事業名 | 空き店舗総合支援パッケージ事業 |
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商店街名 | 若松商店街連合会・北九州商工会議所/福岡県北九州市 |
若戸大橋、若戸トンネルの無料化により新たなビジネスの地として注目を集める北九州市若松区。そこで、商店街と商工会議所がタッグを組み、「トータルプラン作成支援事業」と「トライアル実行支援事業」を活用し(空き店舗総合支援パッケージ事業)、空き店舗を活用した「お試し出店」にチャレンジ。「商店街から創業者を育成しよう」と動き始めた。
若松区と戸畑区を結ぶシンボル的存在の若戸大橋。周辺には「旧古河鉱業若松ビル」(写真左)など歴史ある建築物も多い
’18年12月、福岡県北九州市の若松区と戸畑区を結ぶ若戸大橋と若戸トンネルが無料化された。小倉・戸畑方面からのアクセスは向上、若松区は今、人口が増加、企業進出も続いている。かねてから高齢化による後継者不足や空き店舗の増加という課題を抱えていた若松商店街連合会は、この勢いを新たなビジネスチャンスにつなげようと奮起。’16年からトータルプラン作成支援事業に取り組み、検討を重ねた結果、商店街から創業者を育んでいこうと動きだす。
’19年7月、同連合会は、トライアル実行支援事業を活用し、創業希望者に向け「空き店舗でのお試し出店と商店街ツアー」を企画。さっそく利用可能な空き店舗を探し始める。同連合会副会長・牛島源さんは、「すべては足を使った地道な作業でした。店は閉めているが貸せない、貸せるが老朽化している、など事情はさまざま。時には『建物はもう使えないので駐車場にしてしまいたい』と言われたことも。でもそうなっては、新規出店は叶わない。今すぐ手を打たなくては、と思いを強くしました」と振り返る。
そうして徹底的に個人家主や不動産会社に情報収集を重ねた結果、空き店舗(貸せる店舗)の「見える化」を実現。最終的に「商売は続けられなくなったが、商店街へ恩返しをしたい」というかつての履物店と化粧品店の2店舗のオーナーから協力を得られることになった。
今回実施したお試し出店は2回。9月に商店街が主催した納涼イベント「若松わいわい大縁日」内で実施した「1日限定お試し出店」と、10月~11月に元履物店と元化粧品店で1週間~数週間実施した「期間限定お試し出店」だ。
募集にはポスター、チラシ配布の他、市広報や地元金融機関にも協力を仰ぎ、広く周知した。商店街には横断幕を掲げて応援体制をアピール、機運を高めた。
各お試し出店の実施前には「お試し出店者対象説明会・商店街ツアー」を開催。これには’18年度に同様の企画を実施した市内の黄金地区商店連合会の事例に学び、若松ならではの工夫を加えた。説明会では、牛島さんが商店街と商売について、商工会議所と市の担当者が創業支援や助成制度について話し、座談会で疑問点を即解消。参加者が実際に創業するイメージを高めた状態で商店街をツアーで巡れるようにした。新規創業した靴店、周辺の病院、区役所もコースに入れ、実際の出店の様子や居住者目線で若松を知ってもらうことにも注力した。
9月の1日限定お試し出店には4組が参加。イベントでの模擬店形式だったこともあり食品販売した店の売上は上々。当初、商店街側は「1日限定で自信をつけた人が期間限定に駒を進める」という想定をしていたが、1日限定の出店者は1日のみの催事参加と捉えたようだった。
10月からの期間限定お試し出店ではメンバーは変わり、新たな5組の出店者を迎える。全員女性、商店街での本格出店を見据えており、最初から高い熱量で取り組んでくれたという。北九州商工会議所の三好伸広さんは、「想定外の気づきも大きな収穫です。ノウハウを培い取組みを継続していきたい」と話す。
お試し出店の最中にも「次はいつやるのか」「参加したい」という問い合わせが相次いだ。同商工会議所若松サービスセンター長・武末雅史さんも手応えを感じ、「若松全体に多様なやる気が眠っているのは確か。魅力を伝えながら自然と新規創業者が集う土壌を皆で醸成したい」と期待感いっぱいに語る。
「フリースペース&かおりカフェ」
庄野忍さんのお試し出店・11/25~30
ハーブティーやコーヒー、アロマなど香りを楽しめるカフェと、ハンドメイド作家が作品を展示販売できるフリースペース運営での出店。
「大家さんは『棚がそのまま残っていて申し訳ない』と言っていましたが、作品をすぐに飾ることができ、照明もついていてむしろありがたかったです。じっくり街の雰囲気を見ながら体験していきたい」と話す間にも、いくつかハンドメイド作品が売れていった。周囲の店主たちにも見守られながら、出だしは好調のようだ。
「ともや」
大庭知子さんのお試し出店・11/17~24
ママ友の大橋友恵さんとふたりで子どもたちが楽しめる空間やイベントの企画、近隣で採れる野菜販売など、人と人、人とモノをつなぐ活動をする大庭さん。2階に住む家主とも意気投合、日々交流を深めている。
「NPO法人の立ち上げを決意してから、実質1カ月でお試し出店が叶いました。何から何まで相談できる商工会議所のサポートが心強かったです。若松は観光資源もたくさんあるのに宿泊施設が少ない。将来はゲストハウスにも挑戦したいです」と夢は膨らむ。
この支援事業について詳しくは 空き店舗総合支援パッケージ事業
★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2020 Spring(春号)に掲載されています。
「EGAO」をご覧になりたい方はこちらへ。