商店街名 | 那覇市平和通り商店街振興組合・市場本通り会・市場中央通り会ほか/沖縄県那覇市 |
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大好きな商店街のお店をこれ以上潰したくない――そんな想いで立ち上がった女性4人が、オンラインショップ「マチグヮーストア」を開設。手づくり感満載の味わい深い商品で、沖縄の商店街の魅力を届けている。
「マチグヮーストア」を開設した4人。左から、津覇綾子さん、畑井モト子さん、金城忍さん、与儀静香さん
沖縄・那覇の国際通り周辺(平和通り、市場本通り、市場中央通り) は、戦後から続く複数の商店街が存在し、コロナ禍前は多くの観光客でにぎわっていた。
ところが、緊急事態宣言発令後の4月中旬から客足が激減。ゴーストタウンと化した商店街を救おうと、有志がオンラインショップを立ち上げた。それが「マチグヮーストア」。マチグヮーは沖縄の方言で商店街を意味し、グヮーには愛しいもの、大事なもの、という意味もある。
「マチグヮーストア」の運営メンバーは、地元商店街に愛着を持つ女性たち。平和通りで陶器店「津覇商店」を営む津覇綾子さん、生まれも育ちも那覇マチグヮーの金城忍さん、パラソル通りのメキシコ雑貨店「tope」店主の与儀静香さん、フリーデザイナーとして活動する畑井モト子さんの4人だ。それぞれ本業を抱えながらのボランティアだが、「コロナ禍で潰れるお店が出てほしくない」との想いでオンラインショップの開設に至ったという。
ちんすこうから鰹節、三線にかんざしまで。「マチグヮーストア」では、実在する商店から集めた個性豊かなアイテムを販売する。眺めていると、「こんなお店もあったのか」と興味をそそられ、足を運んでみたくなる。それこそが運営メンバーの狙いだと金城さんは言う。
「オンラインショップはあくまでも発信の場であり、最終目的は実際のお店に来ていただくこと。店舗の紹介も絡めながら楽しく発信して、観光客だけでなく、地元の方にも改めて商店街の良さを知ってもらうきっかけになればと思っています」
そもそも近年、地元客の利用が減っていた国際通り周辺の商店街。地域の暮らしに役立つ専門店がたくさんあるのに、地元客は郊外のスーパーへ行ってしまう。コロナ禍でその現実が浮き彫りとなり、地元へのアピールの必要性も痛感したという。
「マチグヮーストア」の商品写真は、運営メンバーがスマホで撮影しているそうだが、背景に路地や店舗が写り込んでいたり、店主がモデルをしていたりと、商店街のあたたかな雰囲気が伝わってくるものばかり。これもまた、「ここに行ってみたい」と思わせる工夫のひとつだ。
「マチグヮーストア」の立ち上げは、構想に2カ月を費やしたものの、制作期間は1週間だったとか。「最初はお金をかけずに最低限から始めよう」ということで無料のECサイトを活用。畑井さんを中心に、ロゴ制作やサイトデザインもすべて自前で行った。
並行して知り合いの店主に声をかけ、「おもしろいね」と共感してくれた13店舗から約40種類の商品を集めて掲載。’20年6月20日に晴れてオンラインショップをオープンさせた。
広報活動にも力を入れ、オープン前にはメディア各社にプレスリリースを送付。地元新聞・テレビなどに取り上げられ、周知に成功した。また、SNSで情報発信も行ってきた。
現在、「マチグヮーストア」に掲載中の店舗は約30店、商品は100点ほどにまで増加。「うちの商品も掲載してほしい」という店舗も徐々に増え、特に年配の店主からは「自分ではできないからありがたい」と喜ばれているという。また、「こんな企画はどう?」と提案してくれる店主が出てくるなど、共に商店街を盛り上げようとする一体感も生まれているようだ。
「マチグヮーストア」で特徴的なのが、商品の売り方。単品販売だけでなく、複数店舗の商品を組み合わせたセット販売も行っている。たとえば、「やみつきの詰合せ」を購入すると、7店舗分のおつまみ各種と長皿、ランチバッグが届き、商店街で買い回りした気分を味わえる。
「多彩な専門店が混在している」という商店街の強みを活かした販売方法といえるだろう。
日々のSNS更新で店舗や商品の魅力を伝え続けた結果、今では沖縄県内はもちろん、遠く北海道からも注文が入るようになった。多い時には1日4~5件の注文が入り、週に3回の集荷・発送作業を行っている。
集荷は、運営メンバーがそれぞれの店舗に歩いて取りに行くというアナログな方法。労力はかかるが、店に顔を出すと「オンラインショップを見て来てくれたお客さんがいたよ」など店主の声が聞けることもあり、活動の励みになっているという。
今後の目標を聞くと、「目指すは年商1億円(笑)」と金城さん。オンラインショップ=商店街の発信の場という信念は変わらないが、やるからには売上アップも目指していく。そのためにも、毎日のように皆で集まり、ミーティングを欠かさない。また、ウェブマーケティングを学んだり、eコマースを支援する沖縄県の補助金に応募したりなど、意欲的に活動している。
国際通り周辺の商店街は、9月中旬頃からようやく営業を再開する店舗が増えてきたが、まだ半分ほどはシャッターを閉めたまま。オンラインショップ利用者から、「実店舗をめぐる『オンライン買い物ツアー』を企画してほしい」という要望も届いている。
単にモノを売るだけではない、無限の可能性を秘めた「マチグヮーストア」。デジタルの力を借りてリアルな商店街を盛り上げる挑戦は、これからも続いてゆく。
★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2020 Autumn(秋号)に掲載されています。
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