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活性化事例

創業の“夢”、商店街がサポートします。若い人材が集まり、はばたく場の秘密。

地域振興

創業・事業承継

人材育成・組織力強化

商店街名 奈良もちいどのセンター街協同組合/奈良県奈良市

明治から昭和には“県下随一の 商店街”と称された「もちいどのセンター街」。しかし、商環境の変化により通行量と来店者数が減少していたところに、大きな空き地が生まれかねない事態がー史上最大のピンチをチャンスに変え、新しい人材輩出の拠点となるまでを追った。

13個の箱(CUBE)で構成し、路地、坪庭、前庭を連続させた「もちいどの夢CUBE」。奈良県景観調和デザイン会長賞も受賞

逆風から生まれた「もちいどの夢C U B E」

近鉄奈良駅から南へ300m。もちいどのセンター街は、観光客に人気の「ならまち」につながる好立地にある。

ところが、1970 年代以降、奈良市役所の移転、スーパーやチェーン店の商圏への進出などの影響で、 80 店舗中11 店舗が空き店舗になってしまう。その上、2004年4月には、商店街の中心にあった大型パチンコ店が撤退し大きな空き地が発生しかねない状況となった。組合事務局長の岩田順三さんは、当時の危機感をこう振り返る。「このままでは、空き店舗がさらに増えてしまう。かといって、地域に馴染まない開発をされても困る。商店街の未来を見据えた場にしなければならないと強く思ったのです」

そこで、商店街自ら土地を購入。その活用方法として当時は新しい概念だったインキュベーション施設を目指した。資金面では、経済産業省が創設して間もなかった「少子高齢化等対応中小商業活性化事業」を活用。奈良市の「中小企業振興補助金」の交付も受けるなどし着工した。

そうして、石畳と漆喰の白壁が映える、奈良らしいインキュベーション施設「もちいどの夢 CUBE」が生まれた。回遊性に配慮して10軒のキューブ型の店舗を配置し、ならまち方面からの集客も意識。店舗の壁面はガラス張りで、来店者は気軽にウィンドウショッピングを楽しめる。こうしたコンセプト・デザイン両面での先進性から、メディアにも大きく取り上げられ、2007年10月の第一期の募集には10店舗に対して40件もの応募が殺到した。
ここから、夢CUBEの快進撃がはじまる。

創業者を本気で育み商店街にも好影響が

「選考基準は新規創業者であること。そして、他にはない、オリジナルなものづくりをしていることです」
商店街は場をつくるだけでなく、いかに魅力的な出店者たちを集めるかにも奮闘した。
その結果、夢CUBEには個性的な店が多く集積し、次々に人気店を輩出することになった。

例えば、一期生の足袋スニーカー専門店「TABI‐JI」は、現在奈良と鎌倉に 3 店舗を展開する。四期生の「kakigoriほうせき箱」は連日大行列の人気となり、かき氷ブームの火付け役として全国に名を馳せた。そうした実績によって「面白い店が多い場所」というイメージが定着し、今では夢C U B Eは観光客の定番回遊ルートに。もちいどのセンター街全体の通行量・来店者数の底上げに貢献するまでになった。
何より大きな成果は、空き店舗問題の解消だ。夢CUBEを経て、商店街内には6店舗が出店。近隣の商店街には卒業生が19軒の店を構えている。

夢CUBE卒業生、商店街で一国一城の主になる。
「この商店街で店を開くのが夢でした」(吉倉さん)
「奈良の街をみんなで盛り上げたい!」(辻之所さん)

こうした卒業後の進路=営業継続の場所探しにおいても、商店街が土地の所有者と交渉を行うなどのサポートを行った。一方、夢CUBE入居者たちも、商店街の集まりやイベントに積極的に参加し、商店街や近隣との信頼関係を着実に築いていった。「夢CUBEオープン前の商店街店舗は75軒。今は105軒にまで増え、商店街内の空店舗率はほぼ0%になりました。こうした活況に旧来の店主たちも刺激を受け、客層に合わせて品揃えをアップデートするなどしています。2 代目が戻ってきた店もあり、良い循環が生まれています」

現在は5期生が営業している夢CUBE。これまでに50以上の新規創業を生み出しているが、その成功のポイントは、どこにあるのだろうか。
まず、入居条件が、集客の見込める立地で家賃3〜6万円と割安なこと。最大3年間をかけてじっくり事業の足腰を鍛えられる。また、新規事業者を支えるサポート体制も手厚い。毎月の売上を組合に報告するなかで、必要な経営アドバイスを受けることもできる。例えば売上が伸びないアパレル店は、奈良の代名詞である「鹿」をモチーフにした商品提案を受け、開発・販売。大きく売上を伸ばした。日頃から「困ったことはないか」と声をかけ、目配りしてくれる岩田さんの存在も、精神的に大きな支えになっている。

現在入居する「KUMI茶菓」では鹿型クッキーも人気商品

「仕入れからディスプレイの仕方まで、さまざまな相談に乗っていますね。夢CUBEは、卵を孵して雛にして、巣立つまで育てる場所。一年目は商品づくり、二年目は顧客づくり、三年目は卒業後の店舗づくりができるようアドバイスします」

夢CUBE卒業生で現在同商店街で「革遊びH A R U H I N O」を営む辻之所恒久さんは 「夢CUBEでの経験があったからこそ、この街の売れ筋も分かるようになった。その知見は現在にも活きています」と、ここでの学びを話す。

夢 C U B E で育った人材が商店街の未来を担う
開店準備から入居者に伴走してくれる岩田さん(左)。夢CUBEの“お父さん”的存在だ

仲間の存在も、ここの強みだ。「組合の理事長さんは『商店街 は大きな家族』と言うけれど、本当にそうだなと思います。特に夢CUBEの仲間は、『同じ釜のメシを食った仲』みたいな感じ。卒業生のみなさんにも、相談に乗ってもらっていまし た」(辻之所さん)
この入居者同士の絆は、自発的な商店街活性化の動きにもつながっている。「商店街をもっと盛り上げたい」とメンバーで企画し、ハロウィンやクリスマスの装飾、ミニコンサートを実施。取材した一月 には、正月の絵馬飾りが多くの人の 目を楽しませていた。

「もいちど夜市」の様子。36店舗が出店し、2日間で6,500人を集めて大盛況に

また、2018年9月には、同商店街で「もいちど夜市」が行われた。これは、前年行われた夢CUBE 10周年記念パーティーの大盛況をきっかけに、 「奈良の街は店じまいが早い」 というイメージを払拭しようとセンター街の若手店主たちが企画した初の夜市。夢CUBE入居者も出店し、イベント準備やチラシづくりに汗を流した。夜市では飲食や雑貨の販売、抽選会などが催され、観光客や住民でにぎわった。

商店街側もこの新しい風を歓迎しており、「若い人の企画力をどんどん取り込み、街の力を 高めていきたい」(岩田さん)と、次の世代を見据える。実際、卒業生から組合の理事になった人もおり、夢CUBEは、商店街活動を担う次世代の人材が育つ場所にもなってきた。
新しいプレイヤーを呼び込み、商店街全体で育てる。プレイヤーはそんな温かい街や人に感謝し、街のために汗を流す。夢CUBEを軸に、そんな幸福な仕組みが自然に生まれている。

★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2019 Spring(春号)に掲載されています。
「EGAO」をご覧になりたい方はこちらへ。

商店街活性化の情報誌「EGAO」

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