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(ゲーム)×(資源開発) リピーターを生む秘訣はコンテンツの数珠つなぎ

地域資源

地域振興

各種連携

商店街名 協同組合東舞鶴商店街連盟/京都府舞鶴市

かつて旧海軍の鎮守府が置かれ栄えていた東舞鶴の街には、今も軍艦の名がついた通りや商店街がある。そんな海軍ゆかりの街で、コンテンツツーリズムによるまちおこしが進む。地域資源とゲームやアニメが融合するこの取組みは、地域と商店街にどう作用しているのだろうか。

左から土田さんと松井さん夫婦。土田さんは洋品店、松井さんは理髪店を営みながら、まちづくりにも全力で取り組む

ジリ貧の商店街にゲームが活路を開く

「艦隊これくしょん-艦これ―」(以下「艦これ」)をご存知だろうか?’13年発売のシミュレーションゲームで、実在した艦隊を女性に擬人化して育成し強力な連合艦隊を編成するという内容で人気を集め、漫画やアニメなどメディアミックス展開が図られている。特筆すべきは、作品の世界観を二次創作した同人誌やグッズにも熱狂的なファンがいることだ。そして、そのファンたちを観光客として街に呼び込んでいるのが、東舞鶴中心市街地のまちづくり団体だ。

「何もせずにいたら街は寂れていくだけ。近隣の住民もどんどん減ってきている。まずは人に来てもらわなければ。そうなると、やはり観光で外から呼び込むしかない」

そう話すのは、協同組合東舞鶴商店街連盟理事の土田幸正さん。東舞鶴駅の北側に集積する商店街は、かつては北京都エリアの主要商店街として名を馳せ、他県からの来街者も多かった。だが近年は、およそ3割が空き店舗という状況に。頼みの綱の観光も、「海軍記念館」「赤れんが博物館」「舞鶴引揚記念館」などのスポットはあるものの、いずれも商店街とは少し離れた場所にあり、観光客はほとんど街を訪れることがなかった。
人を街へと誘う、決定的なコンテンツは何かないか――そう考えている時に出会ったのが、「艦これ」だった。

’20年2月の「砲雷撃戦舞鶴」の様子。今回も長蛇の列ができた。

’14年2月9日、舞鶴赤れんがパークにて、二次創作物を販売する同人誌即売会が、東京のイベント運営団体によって開催された。その日は運悪く大雪で、公共交通機関が不通になったものの、1500人ものファンが、全国からやってきた。土田さんはその時、確信を得たという。
「陸の孤島のような状況でも、こんなに人が集まった。これはいける! と思いましたね」

実は、このコンテンツの可能性に以前から気づいていた人物がいた。赤れんがパークで地域振興イベントを積極的に開催している、地元理髪店のオーナー・松井功さんだ。
「海軍関連の資産との相性の良さはもちろんですが、これまでにない客層に来てもらえるチャンスにもなる。即売会も定期的に開催されますし、発信もSNSを使えばコストもかからない」
松井さんは、土田さんら地元の有志らと、まちづくり団体MCA(舞鶴クリエイティブアソシエーション)を結成、本格的に取組みをスタートさせた。

コンテンツ連動の商品や場が回遊増に
おみやげ館には二次創作物のグッズと海軍資料が同居する。土地柄、若い自衛隊員が訪れることも多く、松井さんは街や海軍について話すことも

MCAは組織内に「舞鶴鎮守府実行委員会」をつくり、関係団体と連携して舞鶴でのイベントにかかわるようになる。
「会場では、地元の海鮮料理などの露店をたくさん出すようにしています。他の場所の即売会にはこんなにおいしいものはないと、ファンの方たちにすごく喜ばれています」(土田さん)
こうして巧みに地元のPRを兼ねながら来場者のおもてなしを続けた結果、即売会の人気はSNSなどを通じて上昇、来場者数は1万人を超えるまでになった。加えて彼らの中には舞鶴自体に興味を持ち、街歩きをする者も現れる。

こうなると、次の課題は〝商店街への誘客〞だ。東舞鶴の観光ルートで駅に戻る前に最後に通るのが商店街。そこに「艦これ」ファンを引きつける強い要素があれば、と空き店舗を活用してつくったのが「海軍御用達おみやげ館」だ。海軍と二次創作物のグッズショップである。

「おみやげ館は、〝ミリタリー〞と〝ゲーム〞という、異なるファン層が交わる場になっています。ゲームや同人誌をきっかけに入ってきた人が、ここで街の歴史や海軍について知り、舞鶴にさらに興味をもってくれれば」(松井さん) 街なかに回遊の拠点を設ける他にも、即売会に作品を出している人気のイラストレーターに、地域のグルメマンガを描いてもらい飲食店への来客を促進。こうした取組みで街なかを歩く人が少しずつ増えていくことで、商人魂に火がつく店主たちも現れる。

トレンドにアンテナを張りコンテンツを増やしていく

「精肉店や酒店など、自発的にこのムーブメントを意識した商品展開をする店舗が出てきました。ファンが買っていくので、確実に売上は上がる。他の店でも、キャラクターのパネルを店先に出すなど、この機に乗じる動きがあります」(土田さん) こうして、コンテンツツーリズムは、そこに関連する商品や場という新しいコンテンツを生み出し、一定の成果をあげている。しかし、メンバーには気の緩みはない。

「ひとつのコンテンツには寿命があります。だから、他の魅力をどんどん開拓し、来るたびに新しい驚きのある街にしたい。世の中にはそんなコンテンツのヒントがたくさん。アンテナを張ることが大切ですね」と松井さん。その言葉通り、旧海軍所有の島を使ったサバイバルゲームの聖地化や、街なかの五条公園跡地の活用など、街を面白くする新たな企画が目白押し。まちづくり会社をつくり体制も強化する予定で、同人誌即売会で培った商店街や他団体とのネットワークもさらに広がるに違いない。コンテンツを活かして街の力を高める、そんな循環が生まれている。

★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2020 Spring(春号)に掲載されています。
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商店街活性化の情報誌「EGAO」

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