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活性化事例

街への愛をデザインに凝縮 店主のキャラを50枚のポスターに

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商店街名 飯能市商店街連盟/埼玉県飯能市

’21年2月2日から28日まで飯能市内で開催された「飯能がんばる商店街ポスター展」。店主の個性を引き立たせた写真と秀逸なキャッチコピーが話題を呼び、多くのメディアで取り上げられた。「商店街の魅力は店主」と捉え、地元に強い愛着をもつクリエイターを起用して実施したこの取組みを紹介する。

企画を担った中心メンバー、左から鈴木会長、岡部活性化部長、徳永さん、岡本さん。
これを機に商店街とクリエイターとの信頼関係はより深まった

自分たちにできない発想で街の魅力を届けたい

 ムーミンのテーマパークや自然豊かな奥武蔵の玄関口として知られる飯能市。その中心市街地に広がる3つの商店街(飯能銀座商店街、飯能大通り商店街、飯能中央通り商店街)は歴史が古く、昭和レトロな雰囲気が随所に漂う。代々続く老舗も今なお健在だ。

「ありがたいことに、ここの商店街は昔から地元の常連のお客様に支えられています。そういうお客様に喜んでいただこうと、また新たなお客様も増やしていきたいと、今までさまざまな取組みを行ってきました」

 そう語るのは、3商店街を束ねる飯能市商店街連盟の会長で、洋菓子店「夢彩菓すずき」を営む鈴木康弘さん。その言葉通り、商店街はこれまで数年にわたり「まちゼミ」や「100円商店街」などを実施してきた。しかし、いつしかそれらの取組みは新鮮味がなくなり、参加店舗数も減っていくなど問題を抱えるようになっていったという。

 そして、コロナ禍に突入。緊急事態宣言が発出され、飯能を訪れる観光客が激減して人出も少なくなるなか、街のピンチを救ったのは、自分の贔屓の店が潰れないようにと足繁く通ってくれる常連客だった。商店街は、そのありがたみを再認識。店にひとりでも多くの常連客を増やすような新たな取組みを行いたい、と考えるようになった。そんな折、商工会議所からコロナ対策にひもづいた市の補助金の情報が舞い込んでくる。

「このご時世、集客イベントはできないけれど、〝密〞を生まずに多くの人に店の魅力に気付いてもらうための何かをやりたいと。せっかくなのでこれまでにないことを、と思って相談したのが、地元のクリエイターでした。自分たちが考えつかないような発想が欲しかったんです」

とは、同連盟の活性化部長で米由商店(米穀店)の店主、岡部久功さん。声をかけたのは、同じ街で雑貨店兼シェアスペースBookmarkを営む徳永一貴さんと、アンテナショップKOFKAを運営する岡本恒介さんだった。

地元クリエイターの起用が店主の魅力を引き出した
情緒ある街並みの飯能市の中心市街地。高度経済成長期には道が見えないくらいのにぎわいだったという

 徳永さんは、’17年に都内から飯能銀座商店街にオフィスを移転してきたクリエイター。飯能の伝統文化や店主の人柄を知るうちに、その魅力を外部に発信したいと思うようになっていた。そして、同じ思いを抱いていた岡本さんとタッグを組み、’20年に商店街の店主をモデルにしたポスター2枚を〝ゲリラ的に〞自主制作した。その時予想以上に周囲の反応が良かったことから、今回はポスター展へと構想を膨らませる。このアイデアを耳にした鈴木さんと岡部さんは、迷うことなく賛同、こうしてポスター展のプロジェクトが始動した。制作期間は1か月。回覧板で参加店舗を募ったところ、150店舗中50店舗もの店主たちが手を挙げた。

 このプロジェクトで肝となるのは、〝店主や店の個性を振り切って表現する〞という制作テーマと、それを実現するために、子どもの頃から地元に住み商店街のことをよく知るデザイナー(6人)、カメラマン(5人)を起用したことだ。デザイナーとカメラマンは、2人1組でペアをつくって、担当する店舗に足を運んだ。

 昔ながらで保守的な傾向もあるこの地域は、シャイな店主たちも多い。だからこそ、こうした大胆なアイデアを実行することで、店主たちの内に秘めた魅力を引き出してもらいたいと、岡部さんは思ったという。また、クリエイターたちのバックグラウンドも、功を奏した。

「私の店に来たカメラマンとデザイナーは昔からよく知っている後輩のような存在でした。だから緊張せずにリラックスして撮影に臨めました。2人に言われるがまま、ポーズをとって」

 そうして出来上がったポスターには、精米機の前で星形のおもちゃのスティックを握り、「美味しくなーれー。綺麗になーれー」と唱える岡部さんの姿が。制作陣が、素の人柄を知っているからこそ、こんなキュートな演出ができたのだ。

 ポスターは、どれも店主たちの個性を端的に捉えたインパクトのある傑作揃い。実は、店主たちは完成までそれを一切、目にしていなかった。ポスターを初めて見た時の彼らの反応は、みんな、まず驚き、そして大きな笑いが生まれたという。

左)・中)店頭に飾られたポスターがお客様との会話のきっかけに。右)「ちょっと恥ずかしかったけど、うれしかったね」と 話すのは、人気投票1位に輝いた「滝長」の店主

商店街はモノだけでなくヒトの発信も大事
飯能商工会議所・當麻拓充さん
商店街の取組みをバックアップする當麻さん。店主たちとは気心の知れた仲

 ’21年2月に開催された「飯能がんばる商店街ポスター展」では、街なかの3カ所にポスター全50点がずらりと展示され、市のホームページでも紹介された。すると市内外で話題となり、地元テレビや新聞などで幾度となく取り上げられた。

 また、来街者が好みのポスターを投票できるような仕組みも導入した。各参加店舗にそれぞれのポスターと、投票用紙、投票箱を設置するなど、回遊の機会を増やす工夫も施された。

「このポスター展は、これまでの商店街の取組みのなかで、マスコミや市民からの反響がずば抜けて大きかった」と語るのは、飯能商工会議所の當麻拓充さん。コロナ禍ではあるものの、問い合わせが後を絶たず、街なかではポスターを前に記念撮影する人々の姿も多く見られた。店主たちにとっては、お客さんとの会話が弾むきっかけにもなった。

「私も小さいお子さんに『ポスターのおじちゃん!』と声をかけられるようになりました。今では、すっかり子どもたちの人気者ですよ(笑)。やはり、店主の顔が見えるということは大切なことなんですね。お客さんとの距離がぐっと縮まりました」(岡部さん)

「投票用紙には店へのコメントが書いてあって、その温かい言葉に励まされました。この反響を見て、次のポスター展には絶対参加すると言っているお店も多いんですよ(笑)。ぜひとも次につなげていきたいですね」(鈴木さん)

 大成功で幕を閉じたポスター展の余韻は、2か月たった今(取材当時)でもまだ続いていて、街を歩けば額に入れられたポスターが、各店先で誇らしげに掲げられている。「宝物ですよ」と言う鮮魚店の店主や、「これを見た時はうれしくてなんだか涙がこみ上げてきたねえ」というおもちゃ屋の店主の声。実はこの額は、制作チームが地元名産の西川材を使って、利益度外視で手づくりしたものだ。「ポスターは店主の皆さんとつくり上げた我々の渾身の作品ですから。立派な額に入れて家宝にしていただけたらと思って、プレゼントしました(笑)」

と、岡本さん。徳永さんが続ける。

「このプロジェクトを行ったことで、やっと商店街の仲間になれたという気持ちです」 
ポスター展は、お客さんと店主の間だけでなく、クリエイターと店主の間にも絆を生んだ。

「街に貢献したいと思っているクリエイターは実は多いんですよ。でも、どうやって接点を持っていいかわからない。そんな時に気軽に交われる場所や機会をつくって橋渡しができるような存在に、自分たちがなれればいい」 と、徳永さんと岡本さんは笑顔を見せた。

★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2021 Spring(春号)に掲載されています。
「EGAO」をご覧になりたい方はこちらへ。

商店街活性化の情報誌「EGAO」

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