12月3日、秋田県能代市のJR能代駅前及び能代駅前商店街を会場に、「第4回のしろいち」が開催された。「のしろいち」は、昨年10月からスタートした能代駅前商店会主催の新しいイベントで、今回は、他団体が平成19年より実施している街を灯りでつなぐイベント「のしろまち灯り」とのコラボ開催となった。当日は生憎の荒天だったが、それでも多くの家族連れや若者が集まり、街中で楽しいひと時を過ごした。
江戸から明治にかけて北前船が日本海で活躍していた時代、能代市は、秋田杉の製材を中心とした木材加工で発展、その材木は海外にまで輸出され、「東洋一の木都(もくと)」と呼ばれるほど栄えた。しかし年月は流れ商環境が変わり、少子高齢化が急速に進むなか、気が付けば市内の商店街はシャッター街と化す。昭和63年から街中で開催されてきた、秋田竿燈(かんとう)まつりや青森ねぶた祭など名だたる祭りを招致しての一大イベント「おなごりフェスティバル」も、運営スタッフの不足で2年前に廃止となった。
街から賑わいが消えてしまったこの厳しい状況に、「もう一度、街を元気にしたい」と強い思いを持って立ち上がったのが、能代駅前商店会の有志たちだ。新たな賑わい創出イベントを企画し、かつて商店会の通りに多くの人を集めた朝市になぞらえて「のしろいち」と名付けた。
「今年もやるよ!冬の駅前ホコ天」というタイトルの「第4回のしろいち」は、3日(土)の午後3時から8時まで開催。駅前では、クリスマスイルミネーションが灯り、キッチンカーと商店会の会員の店による屋台では温かい料理が提供され、暖を取るための焚き火がたかれた。能代初となる「街中サウナ体験会」もお目見えして、話題となる。加えて、空き店舗を活用しての、ハンドメイドサークル主催によるCreerマルシェと、創業希望者によるチャレンジショップも開催された。
このチャレンジショップは、商店街にあった元酒店をリノベーションしてつくった商店街の交流拠点「マルヒコビルヂング」を会場に、今年の9月から開催されている創業支援講座「ちいさなシゴトのつくりかた」の実践の場でもあった。流木ストリングアート(流木にくぎを打ってカラフルな糸を巻いてデザインするアート)の販売店、手描きのイラスト作品の販売店、革小物の販売店、うどん店など、講座参加者がそれぞれの夢をかなえるため出店。新しいビジネスの芽も、「のしろいち」は育てているのだ。
能代駅前商店会事務局の阿部誠さんは、「以前おなごりフェスティバルにスタッフとして参加していた時は、受け身の気持ちでいたように思います。でも今は、この街をどうにかしたいという気持ちで、アイデアを練って自分たちの手でひとつひとつ実現しています。そうしたら、次第に協力者も増えてきて。このイベントは商店街だけでなく、市も警察も消防署も皆が一丸となって実施しているんですよ」と話す。イベント当日は生憎の荒天で、時に突風が吹き雨も激しく降る場面もあった。しかし、それでも通りには多くの子どもたちの姿が。その子どもたちの笑顔が、街の希望の光に重なって見えた。