商店街名 | 魚町商店街振興組合・魚町サンロード商店街協同組合/福岡県北九州市 |
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あらゆる取組みが花開く!進化を続ける街・北九州へ
福岡県北部に位置する政令指定都市、北九州市。市内各地の商店街は、それぞれの個性に合わせ活性化に取り組み、個店の魅力向上、人材育成、連携強化などを達成してきた。そこで、魚町、旦過、若松の3エリアをめぐり、それぞれの取組みの道のり、そして成果を探った。
平成25 年度 商店街の創業促進事業 他 活用
魚町サンロード商店街。国家戦略特区に認定されて以降、夜市の開催が可能になり、飲食店を中心に出店が続く。
お酒の飲める路面店は平日もにぎわうように
小倉駅からほど近い魚町商店街。かつては九州の玄関口として工業で栄えた小倉だが、やがて経済の拠点は博多駅に移り、バブル崩壊後には空きビルや空き店舗が目立つようになった。
そこで近年、同商店街では空きビルや空き店舗のリノベーションに注力。交流拠点となるサンリオビルをまちづくり会社と連携し一括マネジメント、地域のニーズに応じたテナントを誘致するなど努力を重ねてきた。
「商店街は、起業したい人が集まる場所。新しいお店が新しいお客さんを呼び込み、新世代が商店街を活性化する好循環が生まれます。リノベーションは、そのきっかけづくりでした」
そう語るのは、魚町商店街振興組合理事長と魚町サンロード商店街協同組合理事長を兼任する梯(かけはし)輝元さん。魚町サンロード商店街は、魚町商店街と近距離にあり、これまでふたつの商店街を股にかけてリノベーションによる活性化を図ってきた。
魚町エリアのリノベーションの火付け役となったのは、’11年6月にオープンした「メルカート三番街」。さらに、’12年6月には「ポポラート三番街」、’14年6月には「ビッコロ三番街」がオープンした。建築家がデザインを手がけることで洗練された空間へと生まれ変わり、現在は、あらゆる業態のスタートアップ拠点および、若手クリエイターの工房として機能している。
また、’16年4月に北九州市が国家戦略特区に認定されたことを受け、市とも連携し、魚町サンロードの公道上における飲食・物販・サービス事業が可能に。エリアマネジメント事業として夜市、マルシェ、オープンカフェといった取組みを実施し、好評を博している。認定前の’15年8月には老朽化した魚町サンロードのアーケードを完全撤去しており、撤去費の一部は夜市の出店料からあてるなど、規制緩和で生まれたにぎわいをコスト運用にいかす手法も光る。日中の薄暗さが払拭されたことで空き店舗に新しい飲食店などが入り、若い客層を呼び込み、今まで以上に往来のある通りへと変化した。梯さんは、リノベーシ ョンを手がける際には、「街の記憶を残すことが大切だと考えています」と話す。内装をリノベーションした後も外観の趣を残したままのビルや、アーケード撤去後も残っている支柱を、地域の大切な財産と捉えている。
画期的な試みが奏功し、両商店街における空き店舗は全体の1割程度に。ひと通りのリノベーションが済んだ現在、新たな価値を生み出そうとしている。
「ハード面を整備してお客さんを待っているだけでは意味がない。街に新しい顧客を呼び込むチャレンジに期待しています」
商店街全体としても顧客の新規開拓に取り組む。地域人口が減少する中、交流人口の増大がカギを握ると考え、LCC(格安航空会社)の就航により激増している中国・韓国の観光客に着目。3カ国語対応のパンフレットづくりやWi-Fi整備などを通して、受け入れ態勢を強化している。
「商店街は新しいチャレンジをする場所だし、できる場所。新しい価値観やビジネスをどんどん発信していきたい」
さかのぼること約60年前、日本で初めてアーケードを公道上に設えたのが魚町商店街だった。そんな「進取の気性」は今も健在。若き力と従来の店主、さらに商店街が一致団結して、新しいチャレンジを続けている。
リノベーションは魚町エリア以外にも広がっている。旦過市場に隣接する人気のゲストハウス「タンガテーブル」は、もともと学習塾だった建物をリノベーション。ドミトリーには広々としたダイニングバーが併設されており、北九州を旅する人々の交流拠点として親しまれている。梯さんはこちらの運営にも協力している。
★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2017 Autumn(秋号)に掲載されています。
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