商店街名 | 帯広電信通り商店街振興組合(北海道帯広市) |
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'11年3月、道内で初めて地域商店街活性化法の認定を受け、5年計画で「お年寄り 障がいのある方と協働・共生する商店街づくり」に取り組んできた帯広電信通り商店街。各地の社会福祉法人やNPO法人と協力して多くの雇用を創出し、現在さらなる発展・拡大をしている。
「思い出工房 TEnoHIRA」で働く利用者とスタッフ。
商店街の工房で革小物や木工品などを制作・販売している
商店街が法人化された’74年には73あった店舗が、’10年になると32店舗まで減少。近隣の中学校の閉校も決まり、少子高齢化が進むばかり――。
そんな状況に危機感を覚えた帯広電信通り商店街振興組合の長谷渉理事長は、’10年、商店街の活性化に向けて動き出した。しかし現実に目を向けると、商店街単体では資金も知恵も不足しており、継続的に活性化事業を行うのは難しい。そこで考えたのが、社会福祉法人やNPO法人とともに、国の補助金を活用して福祉事業や起業家支援事業を進めて創業を増やし、空き店舗を減らしていくというオリジナルプランだった。
パートナーに福祉事業者を選んだ理由は、当時、近隣に帯広市の障がい者支援センターが開設されることが決まっており、将来的に障がい者の雇用や居住地確保の必要性が高まると見込んだからでもあった。
左から、商店街と社会福祉法人が共同運営するコミュニティショップ「ミナミナ」、障がい者が店長を務めるアンテナショップ「べんぞう商店」、福祉相談員による相談所「心音」など“福祉の商店街”を象徴する店舗が並ぶ。’16年には地域の交流拠点として「salon 齋藤亭」もオープン
’11年に地域商店街活性化法の認定を受けて以来、さまざまな活性化事業に取り組んできた同商店街。その結果、スタート時点で10軒あった空き店舗はゼロとなり、商店街区を約1・3倍に拡張するまでに発展した。
拡張したエリアには、古民家を改装した住民のための交流施設「salon(サロン) 齋藤亭」を開設。また、今春にはコーヒー焙煎工場「T orrefaction LINDA(トレファクション リンダ)」が新たにオープンした。
’17年現在、商店街の加盟店は51店舗にまで増加。うち、国や道などの補助金を活用して新たに創業した店は11軒にものぼる。雇用も着々と増えており、特に福祉関連の施設では120名ほどの新規雇用につながっているとのことだ。
新聞などのメディアを活用して活動を広く発信していることもあり、この商店街に魅力を感じて新規参入を望む事業者は後を絶たない。そのため、既存の事業者が撤退しても、別の連携先と同じ活性化事業を継続できている。状況に応じて柔軟に事業形態を変えることも厭わない。
多機能型就労施設「KAёRU(かえる)」が運営する「思い出工房TEnoHIRA(てのひら)」も、提携先・事業形態を変えながら存続している店舗のひとつである。
「TEnoHIRA」はもともとは十勝ミートパイを製造販売する施設であったが、隣で営業していた革職人によるミニチュアランドセルの店「思い出工房」が経営者不在で廃業することになった時、その工房を引き継ぐことに決めた。
現在「TEnoHIRA」は活動の内容を変え、工房から継承した道具を使ってエゾシカの革小物などを制作販売している。「KAёRU」の清野真知施設長は、商店街の魅力をこう語る。
「この商店街の方々は、皆さん理解があって温かく見守ってくださるので、施設利用者さんも自信をもって堂々と働けています。だから私たちスタッフも、安心して利用者さんを迎えることができるんです」
同様の声は、「クッキーハウス ぶどうの木」や「ひだまり」など、他の店舗を営む福祉事業者からも聞くことができた。
商店街が本格的な活性化に乗り出して7年。商店街の専務理事であり、株式会社でんしんの専務理事兼会計担当の髙橋正章さんは、「当初思い描いていたプランは、100%どころか150%達成できた」と語る。今後も商店街のため、さらなる活性化を進めていく考えだ。
「いずれ超高齢化社会になった時、商店街は必ず役に立つ『宝』となる。だから残さなければいけないと思うんです。そのために加盟店を増やして組織力を高め、利用客をもっと増やしていきたいですね」(長谷理事長)。
同振興組合には、昨年より理事として若手の齊藤達也さんも加わった。長谷理事長、髙橋専務理事、齊藤理事を中心に、帯広電信通り商店街は益々発展していくことだろう。
★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2017 Autumn(秋号)に掲載されています。
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