事業名 | トータルプラン作成支援事業 |
---|---|
商店街名 | 行方商業協同組合/茨城県行方市 |
令和元年度実施の「トータルプラン作成」支援事業の事例を紹介。新たにサイクリングロードが開通――街の変化を好機と捉え、新たな客層の獲得に挑む。
霞ヶ浦や筑波山を見ながら走れることで人気の「つくば霞ヶ浦りんりんロード」
日本全国からサイクリストが集まる
’16年11月、茨城県にある旧筑波鉄道の廃線敷と霞ヶ浦の周囲を巡る全長約180㎞の日本屈指のサイクリングコース「つくば霞ヶ浦りんりんロード」が全線開通。これを〝好機〞と動き出した人たちがいた。行方商業協同組合だ。霞ヶ浦に接する茨城県行方市は、公共交通の手段が乏しく、市外から訪れるお客様が少なかった。そこで、この開通に合わせサイクリストを呼び込もうと考えたのだ。
’17年、まずは県の「商店街活性化コンペ事業」へ応募。見事優秀賞に選ばれ、早速、サイクリストを対象とした地域や商店街の魅力発信、オリジナル商品の開発、サイクルスタンドの設置といった環境整備を開始した。
活動や周知が広がるなかでサイクリストに加えて地域の人々にも商店街や個店を利用するきっかけをつくりたいという思いが生まれ、’18年には支援センターの「トライアル実行支援事業」を活用し1カ月にわたるイベント「2018ぐるっとNAMEGATAプロジェクト」を実施。結果は上々。飲食店5店舗のスタンプラリーでは県内外から訪れた人々が行方の食を楽しみ、ボトルやエコバッグといったオリジナル商品の開発モニタリングアンケートには300を超える回答を得た。
この取組みはサイクリストや地域の消費を掘り起こすきっかけをつくり、さまざまな世代の声を集めることもできた一方で、サイクリストが訪れる週末に休みの店舗もあることや、商店街には主な客層が地元の高齢者である業種も多いという気づきも得られた。同時に、それらの気づきを踏まえ、商店街という集合体としてみんなで一緒に考え、課題を解決していきたいという気持ちも生まれていった。
「『個性を活かしつつ、みんなで豊かな商店街にしたい』とそれぞれが気づいた」と話すのは、理事を務める橋本茂さん。その思いに応えたのが「トータルプラン作成支援事業」だ。
時折「うーん……」と考え込みながら付せんに〝理想のお客様像〞を次々と書いていく。トータルプラン作成支援事業1回目の研修で挙がった強みや弱み、追い風となる要因などを踏まえ、2回目の研修では目指す商店街像をつくり上げていく。
「自転車や釣りが趣味の人」、「子育て世代の家族」、「シニア層」、「ポイントをためるのが好きな人」。これら〝理想のお客様像〞を考えることは、商店街や地域に来てほしいターゲットを絞ることへとつながる。
さらにターゲットに向けて何をしたらいいかをテーマごとに異なる色の付せんへ書いていく。「シニア世代向けポイントサービスなど、ポイントカードの活用」、「散歩コース、観光ルートづくり」、「子ども連れが楽しめる場所づくり」、「統一された〝行方の味〞のイメージづくり、新商品開発」などのアイデアで、模造紙はいっぱいに。
「ふたつの支援事業を通して、〝みんなで考える時間ができた〞ことが最大の成果かもしれません」と話すのは、理事長の大竹幹男さん。また副理事長の村田邦彦さんは、「一連の研修から、柱となる組合の指針と、後進へ引き継ぐノウハウを確立できたらいい」と語ってくれた。
研修では、商店街のキャッチフレーズも検討。講師からは「覚えやすさ、リズムが大事。地名や方言も入れると親しみが増す」とのアドバイス。
次々湧き出るアイデアについて、「何気ない会話の延長で、話し合いが活発なのがこの組合のよさ。アイデアや考えがポンポン出てくるので、若い世代も意見を出しやすいです」と笑うのは、事務局の新堀月美さん。研修をきっかけに思いをひとつにして、今まさにペダルを漕ぎだしたのだった。
この支援事業について詳しくは トータルプラン作成支援事業
★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2019 Autumn(秋号)に掲載されています。
「EGAO」をご覧になりたい方はこちらへ。