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活性化事例

(ラグビー)×(コミュニティ)“一生に一度”のイベントが “この先ずっと”のチームを生む

イベント

地域資源

各種連携

商店街名 花園商店会・花園本町商店会・パザパはなぞの店舗会/大阪府東大阪市

空前の盛り上がりを見せたラグビーワールドカップ日本大会。試合会場のひとつ「花園ラグビー場」に最も近い商店街・花園商店会は、この機を逃さず、近隣の2つの商店街とスクラムを組み、おもてなし大作戦を展開。大会後も地域を盛り上げるチームづくりに邁進している。

右から花園本町商店会会長・白山登茂和さん、パザパはなぞの店舗会の大浦奈々子さん、花園本町商店会相談役・木元久美子さん、
花園商店会会長・前田正道さん

ワールドカップ開催に向け共同で勉強会をスタート
11月に開催されたイベント「ラグビー選手が商店街にやってきた‼」では、ラグビー体験や選手とのふれあいが行われた。にぎやかな笑い声が商店街に響く

ワールドカップを目指して挑戦を続けていたのは、日本代表だけではない。花園ラグビー場の近くに位置する花園商店会も、「この大会開催を地域にどう活かすか」を模索していた。

’16年、同商店会は近鉄河内花園駅近隣の花園本町商店会、パザパはなぞの店舗会とともに3商店街で「花園地区商業団体連絡会」を結成。勉強会「ラグビーワールドカップ盛り上げ隊・花園商人塾」をスタートさせた。まずは東大阪市職員のイングラ ンド大会視察報告を聞き、計4回のワークショップで大会に向けた商店街や個店の魅力づくり、 英語での接客方法、地域との効果的な連携などをともに学んだ。さらに今まで花園本町商店会が主催していたイベント「百円笑店街」をこの機に3商店街で合同開催。ホームチームである近鉄ライナーズの選手も参加するなど、ラグビーを応援する街としてのムードを高めていった。

「実は、ワールドカップ開催が決まるまでは、一緒に何かに取り組むことはなかったんです」と明かすのは、花園商店会会長の前田正道さん。それまで、3商店街はそれぞれ違う方向性で活動をしていた。駅北側にある花園商店会は「高齢者に優しい商店街」を目指し、前田さん自らも空き店舗を活用した高齢者の活動サロンやコミュニティカフェなどを運営。商店街の各店舗も認知症サポーターの養成講座を受講し、地域支援の体制を整えてきた。

一方、駅南側の花園本町商店会では、前述の百円笑店街やハロウィンイベントに加え、飲食店が地産地消の取組みを牽引。南北の商店街をつなぐ駅前のマンション兼ショッピングモール「パザパはなぞの」の店舗会は、ファミリー層が多く暮らしており、子ども対象のイベントなどを実施していた。「古くからある2商店街と異なり、私たちは新しい団体でなかなか連携できなかった。だからこそ、ラグビーはご一緒するいいきっかけとなりました」

と、パザパはなぞの店舗会の大浦奈々子さん。ラグビーが取り持った縁は、それぞれの特性を活かして発展していく。

台風被害もなんのその。熱は地域に広がっていく
台風被害を受けた直後のアーケード。店主たちが一致団結してリニューアルへ
花園商店会のリニューアル時には市長も訪問

街全体でラグビー熱が高まるなか、花園商店会を悲劇が襲う。大会一年前の’18年9月、台風21号によりアーケードが全損する被害を受けたのだ。

しかし、 ピンチはチャンスとばかりに前田さんは「ラグビー商店街」としてのリニューアルを決断。合意形成から補助金申請までスピーディーにやり遂げ、被災から約一年後、同商店会は、ゴールポスト風の入口、ラグビーボールやラガーシャツ型の街灯などを備えた完全ラグビー仕様のオープンエアー型商店街へと生まれ変わる。

リニューアルセレモニーでは、南北2つのゲートの間を商店街関係者がパス回しをしたり、スクラムを組みながら パレード。徹底的にラグビーにこだわったパフォーマンスの模様はメディアでも大きく取り上げられた。

商店街の活動の熱は、地域や周辺住民にも伝播していった。地元の花園高校と連携し、生徒がデザインしたタペストリーや顔出しパネルを設置したほか、自治会とも協力し観戦客の商店街や駅への動線を示す案内ポスターを道沿いに掲示。飲食店が連なる和なごみ横丁では、各店がパブリックビューイングやキャッシュレス決済への準備も進めた。開幕直前には「チーム花園駅おもてなし隊」を結成、9月18日の総決起集会は50名が集まり、3商店街と関係自治会、各種団体、住民が一丸となって大会本番を迎えた。

左から、高校生たち力作の顔出しパネル。大学生と制作した英語の指差しシート。ラグビー選手たちのサインで埋め尽くされた「ラグビー酒場」はファン定番の店 。 街なかのいたるところにラグビーにちなんだ仕掛けが

若き世代へ引き継がれるラグビーで得た絆
大好評のお年寄お手製おもてなしグッズ。

花園ラグビー場での開催は4試合。商店街を訪れた人数は合計約2500人を記録し、「日本対南アフリカ」戦を放送した花園ラグビー場でのパブリックビューイングには、会場に1万2000人が来場。花園商店会の通りでは、おもてなしの一環として、地域の高齢者が丹精を込めて折り紙で手づくりした着物風の箸入れやラガーシャツ風の楊枝入れを来街者に贈呈。事前に300セットを用意したが、9月22日の初戦でなくなり、以降お年寄りたちは試合に向け日々量産に追われるという嬉しいハプニングも。

ラグビー選手たちはイベントに積極参加

「花園ラグビー場に一番近い駅 ではないにもかかわらず、かつてないほど多くの方々に来ていただき、大会に向けた活動もメディアにたくさん取り上げてもらいました。ここには、もともとポテンシャルの高い店が多いんです。ラグビーを通してその実力を知らしめる機会にもなりました。商店主も地域住民もこの体験で、わが街をより誇りに思うようになったのでは」と前田さんが話せば、花園本町商店会相談役の木元久美子さんは〝絆〞を語る。「3商店街が一丸となって、発信力は確実に高まりました。ラグビーという共通言語を持ち店主たちのコミュニケーションもかつてないほどスムーズです」

その絆は、新世代のプレイヤーたちに引き継がれる。花園本町商店会の若き会長・白山登茂和さんは、「これからも一致団結して、花園を盛り上げていきたい。街全体の回遊性を高めたり、住む人、訪れる人が一緒に交流できる場所づくりにも注力して、将来、子どもたちに引き継げる街にしたいです」と力強く未来を語る。
それぞれの商店街や店主たち、住民が同じ方向を見て、力いっぱい取り組むことで、地域の絆は強固になる。ラグビーという地域の資源を最大限に活かし、3つの商店街は、今後もトライを続けていく。

★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2020Spring(春号)に掲載されています。
「EGAO」をご覧になりたい方はこちらへ。

商店街活性化の情報誌「EGAO」

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