子みこしの常設展示場づくりが進められることに。そして、この機運を盛り上げるべく企画したのが “獅子頭のガチャガチャ”である。
実はこの地は山中漆器の産地でもあるため、せっかくならとフィギュア制作は山中漆器の職人に依頼。みこしに使われる黒・朱・金の3色のほか、若草色・赤色の全5種が出来上がった。12月9日、料金は1回500円で商店街の4カ所に設置。初めのうちは地元の人々が楽しむ姿が見られていたが、新聞でこのことが紹介された途端、遠方から大勢が訪れ、補充を繰り返してもすぐに品切れの状態となるほどの人気ぶりをみせている。
「私たちの商店街は20軒ほどしかない小さなところですが、ここにしかない魅力がいっぱいあります。街の魅力を発信するツールとして、今後は設置台数を増やし、例えば、アイス用の漆器のスプーンやアイスストリートで使える割引券などのガチャガチャを置いてみるのもいいですね」と二木さん。小さな温泉街にある商店街のユニークな挑戦は続く。