7月31日(日)、瀬戸物の街として有名な愛知県瀬戸市のせと末広町商店街にて、子ども用にアレンジされたマルシェイベント「千客万来 招き猫マルシェ 子ども商店街」が開催された。事前登録した小学生たち110人はキャストとして、マルシェのブースを営業したり、キッチンカーの手伝いをしたり、銀行員や警察官などの仕事を疑似体験しながら、商店街での一日を満喫した。
瀬戸市は、急速な少子高齢化が進んでいる地域。一昨年には、なんと、商店街近隣の5つの小学校と2つの中学校が一挙に廃校となり、1つの小中一貫校に統合された。同商店街振興組合理事長の大橋徹太郎さんは、「ここはお年寄りが圧倒的に多い街。もちろん、そのお年寄りを大切にするのも大事なことですが、『10年後20年後にはどうなってしまうのだろうか』『若い人たちにもこの街で過ごしてほしい』と考えると、子どもたちやその親世代の方々が、この地域と商店街に興味と愛着を持ってもらうような企画が必要だということになったんです」と、子ども商店街の開催理由について述べる。
今回のイベントの重要なポイントは、子どもたちに商店街で商売の体験をしてもらうだけでなく、街の生活を支える市役所や銀行、病院、警察の仕事の疑似体験もしてもらうという点だ。「商店街を一つの街と見立ててもらい、子どもたちが自分たちの街をどうしたいのかをじっくり考える機会をつくって、それを未来への一歩としたかった」と、大橋さんは語っている。
当日キャストとなった子どもたちは、自分で仕入れたり作成したお菓子やアクセサリーなどをブースに並べて販売したり、ゲームコーナーを運営したり、喫茶店でウエイトレスをしたり、病院の看護婦として来場者の消毒・検温を徹底したり、警察官となってパトロールを頑張ったりと、さまざま。そして、その活躍の様子を見ようと集まった家族や友だちで、商店街は大いににぎわった。イベントでは商店街の実店舗を含め、“ニャン”という地域通貨(100ニャン=100円)で全てやり取りが行われたため、マルシェに来た客は、まずは商店街内に設置された専用銀行「すえひろ信用金庫」で、現金をニャンに交換することからスタート。その換金手続きも、子どもたちが担った。換金金額の一部は、瀬戸市の「子どもの今・未来応援基金」に寄付されるという。
今回の「子ども商店街」は、せと末広町商店街振興組合の定例イベント「千客万来 招き猫マルシェ」の一環として開催された。この招き猫マルシェは、空き店舗の削減と商店街の若返りを目的に、今年の4月から毎月一度開催しているものだ。その開催と並行して商店街は、マルシェ出店者が実店舗の陳列棚の一部を月額1000円で借りて委託販売するシステムも構築。マルシェの人気商品がいつでも商店街で買えるようになったことで、70代の店主が6割を占める商店街にも若者の足が向くようになったという。8店舗あった空き店舗も、この3か月間で、なんと1店舗にまで減少したとのこと。
「この街は、陶器の街。実はマルシェの出店者さんもものづくりや芸術に関わっている方が多くて、作品も素敵なものが多いんです。そんな街の特性を、商店街のイベント、ショーウインドウや掲示板、シャッターなどを通してどんどん発信していけるようになれば。そして、その商店街の活動がこの街の子どもたちの未来ともリンクしていけばいいと感じます」と大橋さん。街の未来に、たくさんの光が差し込んでいる。