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「市場」+「畑」=「いちばたけ」 ユニークな発想で市場に人を呼び込もう【兵庫県神戸市・灘中央市場】

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市場の中に“畑”が出現。写真後方のシャッターの向こう側が市場の通路

 海から朝上がったばかりの魚、かご盛りの野菜、惣菜は測り売り、鰹は削りたて…。細い通路に昔懐かしい商いの光景が広がる兵庫県神戸市の灘中央市場(灘中央市場協同組合)は、500店舗を有する水道筋商店街を構成する商業団体のひとつ。このノスタルジックな市場で、近年、ちょっとユニークな取組みが行われている。開いたシャッターの奥に目を遣ると、そこにはなんと “畑” が。そう、ここでは、空き店舗の敷地を活用して、畑づくりが行われているのだ。「市場」+「畑」で「いちばたけ」と命名されたこの取組みを通じ、地域の交流の輪が広がっているという。

 灘中央市場は、大正14年から約100年にわたって、灘の人々の台所として親しまれてきた。しかし今では、三代目、四代目が頑張っている店もあるものの、建物の老朽化と店主の高齢化、後継者不足の問題を抱え、廃業してしまった店も多い。以前は路地を挟んで80店舗もがひしめき合っていたが、現在営業しているのは30店舗以下。多くの店がシャッターを閉めたままだ。

 そんななか、2018年より市場では、廃業し倒壊の恐れもある古い店舗を壊して「防災空地」として活用する取組みが始まった。防災空地とは、災害時には延焼拡大を防いで一時避難所になる空き地のこと。平時は地域の交流などに使える多目的なスペースになる。2017年に明石市の大蔵市場が全焼したことを受け、防災面を強化すべく市と市場協同組合が動いたのだ。

 こうした背景を受け、市場の空き地を活用する「いちばたけ」の発想が生まれたという。発起人は、建築職と農業職に就く神戸市役所の職員二人とフリーランスでまちづくりの仕事を行う女性の三人。発起人の一人である坂本友里恵さんは、「いちばたけ」が始まった経緯をこう話す。「歴史あるこの魅力の詰まった市場を何とかして盛り立てたい。本業を持つ自分たちに何ができるかと考えた時、週に一度ぐらい手間をかければ形になる“畑づくり”が無理なく続けられていいのではないか、ということになったんです。都会暮らしの方たちの間で家庭菜園も流行っていることですし、発起人の一人は農業のエキスパートだから、きっと面白いことができる。市場で畑づくりをしようと地域の方に呼びかけて、それが市場に来て、市場を知っていただくきっかけづくりになればとみんなで考えました」

 そして2019年5月にスタートした「いちばたけ」。1か月に2回程度のペースで集まって、地域住民とともにプランターづくり、土壌づくりから始め、作物をつくり、収穫することを続けてきた。つくったものは、トマトやキュウリ、サツマイモのようなベーシックなものから、ビーツ、アイスプランツ、古代カブという変わり種まで。近隣のコーヒー専門店とのコラボでコーヒー豆のカスを使った有機堆肥づくりを行ったり、収穫した野菜と市場の食材を組み合わせて美味しい食べ方を探し出したりと、ユニークなアイデアで、今まで市場に足を踏み入れたことがなかった人々を市場の奥へと誘う。2021年春には運営メンバーが3人増え、固定ファンもついたことから貸しプランターも始めた。

子どもも大人も一緒に畑作業を楽しむ。今年を締めくくる、大きな成果(大根)が

 12月19日(日)に行われた年内最後の活動のテーマは、「野菜の手入れ・大根の収穫」。15人程が集まり皆でわいわいがやがやと作業を行った。収穫した大根で、上の部分、真ん中の部分、下の部分の味比べも。市場内にある自然食品と発酵食品を扱う店「たけちょう」の味噌をつけて美味しくいただいた。「『いちばたけ』でハーブや野菜を摘んで、それに合う新鮮なお魚やお肉、調味料なんかを市場で手に入れて今日のおかずにする、なんてとても豊かなライフスタイルだと思いません?そんな暮らしを提案することで、地域の人々も幸せに、市場の人々も幸せになれば」と、坂本さん。
 人々と市場をつなぐ取組みは、来年ももちろん続く。

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