今年の話題作、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。物語の中で重要な役割を担っている坂東武者・三浦一族のゆかりの地である神奈川県横須賀市では、この夏、一族にちなんだ数々のイベントが開催されている。そのイベント開催の拠点のひとつ、JR衣笠駅の駅前に広がる衣笠商店街連合会(衣笠大通り商店街および衣笠仲通り商店街の2つの組織から成る)は、コラボ企画のおもてなしで、訪れる歴史ファンを大いに楽しませている。
平安末期、東北地方で起こった前九年の合戦で源頼義に従った村岡為通という人物が、三浦の地を恩賞として与えられ、その地名をとって三浦為通と改名、衣笠城を築いた。それが三浦一族の始まりだ。衣笠城址から徒歩30分の距離にある衣笠商店街は、三浦一族と縁が深い街として、9月4日まで市のイベントと連動し、歴史クイズラリー「きぬさんぽ」や、三浦一族にちなんだ商品やサービスを提供する「三浦一族×衣笠商店街コラボキャンペーン」などを実施している。
市の広報紙やSNSを見て、三浦一族のことを知ろうと衣笠商店街を訪れる人は、一日120~130人。彼らがまず目指す場所は、衣笠仲通り商店街のアーケード内にあるガリレア会館だ。ここは今、衣笠観光協会と横須賀市の企画展「三浦一族~鎌倉殿に仕えた武家~」の会場となっていて、横須賀市自然・人文博物館所蔵の、三浦一族の遺構から出土した五輪塔の実物展示や、一族の人物列伝、市内の史跡マップなどのパネル展示が行われている。また、日によってはトークイベントや鎧着付け体験、紙で折鳥帽子をつくるワークショップなども催しているという。
このガリレア会館は、衣笠商店街連合会主催の、歴史クイズラリー「きぬさんぽ」(無料)のスタート及びゴール地点でもある。つまり、市の企画展を見に来た来街者は、自然とクイズラリーへと誘われる。クイズの問題は、商店街内の12のポイントに 掲示されており、それを順番どおりに解いていくことで、商店街を隈なく巡ることに。掲示物には、問題文と答えの三択に加えて解説文も書かれているが、実はこの解説文が次の問題を解く重要な手がかりで、それをじっくりと読みながら街歩きをすると、鎌倉幕府と三浦一族の歴史の知識がより深まる仕組みだ。
こうしてクイズを楽しみつつ商店街を巡り店舗の中を覗いてみると、「三浦一党焼(今川焼)」「和田義盛侍所別当飯(おにぎりセット)」「三浦紋入り名前印(印鑑)」など、ユニークな商品が目に入ってくる。店主たちが主体となって、「三浦一族×衣笠商店街コラボキャンペーン」という企画も実施しているのだ。飲食店は「元気ハツラツ!出陣メニュー」と銘打ち自慢のグルメを、物販店は「三浦一族なんでも“3”」という三浦の“3”にこだわった商品やサービスを考案し提供している。
衣笠商店街連合会会長の木継芳孝さんは語る。「今回の企画は、衣笠のことをたくさんの方に知っていただく大きなチャンス。それを私たちの商店街で実施できたことをとても嬉しく感じています。ドラマの人気にあやかって、全国から想像以上に多くの方が三浦一族のことを知るためにこの街を訪れています。が、それにも増して、衣笠に住む私たち自身が、自分の地域の歴史を深掘りすることができて面白い。地元愛も強まっています。イベントは9月4日で一旦終了しますが、『鎌倉殿の13人』はまだまだ続き、三浦義村もドラマの中でまだまだ活躍する様子。ドラマを見てこの地域に興味を持って訪れる方たちに満足していただけるように、商店街としてどんなおもてなしができるか、引き続きしっかり考えていきたいと思います。」
大河ドラマのファンが「また行きたい」と思う街を目指して、商店街は、おもてなし力をブラッシュアップしていく。