1月19日(土)、大阪市西成区の鶴見橋商店街で「鶴見橋商店街似顔絵かるた大会」が開催された。店主の顔がそっくりに描かれた絵札と店の特色をユーモラスに書き表した読み札が絶妙にマッチしたこの似顔絵かるたは、専門学校生と大学生の協力のもと作成されたものだ。大会には、4歳の児童から80歳の高齢者まで幅広い年齢の参加者が集い、楽しい交流の1日となった。
一番街から八番街までの8つの商店街が東西に約1キロ連なる鶴見橋商店街は、明治から昭和にかけて大日本紡績(現・ユニチカ)の工場の街として発展し、かつては心斎橋筋商店街、天神橋筋商店街と並び「大阪三橋」と称されるほどの繁栄をみせていた。しかし現在では人通りが減り、店主の高齢化も進んで空き店舗も目立つように。この状況に、鶴見橋七番街商店街の應田晶行理事長は、一番街から八番街までを一つのまとまりとして活性化を進めようと「有志の会」を結成、地元の信用金庫・大阪シティ信用金庫からのアドバイスも得ながら、具体的な活動に向けて動き出した。平成29年には、商店街の魅力をアピールする手段として店主たちのポートレートを商店街に掲示しようと、大原情報デザインアート専門学校(大阪市浪速区)に協力を依頼。マンガ・イラスト系コースの学生約30人に授業の一環として約60店の店主らの似顔絵を描いてもらった。
その似顔絵をそれぞれの商店街の空き店舗のシャッターなどに展示したところ、「そっくりだ!」「明るくていい絵だね」と買い物客から好評で、店頭での会話も弾むように。同時に、「この絵をこのままにしておくのはもったいない」という声も多数出たため、何か他に活用方法はないものかと「有志の会」は考えをめぐらした。そんな折、前出の信用金庫の担当者が群馬県大阪事務所を訪れて群馬の郷土かるた「上毛(じょうもう)かるた」を目にしたことから、「店主似顔絵かるた」制作のアイデアがひらめく。
読み札は、かねてより「有志の会」に活性化に向けていくつかの提案を行っていた摂南大学(寝屋川市)の経営学部のゼミに作成を依頼することにした。平成30年の夏、約20人の同大の学生たちは商店街を訪れ、店の特色や店主たちの要望を丁寧にヒアリングしながら読み札に載せる言葉を考えた。こうして出来上がった読み札は、「村井では ぎょっと驚く 鮮度と価格」(鮮魚店)、「ライフナカオ 鶴見橋商店街を 住まいる(スマイル)や」(工務店)、「金丸商店 キムチも顔も かなまる(はなまる)満点」(キムチ店)など、ダジャレ満載の楽しいものに。店主の顔の特徴を愛嬌たっぷりにとらえた絵札と見事に調和し、商店街らしい味のある「似顔絵かるた」が完成した。
今月19日(土)、そのかるたのお披露目の場として、「鶴見橋商店街似顔絵かるた大会」が地元の会館「弘治老人憩いの家」で開催された。一番街から八番街までが協力してのイベント開催は実に12、3年ぶりだ。大会は、8組(3人で1組)によるトーナメント戦。札の並べ方などのルールは、群馬県大阪事務所に指導を仰いだ。商店街関係者の他に、地元小学校のPTA、かるたの制作に協力した大原情報デザインアート専門学校と摂南大学の学生たち、そして群馬県大阪事務所も参戦し、大会は大いに盛り上がった。今後、このかるたは商店街のイベントで活用されるほか、同区内の小学校に配布される予定だ。
かるたの制作にかかわった学生からは、「取材時に店主の皆さんの温かさを感じた。地域の子どもたちがこのかるたで遊んで、お店を覚えて買い物に行ってくれたらいい」との感想も。鶴見橋一番街商店街振興組合の理事長で「有志の会」メンバーの中尾清治さんは、「実に多くの人がかるた制作に協力してくれて、たくさんの交流が生まれました。出来上がったかるたをそれぞれの商店街でのイベントなどで活用していくと同時に、今回できたつながりを大切にして今後の活性化の取組みに生かしていきたい」と語った。