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活性化事例

外国人観光客×お店×通訳の全員が満足できるマッチングシステム

個店活性

観光

商店街名 函館朝市協同組合連合会/北海道函館市

北海道の玄関口である函館駅に隣接し、年間400万人もの観光客が訪れる人気スポット、函館朝市。ここで年々増加するインバウンドの観光客と商店各々のニーズを汲んで生まれた通訳マッチングシステム「タビヤク」が好調だ。道外への展開も決まり、その効果に期待が高まっている。

通訳スタッフが店主と外国人観光客の間の橋渡しとなり両者をサポートする

リアルタイム通訳効果で商店売上が劇的に向上
一目で通訳スタッフとわかるようビブスを着用。外国人に伝わりにくい盆踊りも通訳の紹介が参加・交流のきっかけに

インバウンド対応に苦慮する商店街が多いなか、新しいシステムを開発し、注目を集めているのが、函館朝市協同組合連合会だ。「旅を通訳して役に立つ」――通称タビヤクは、通訳スキルを活かしたい個人と、通訳を必要とする観光地や施設・商店をマッチングする、ユニークなシェアリングエコノミーシステム。通訳を務めるのは市内の高校生・大学生や主婦、定年退職後の世代といった、語学力を持つ登録制のスタッフだ。彼らが朝市を巡回し、外国人観光客と店主とのやりとりをリアルタイムの通訳でサポート。この試みが、今、売上に大きく貢献している。

函館朝市にはもともとインバウンドで観光客が多く訪れていたが、その利用はほぼ飲食店に限られ、海産物などの土産物店の売上につながらないという悩みを抱えていた。
そこで対策として’16年に外国人観光客向けの「総合インフォメーションカウンター」を設置。英語を話せるスタッフを常駐させ、海外への商品発送も強化した。ところが、窓口を訪れる人は少なく、むしろ店先で英語のコミュニケーションに苦戦する店主の姿が多いことから、観光客と店の間にこそ通訳サポートが必要な状況が浮かび上がった。そこで、通訳サポートの実証実験を行った結果、延べ32店舗すべてで売上が飛躍的に上昇。ここで手応えを得た同連合会は、タビヤクにつながるシステムの本格稼働に乗り出した。

タビヤクのガイドレクチャー の様子。’20年3月現在で登録人数は25人に

タビヤクは、各店舗が通訳者に所定のアルバイト料を支払って運営するスタイル。補助金に頼らずに自走できる仕組みを構築し、このサービスの長期的な持続と発展をねらう。すでに函館市内の他の観光スポットでもタビヤクが実施され、そこでも大きな手応えが得られている。

タビヤクの重要なポイントは、かかわる人それぞれに大きなメリットがあるということ。インバウンド層は、値段以外の商品の質や内容を知って安心して買い物ができ、そこに地域住民との交流という体験もプラスされる。店は、観光客からの売上アップはもちろん、商品を伝える通訳者自身の購買も促される。そしてタビヤクを担う通訳者は、店先での実務を通じた通訳体験で自らの語学力を磨くことができる。三方よしのマッチングシステムだ。

「利用した観光客の方が通訳行きつけの店を訪れたり、地域の盆踊りを体験するというケースもあり、モノだけでなくコトの消費にもつながっています」

タビヤクの発案者でもある松田悌一さん

タビヤク実行委員会代表で函館朝市協同組合連合会の事務局長を務める松田悌一さんは、大局的な視点で語る。そもそもタビヤクの主意は「おもてなしを広げる」こと。外国人観光客が地域の人とのふれあいを気軽に楽しめるタビヤクのシステムを、いずれ全国の商店街や観光地で展開することが松田さんの目標だ。まずは青森県での実施予定を控え、その一歩を着実に踏み出している。

個々の店舗では改善しにくい言葉の壁を商店街が一体となって越え、新たな消費をもたらしたタビヤク。市民の力と商店街とのつながりを観光に活かした柔軟なアプローチは、多くの可能性を与えてくれている。

★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2020 Spring(春号)に掲載されています。
「EGAO」をご覧になりたい方はこちらへ。

商店街活性化の情報誌「EGAO」

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