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活性化事例

大きなイベントがなくても武器はある!自然体で紡ぐ商店街の日常

情報発信

コミュニティ

商店街名 塚口商店街振興組合/兵庫県尼崎市

塚口“笑”店街。その名に偽りなし。どの店へ行っても、店主たちが優しい笑みを浮かべて、私たちを迎え入れる。用事がなくても、ホッコリしたくてつい足を運びたくなる商店街だ。そう、この笑顔こそが、彼ら自身が見出した街の魅力。その日常にお邪魔した。

写真は塚口商店街の笑顔の一部。左上より時計回りで、「魚里本家」里村さん、「たこ焼き みつよ」みつよさん、「松葉寿司」
岡本兄弟、「アリクイ食堂」吉井さん、「居肴屋わくわく」村田さん。どの店へ行っても居心地が良い

普段の商店街が感じられる情報を発信

 大阪と神戸をつなぐ阪急神戸線「塚口」駅北側のエリアに広がる塚口商店街振興組合は、住宅が混在する商店街。駅から徒歩5分圏内に、飲食店や美容室を中心に小さな店舗が30ほど点在している。通勤帰りに気軽にふらっと立ち寄れる親しみやすい雰囲気の街だ。

 この商店街が’21年1月、情報誌『笑える今日がここにある塚口笑店街』を発行した。フルカラー28 ページの冊子を開くと、まず目に飛び込んでくるのは、店主、スタッフと客の心温まる笑顔である。「長引くコロナ禍で、いつ日常に戻れるのかがわからない不安な今こそ、街の人々に 〝日常の笑顔〞を思い出してもらい心を軽くしてもらおう」というコンセプトで制作した。

中心地に近い交通便利な場所でありながら、のんびりとした雰囲気が、このエリアの人気の理由

 コンテンツは、商店街での過ごし方を紹介する「ぶら散歩」、飲食店プロデュースの「ひるのみ」「よるのみ」、不動産店や家電販売店が生活の困りごとにQ&A方式で答える「ライフスタイル」など。コロナ対策としても、「商店街をうちで楽しむ方法(=テイクアウト情報)」に加え、6つの美容室がそれぞれ「おこもり美容」のアイデアを提案するなど、業種、業態ごとにユニークなテーマで内容がまとめられ、商店街の魅力が多面的に伝わる一冊となっている。

’21年1月発行の商店街情報誌『笑える今日がここにある 塚口笑店街』。普段、商店街の利用者がどのように過ごしているのかが、店主との関係性もあわせて伝わる一冊。カラフルなデザインで紹介されていて「こんな商店街なら行ってみたい」と思わせる

 デザインには写真を多用し、何気ない日常のシーンが大きく写し出されている。そして、どのページを開いても、そこには必ず店主の笑顔が。そんな誌面を見ていると、まるで普段の商店街の様子をのぞいているような、楽しい気分になってくる。

 国の「Go To商店街事業」を活用し、制作はプロのデザイナーとカメラマンに依頼した。だが、これら企画内容はすべて、この商店街が今まで実行してきた活動の実績をもとに、メンバー自身が決めたものだ。

「『Go To商店街事業』の活用を検討した時に、『コロナ禍の今、集客イベントを実施するのはリスクが高すぎる。PRの活動に特化しよう』という声が組合のメンバーから上がったんです。それならば、これまでに取り組んできたことや温めてきたアイデアを全部まとめて発信するのはどうか、となりました」と、塚口商店街振興組合理事長の村上憲司さんは話す。

 コロナへの対応として開始していたテイクアウト、毎月実施している「ひるのみ」イベントはもちろんのこと、これから集客を増やしたい「よるのみ」企画や「塚口商店街文化祭」(=ワークショップのイベント)で店主たちが行ってきた講座など、これまで蓄積してきた活動の紹介に、美容室のメンバーたちからの新しい提案を加え、企画はあっという間に決まっていった。

活性化委員会で商店街に風を通して
塚口商店街振興組合・理事長 村上憲司さん
写真館「スタジオクローバー」店主。’20年、父・康憲さんより理事長職を引き継ぐ。風通 しの良い組織を目指す

 こうした商店街の活発な活動とその意思決定の核となっているのが、「活性化委員会」だ。この委員会は、組織内の意見交換を促し、若手組合員の商店街活動の参加意欲を高めることを目的に、’14年にスタートした。

「以前の商店街の会合は、幹部が決めたことを他の組合員に伝えるトップダウンの意思伝達の場で、正直あまり面白いと感じたことはありませんでした。それが、この委員会をつくろうということになって、同世代のメンバーで集まってしゃべってみたところ、これがなかなかの個性派ぞろいで、面白くて」と、村上さんは第1回目の活性化委員会を振り返る。以来、毎月1度10〜15人が必ず集まり、商店街活動のアイデアを話し合うようになった。
「塚口笑店街」という、いわばこの商店街のブランド名も、この会で創り出された。

「誰かが『うちの商店街は何か特別なものがあるわけではないけれど、どのお店へ行ってもいつも笑っているよね』と言ったんです。それがきっかけで私たちの商店街の在り方を象徴する『塚口〝笑〞店街』という名前が生まれました。そして、この名前を使って、商店街の存在を地域にPRしていこうとみんなで決めたんです」(村上さん)

副理事長の里村文崇さんによると、立場に遠慮することなく本音の意見を出し合うなかで、実施されるイベントの性質も変わっていったそうだ。「各々商売があるので、イベントのために店の外へ出ていくのは正直しんどいよね。じゃあ、店の中にいてできることをすればいいんじゃない、と」

 こうして生まれたイベントのひとつが、毎月第3土曜日の午後2時から5時まで開催の「塚口うまいもん昼ズひるのみ(通称ひるのみ)」だ。「月に1度ぐらいは昼間から堂々と飲んでみるのもいいじゃない」と来街者に呼びかけるこのイベントは、「パスポート(300円)」の購入で、参加店舗が提供するお得なメニューが味わえる、飲食店の新規顧客の開拓を狙う取組みである。参加店舗の顔ぶれはその時々の店主の都合で変わるが、常に15店舗ほどが参加しているという。店主が普段通り店にいれば実行可能なイベントなので、ひとりで切り盛りしている小さな店でも無理なく参加できる。

 飲み歩きの合間に立ち寄れるようにと、美容室など飲食店以外の店も特別メニューを用意して、その存在感をアピールしている。

笑顔の源は人と人のつながり
笑顔がウリの商店街らしく、街に掲示されている商店街マップにも店主の似顔絵を並べて、親しみのある印象に

 実は若手の成長を願い、活性化委員会の立ち上げを力強くサポートしたのは、前理事長ら年長者だった。若手の活動が軌道に乗ったこともあり、’20年、商店街は世代交代を行った。

 こうした横と縦のつながりがしっかりした組織は盤石だ。いざという時にも心強いと、6年ほど前から「アリクイ食堂」を営む吉井佳子さん(副理事長も務める)は語る。「台風が来た時に、植木鉢が倒れていないか見てくれたり、『看板が壊れてるよ』と声をかけてくれたり。今回のコロナ禍でも、『アクリル板、あそこの100均に売ってるよ』と教え合ったり、本当に頼りになる人ばかり。ここで店を構えて本当に良かった」

 そんな様子に、最近では近隣の組合に所属する店舗から、組合を掛け持ちしてでも塚口商店街に加入したいと申し出がくるようになった。隣の商店街に店を構える老舗「松葉寿司」もそのひとつである。

「皆さんが仲良くいろいろなことに取り組んでいる様子が楽しそうで。自分たちも一緒に何かやりたいと強く思うようになりました」(岡本博幸社長、岡本剛志専務)  この温かいつながりは、店と地域の間にも。取材時に「たこ焼き みつよ」の前を通ると、店先の鉄板には大量の〝ハンバーグ〞が。聞けば、お客さんから常備用に70個焼いてほしいと頼まれたのだという。「たこ焼き屋なんだけど、ハンバーグ焼いてるのよ」とにこやかに笑う店主のみつよさん。こんなやり取りの日常が、この街のかけがえのない宝なのだ。

積極的な意見交換がアイデアの鍵

若手の活躍が目覚ましい塚口商店街のターニングポイントは、’14年、にぎわい補助金の説明のために国から派遣されたコンサルタントの助言を受け、「活性化委員会」を発足したことだ。以来、月1回フラットな意見交換を行うことで、若手の連帯感と存在感は増していく。写真は取材時の「居肴屋和くわく」2階での委員会の様子。「まん延防止等重点措置」の対応について真剣な話し合いが行われていた。

★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2021 Spring(春号)に掲載されています。
「EGAO」をご覧になりたい方はこちらへ。

商店街活性化の情報誌「EGAO」

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