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活性化事例

住民自らが店を運営し街をつくる

トータルプラン

地域振興

空店舗活用

コミュニティ

事業名 トータルプラン(地活法認定)
商店街名 福山本通商店街振興組合/広島県福山市

商店街の頭を悩ます「空き店舗問題」だが、福山本通商店街では、商店街が空き店舗を活用し繁盛店として生まれ変わらせた。手を緩めることなく、次々と放たれる二の矢三の矢——。行動する組織の、個店と商店街の活性化術を追った。

まちなか情報室ぜっぴ  店名は福山の方言で「絶対に、必ず」の意味。レンタルボックスでリサイクル品や手作り品などを販売。10人のマネージャーが交代で店長を務めている。常ににぎやかな社交場だ

全員がオーナーの店だから やりがいが生まれる
福山本通商店街地域街づくり事業本部 参与
木村恭之さん
商店街活性化の中心人物。商店街を紹介するパンフレットも自ら作成した

 城下町・福山市に広がる福山本通商店街。

約60年の歴史を持ち市内外から人を集めていた同商店街だが、平成元年をピークに衰退傾向に。オーナーの高齢化などで空き店舗が増す状況に危機感を覚え、立ち上がったのが同商店街地域街づくり事業本部参与の木村恭之さんだ。

「イベントや交流施設づくりなどで、一定の効果はあったんですが、やっぱり日常的な集客こそが大事だと思い至りました」

 そうして’11年に空き店舗を活用して立ち上げたのが「まちなか情報室ぜっぴ」。

レンタルボックスの物販所であり、服飾制作場でもあり、相談室も備えたコミュニティスペースだ。オープン時、レンタルボックス出店者を募ったところ、主婦を中心に80人が集まり、半年で150〜200人に増えたという。

ただの買い物所ではなく、触れ合いを大切にした「ぜっぴ」成功の影には、桒田慶子さんの存在がある。

「まちづくりの核になるという確信があった」と、マネージャー制と日替わり店長の仕組みを導入。全員参加型のこのシステムは、「ぜっぴ方式」と呼ばれ、福山市から「福山ブランド」にも認定された。

「ここはみなさん全員がオーナー。店長を務めることでやりがいを得られ、まちづくりへの参加にもつながる」とその意義を語る。

 

桒田慶子さん
「コミュニティ」の目線を持って、「ぜっぴ」や「umbrella」の運営に携わる

 翌年には、そんな元気な女性たちが「パンのマルシェ」を企画。

商店街に食パン形の旗を立て、テーブルにはギンガムチェックのクロス。パンとワインを楽しみ、BGMはシャンソン。「商店街がパリの街角になった」と評判を呼び、メディアにも取り上げられるイベントに。

 そして’16年4月、行政の支援を得ながら「ぜっぴ」の進化形としてオープンしたのが「コミュニティハウスumbrella」。

「ぜっぴより若い層がターゲットで、多世代が交流できる、新しいつながりをつくる場です」と木村さんが話すように、洗練されたカフェスペースに販売用レンタルボックス、そしてレンタルルームなど、多様な設備で多くの人に利用されている。

コミュニティハウス umbrella

カフェと壁面のレンタルボックスを中心とした空間で、月に2回「まちなか寄席」も開催。「パンのマルシェ」波及効果で、コミュニティスペースに隣接してベーグル店も開業している。

緑のアーケードをつくって 魅力ある個店を誘致
緑いっぱいの美しいストリートガーデン。植物への水やりや簡単な剪定作業は住民や店主が行うことで、コミュニケーションも密に

 個店の盛り上がりとリンクするように、街並みも姿を変えた。

アーケードが老朽化した際、「経年劣化を起こさないものとして、植物に覆われたらいいな、と。自然を取りこみたかったんです」と木村さんは、地元の設計者・前田圭介さんとともに「ストリートガーデン」を考案。

そして’14 年、隣接する福山本通船町商店街振興組合とともに計画したのが、「福山らしさを発信する本通地域『とおり町ストリートガーデン計画』推進事業」だ。

 その実現のため全国商店街支援センターの「地域商店街活性化法認定支援事業」を活用。書類作成などのサポートを受けた。

 その後補助金を得て、ついに’16 年7月、緑に覆われたストリートガーデンが誕生。
21 世紀型の新しいオープンエアー商店街として、注目を集めた。

「これまで商店街が通り道でしかなかった人たちからも、目と心が癒されると評判です」と木村さん。
通行量も増加傾向にあり、この追い風に乗って開催した、ガーデンストリートを会場にしたイベント「ガーデンマルシェ」も大盛況。今後も、屋外空間ならではの企画を仕掛けていく予定だ。

「深みのある大人の街、感性の高い街をめざしたい」と木村さん。そのためには、魅力ある個店がもっと必要だとも言う。

洗練された街並みやイベント発信を通して、新しい店を迎える舞台は整った。実際、「緑のあるこのストリートがいいから出店したい」というオファーが増えているという。

 個店を立ち上げ、街並みを変え、新しい人材を呼ぶ。行動する商店街の努力は今、実を結ぼうとしている。

DATA
福山駅から徒歩5分に位置し、約60店舗を有する。通りは江戸時代からあり、伝統をいかしつつ新たな取組みに注力。ライトアップされた夜のストリートガーデンも美しい

’16年11月には初の「ガーデンマルシェ」を開催。
パン、ロハス、アンティークの3つのテーマで開かれ、多くの人が訪れた。「このにぎわいを日常の商店街にも呼び寄せることが課題」と木村さんは今後を見据える。ガーデンマルシェは、当面は春と秋に開催していくという

関連リンク

この支援事業について詳しくは  トータルプラン作成支援事業(地活法認定)

★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2017 Spring(春号)に掲載されています。
「EGAO」をご覧になりたい方はこちらへ。

商店街活性化の情報誌「EGAO」

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