事業名 | 商人塾支援事業 |
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商店街名 | 阿南商工会議所・阿南市3商店街など/徳島県阿南市 |
四国最東端に位置し、徳島県南の一大商業地として知られる阿南市。これまで、店主たちは各商店街単位で「まちゼミ」や「繁盛店づくり支援事業」などで個店力向上や店舗同士、商店街同士の連携を育んできた。今回「商人塾支援事業」で見出した、新たな街の魅力とは――。
今回の商人塾では、異なるエリアの混成チームを4つつくり、それぞれのチームごとに阿南市の新しい観光ツアー
“ロコたび”のプランを検討し、発表。各地域の資源がつながった魅力的なプランが生まれた
きっかけは市中心に位置する富岡商店街協同組合が’13年に初開催した「阿南まちゼミ」。徐々にリピーター増や売上増につながり、手応えを得た店主たちは高みを目指して’17年に「繁盛店づくり支援事業」に取り組んだ。講師による実践的な指導のもと、参加者は魅力ある店づくりのノウハウを習得。ある参加店では実施前に比べて売上が150%増加するなど成果を生み、さらには商店街の横のつながりも強化される。複数店舗での公開臨店研修を中心とした同事業だからこそ、互いの店を深く知る機会にもなり、店主同士が意見交換ができる関係性が生まれた。その結果、カーテン専門店と雑貨店がコラボレーションしてイベントを行うなど、新しい動きが始まった。
活動はさらに勢いを増し、’18年からはまちゼミから独自に発展した「あなんまちマルシェ」をスタート。これはJR阿南駅周辺に商店主たちなどが出店するイベントで、まちゼミよりも広範囲な近隣の商工会、市や教育委員会との連携を生み、すでに開催は3回を数える。
「回を重ねるごとに、みなさん自信をつけて、自主的に行動を起こすようになり、活動の輪が日増しに広がっています。コロナ禍の今だからこそ、この輪を活かして、お互いに知恵を出し合い地元の魅力を磨くことが大切ではないかと考え、商人塾支援事業に向けて動き出しました」 そう話すのは、まちゼミ立ち上げ時のキーマンであり、この商人塾のコーディネーターも務める阿南商工会議所の野村千寿子さん。かくして、これまでつながりがなかったエリアも含めた4地域を軸に商人塾が始まった。
今回の商人塾には、「富岡商店街協同組合」「新野商工振興会」「協同組合橘優良店会」という3つの商店街と、まちおこし団体「特定非営利活動法人加茂谷元気なまちづくり会」、さらに地域おこし協力隊員や地元の高校生まで、地域・年齢・職業の枠を超えて30名以上が集まった。掲げた大テーマは、「阿南の魅力再発見」だ。
「コロナ禍でマイクロツーリズムの需要が高まっており、市内や県内の方々を意識した魅力づくりが重要だと考えています。阿南市は広いので、市内各地域お互いの資源を知ることで新しい化学反応が起きると期待しました」(野村さん)
全6回の研修のうち、初日は講師のリモート講演で、地域の魅力を軸に塾生が連携する手法を学んだ。2回目からは主にディスカッション。まず自分たちの住む地域の良さを抽出し、その後は地域混合のグループを編成。各地域の魅力を共有したうえで深掘りし、組み合わせて阿南を楽しむ観光ツアー〝ロコたび〞を企画、発表した。初めて顔を合わせる人がほとんどだったものの、阿南市への愛情とまちおこしへの思いは同じ。すぐに打ち解けて絆を強めていった。
なお、野村さんら運営側は新型コロナウイルス感染症対策と参加者のコミュニケーションを両立させることにも尽力した。塾生はソーシャルディスタンスを保てる広い会場に集まり、講師はオンライン会議システムにて遠隔登壇。会場にいる野村さんが塾生たちと画面の中の講師のつなぎ役として細やかにフォローしたことで、終始活発な意見が交わされる場となった。
こうした結果、野村さんが「もう少しブラッシュアップすれば実現も可能」と言うほど、各チームからは具体性の高い旅のプランが誕生。たとえば海で豊富に採れるひじきと、内陸側で栽培されているマンゴーなどの食材を商店街で料理していただく体験など、多地域が連携するからこそのツアー案が続々と生まれたのだ。これらの資源も、「今回話を聞くまでは知らなかった」という参加者も多数いた。
「それぞれの地域に外からの視点を取り入れることで、阿南の観光コンテンツとなり得る〝宝〞を発掘できました」と野村さん。自分たちでは当たり前だと思っていることに光を当てる大切さも学ぶ機会となったようだ。
最終回では、ひとりずつ今後の展望や行いたい取組みを発表。「地域と高校生を結ぶ役割を担いたい」と宣言した高校生は、学校に商店を紹介するポスターを貼ったり取材をしたりと今も熱心に活動を続けている。
こうして個々の意識の高まりと、地域や職業を超えた関係性の構築を得た今回の商人塾。従来からの「まちゼミ」と「あなんまちマルシェ」は今後も中身を充実させながら継続し、企画された観光ツアーは実行への道を探る。活性化の〝旅〞は、始まったばかりだ。
2 0 1 3年 まちゼミ
各商店の人が講師となり、プロならではの知識やノウハウを地域の人に無料で教える少人数制の講座。
阿南市では’13年から年に1 ~ 2回ほど開催を続けており、新規顧客の獲得につながるなど成果を見せている。
2 0 1 7年 繁盛店づくり支援事業
まちゼミで獲得した新規客をリピートにつなげられるよう店の魅力を高めたいと、’17 ~’19年に実施。
3年間で計12店舗が参加し、売上が150%伸びた店舗や店同士のコラボレーションが生まれるなどの成果があった。
2 0 1 8年 あなんまちマルシェ
まちゼミ10回記念を機に’18年から毎年開催。市内外の店舗やハンドメイド作家、高校生たちもブース出店し、
子育て世代からお年寄りまでが楽しめるイベントに成長。’20年は、コロナ対策として日程や会場を分散させ大成功。
この支援事業について詳しくは 商人塾支援事業
★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2021 Spring(春号)に掲載されています。
「EGAO」をご覧になりたい方はこちらへ。