商店街名 | 奉還町商店街振興組合/岡山県岡山市 |
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明治初頭、廃藩置県で職を失った藩士たちが失業手当(奉還金)を元手に商いを始めた――そんな地名にも由来する街特有のDNAを受け継いだのか、岡山奉還町商店街の若手たちは、コロナ禍という逆境の中、時宜を得た発想で街に息吹を与える。その活躍の様子を紹介しよう。
4月、緊急事態宣言発出からわずか10日後のこと。岡山奉還町商店街に、お客様の「ありがとう」の声が響く。「コロナに負けるな! 奉還マスク大作戦!!」と銘打ち、振興組合の青年部の有志がオリジナルマスクを製作、買い物客に配布したのだ。
発案者は、老舗仏具店の若旦那・岸紘史さん。地域の寺院に眠っている奉納品のさらし布に着目し、この取組みを企画。折しも深刻なマスク不足に悩んでいた地元客は大いに喜んだという。
柔軟な発想と迅速な動きで難局を乗り越える。そんな若手の活躍が目覚ましい奉還町商店街では、2年前、大きな組織改編が行われた。年上の世代が年下の世代に街の未来を託して勇退、その想いを受けて若手執行部は青年部と連動し、商店街の活動に弾みをつけた。
若手たちは毎週集まり、「商店街として何ができるか」を議論してきたという。その話し合いの土壌がこのコロナ禍に、ゆるぎなき組織の力として発揮されている。
青年部は、8月に16店舗で「ぐるり奉還町」というイベントをトライアルで開催。お客様が参加店での購入を示すレシートを提示すれば他の参加店で割引や特典を受けられるという仕組みの、人を密集させない集客イベントだ。
「〝密〞を避けて多くの方にいらしていただくために、回遊イベントを考えました。お店がお客様に別のお店をオススメすることで、商店街めぐりを楽しんでいただきます。でも、お客様との話のついでに他所の店を紹介することって、昔は当たり前の光景だったんじゃないでしょうか。これからの商店街の〝新しい日常〞とは、私たちが忘れがちな古き良き日本の商店街そのものなのかもしれませんね」
そう語るのは、スマートフォン修理店を営む、同イベントの考案者・辻昭吾さん。
各店舗にとって新規顧客獲得のチャンスにもなる「ぐるり奉還町」。来街者からも好評で、11月からは参加店を50店舗に増やし、本格開催となっている。
★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2020 Autumn (秋号)に掲載されています。
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