12月1日(木)、全国商店街支援センター主催のオンラインによる「商店街フォーラム」が開催された。テーマは、「できることから始めよう!~環境変化にも自前のアイデアで。商店街の情報発信~」。コロナ禍に、費用をかけずに自らのアイデアで商店街を存分にアピールする取組みを行っている3つの事例を、その取組みの実践者とともに掘り下げ、効果的な情報発信の方法を考察するという内容だ。
ゲストスピーカーは、北海道小樽市の小樽堺町通り商店街振興組合・事業推進マネージャーの坂口武さん、長野県長野市の南石堂町商店街振興組合・事務局長兼まちづくり担当の宮下佳隆さん、そして、沖縄県那覇市で商店街の店舗の商品を販売するオンラインショップ・マチグヮーストアを開設・運営する金城忍さん、津覇綾子さん、与儀静香さん、畑井モト子さん。坂口さんと宮下さんは都内のフォーラム会場にて、マチグヮ―ストアの4名は那覇市の津覇さんが経営する雑貨店「津覇商店」からの中継で、ライブ配信を行った。
午後2時より約2時間にわたったプログラムは、全国商店街支援センター桑島俊彦代表取締役社長の挨拶を皮切りに、コーディネーターのエルベプランナーズ代表矢吹ちおりさんのオープニング講演、前述の3組のゲストスピーカーによる事例の紹介(動画も交えてのプレゼンテーション)、そして座談会へと続いた。
オープニング講演『一歩踏み出す勇気が大きな成果につながる~情報発信を始めるコツ~』で、矢吹さんは、「情報発信には、デジタルとアナログの両面で発信することが効果的。商店街が持つ、モノ、人、ワザ、ノウハウなどのアナログ的なソフト財産を見直し、それらを惜しみなくデジタル発信することが大切」と話し、費用がかからず気軽に始められる有用なツールとしてインスタグラムを挙げた。
事例紹介は、小樽堺町通り商店街振興組合の坂口さんによる『苦境をユーモアに変えて!街の人たちに元気と笑顔を発信』からスタートした。小樽堺町通り商店街振興組合は、2020年の春、観光客が途絶えた緊急事態宣言下に、「お客様は来なくても自分たちだけでも盛り上がっていこう!こうして明るくやっているので、コロナ禍が終わったら遊びに来てね」という気持ちを表すために、青年部のメンバーが苦境をギャグで笑い飛ばすポスターをつくった。それをSNSにアップしたところ、メディアで全国的に取り上げられるように。店主たちは勢いづき、次々と新しい企画を打ち出して、発信しつづけている。その情報発信の極意は、商店街に来て欲しい層にどうやって届けるのかを常に考えストーリーを練ること。しかし、さらに大切なのは自分たち自身がその企画で盛り上がり、その楽しく動いている様(アナログ的な要素)をSNS(デジタル)に乗せて発信することだという。また、商店街組織が、こうした地元の若い人のノリと感性を生かせる空気感をつくり出せるかどうかが重要だとも述べた。
二つ目の事例は、南石堂町商店街振興組合の宮下さんによる『安心してまち歩きを!謎解きで街をうんと楽しんでもらう』だ。宮下さんは、コロナ禍に密を避けかつ加盟店の売上を上げるために、商店街としてどんなことができるか、ということを考え、来街者が一人で来ても楽しんで参加できるデジタルのまち歩きイベントはできないものか、とひらめいた。そしてそのアイデアをSNSでつぶやいたところ、地元の大学の先生から「できるよ」との返事が。こうして、地元大学のゼミと高校のクイズ研究会とともに、スマホを使いQRコードを辿りながらクイズを解き、まち歩きを楽しむというシステムをつくり上げる。システムづくりを業者に頼まなかったため費用はほとんどかからず、地域の若者との絆をさらに深めながら、自分たちの力でノウハウを蓄積することができたことは、非常に大きな成果と感じているそうだ。学生たちは生まれた時からデジタル社会で育っている、いわば“デジタルネイティブ”。彼らの意見は斬新で、商店街のイベント開発のうえで大いに参考になり、次への活動への確かな足掛かりを得たという。
三つ目の事例は、マチグヮ―ストアの4名による『オンラインショップだけどアナログ!手作業で温かさもお届け』。金城さん、津覇さん、与儀さん、畑井さんは、那覇市の第一牧志公設市場周辺の商店街の近くに住む女性たち。コロナ禍で疲弊する地元の商店街を目の当たりにして、どうにかしたいという一心でオンラインショップ「マチグヮーストア」を立ち上げた。「自分たちの街のお店を潰したくない」「一つ一つのお店を多くの人に知ってもらいたい」「観光客用の店だけでなく、地域の暮らしに役立つ専門店もあることを知ってほしい」…こうした想いから、開設したオンラインショップを情報発信ツールとしてみなし、自分たちの愛する街の店の商品を紹介し始めた。コンセプトは、“古くて新しい”(アナログとデジタルの融合)。現在、40店舗の商品を扱っているというが、商品を紹介する際に、街や人の雰囲気も一緒に伝えることも意識し、写真の撮り方を工夫しているのだそうだ。この取組みを行ったことで、県内外で新たなつながりができたり、「こんなお店にこんなにいい商品があるんだ!」と自分たち自身が商店街の魅力を改めて発見したりしているという。
続く座談会では、苦労した点や、キャッチコピーなどのアイデアの出し方、商店街の取組みを成功に導く秘訣など、矢吹さん(コーディネーター)から質問が出され、ゲストスピーカーが自らの経験とそれに基づく考察を次々に語り、示唆に富んだ内容となった。結びには、オンラインで視聴している全国の商店街の関係者に向けて、「最終的にはお客様に商店街に足を運んでもらえるように、全国の商店街の価値をお互いに高めていきましょう!」(坂口さん)、「取組みはやってみること、その第一歩が大切。知恵を絞って苦労してやったことは、たとえ失敗しても何か発見があるはず。次に工夫すべき点が必ず見つかります。やれば自分も変われるし周りも変わります」(宮下さん)、「閉店してしまった専門店のところに新しい飲食店が入ったりする。それを残念に感じることもあるかもしれないけれど、今度はその新しい店と一緒に、前を向いて頑張っていきましょう!」(マチグヮーストアの皆さん)と、力強くエールを送った。矢吹さんは、「良いところを真似するのは成功の近道。情報発信をテーマにしたこの3つの事例のなかで、“これ!”と思うものがあれば、オープンマインドで一歩進めて欲しい」と締めくくり、フォーラムは終了した。
※座談会の詳細等は、後日全国商店街支援センターのHPにて配信されるレポートをご参照ください。
また、本フォーラムは、 12月9日(金)~16日(金)まで アーカイブ配信いたします。視聴をご希望の方は下記ページからお申し込みください。
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