HOME > 活性化事例 > 「熱海の奇跡」を生んだあたたかな眼差し 熱海銀座商店街振興組合(静岡県熱海市 )

活性化事例

「熱海の奇跡」を生んだあたたかな眼差し 熱海銀座商店街振興組合(静岡県熱海市 )

地域資源

各種連携

コミュニティ

特集 市来さんが活躍する街に行ってみた ― 特別座談会続編②

奇跡の復活を遂げたと言われる、熱海銀座商店街振興組合。その立役者の市来広一郎さんは、もとは商店街とは縁が薄い人物だ。商店街は市来さんの活動をどのように受け入れ支えているのか―。実際に店主たちに語ってもらおう。

左から、市来さん、小沢ひもの店代表 小沢毅さん、熱海銀座商店街振興組合前理事長 小倉一朗さん、
釜鶴ひもの店五代目 二見一輝瑠さん、caffè bar QUARTO 店主 加藤麻衣さん

支える人があってこそ街に新しい風が吹く

奇跡の復活を遂げたと巷で話題の熱海。老舗商店街である熱海銀座商店街の空き店舗は’11年に10軒だったが、’19年には1軒に。地価も上がりエリア人口も増加。被雇用者も’11年比で70人以上生まれている。

この成果を生み出したのは、市来さんを中心とした地域の人々の活動による。地域体験ツアーの実施で街の資源を掘り起こすことから始まった活動は、参画者同士の関係性を強めつつ、「リノベーションまちづくり」の手法を用いて商店街の空き店舗をカフェやゲストハウス、コワーキングスペースへと再生。新たな来街者やコミュニティを誕生させ、回遊性の向上へとつなげていった。
だが、市来さん自身は一度東京に出ているUターン組。熱海出身ではあるものの、商店街との縁は薄かった。そんな彼の活動を軌道に乗せたのは、地元商人たちの支えである。

「〝このままではまずい〞という意識は潜在的にあったものの、具体的に自分が何かしようとは思っていませんでした。でも、市来さんが活動を始めた時、この土地で新しい風を吹かせようとしている人を応援したいと思ったんです」

P.6 で指出さんが「宝物」と指摘した、昭和のアイコンのような熱海銀座商店街。約30 店舗が並び、距離的にも回遊しやすい。市来さんはこの街をベースに、さらに活動範囲を広げていく

そう語る同商店街振興組合の前理事長・小倉一朗さんは、江戸時代から続く土産物店「丸屋喜助商店」の六代目であり、市来さんの手がける「guest h o use MARUYA」のビルオーナーだ。老舗店がひしめく商店街には新しい動きに対して反発する声も生まれるもの。そうした声が市来さんらの活動を妨げないよう、市来さんと街の重鎮世代の間に入り、心を砕いてきた。

同じく江戸時代創業の老舗干物店「釜鶴ひもの店」の五代目・二見一輝瑠(ひかる)さんは、同級生の市来さんを熱海銀座に呼び込み、ともに積極的に行動してきた。「商店街の中で足並みをそろえるために四苦八苦するのは本末転倒。やる気のある者が一緒に活動を始めることで、やりやすい環境が自然と生まれる」と、〝有志連合〞の大切さを説く。

caffè bar QUARTO のようにオープンスペースの新しいカフェやゲストハウスができ、商店街の雰囲気は明らかに変わった。熱海一の老舗「小沢ひもの店」の小沢毅さんは、「新しい店が出るのは大歓迎。実際、若いお客さんが干物を買いに来るようになり、街が面白くなってきた」と笑顔を見せる。

おそらく、どの商店街にも志の高いリーダーや次世代の人材はいる。重要なのは、彼らの活動を温かく〝見守り、支える〞人々の存在なのかもしれない。

市来さんと共に活躍するメンバー!

商店街の重鎮
小倉一朗さん 熱海銀座商店街振興組合前理事長
熱海に精通しており、街歩きイベントではガイド役も務める小倉さん。街の生き字引として若手の信頼も厚い。「市来さんがまちづくりを始めたばかりの頃は文句を言う者もいましたが、邪魔さえしてくれなければいいと割り切っていました。新しい風を吹かせようとしても難しいこともある。特に、こうした歴史ある街だとね。そんな時には周りが協力して、風を呼び込める環境にしてあげるべきだと思います」


新世代の兄貴分
小沢毅さん 小沢ひもの店代表
創業和銅3年(710年)という老舗干物店の若旦那。熱海を出て一時渡米した後、実家の干物店を継ぐ。店内をDIY でスタイリッシュに改築するなど、新しいスタイルを店や街に持ち込んでいる。「最近は加藤さんのカフェをはじめ、新しい店が増えて、うちにも若いお客さんが来るようになり、変化を実感しています。今は熱海銀座も良い状況にあると思いますが、オリンピック以降にどうしていけるかが大事ですね」

有志連合のキーマン
二見一輝瑠さん 釜鶴ひもの店 五代目
老舗干物店「釜鶴ひもの店」の代表で、市来さん創業の株式会社machimori にも参画。地縁を活かして空き物件の紹介も行っている。『guest house MARUYA』のように、中の様子が見えるオープンな場所ができたことで、街の景色が変わりましたし、商店街に滞在する人も多くなりました。今後は街歩きマップなどを通して、観光客のみなさんに積極的に地域のお店を紹介することで、さらに回遊性を高めていきたいと考えています」

熱海のニューカマー
加藤麻衣さん caffè bar QUARTO 店主
熱海の創業支援プログラムに参加した後、「カフェ・バール・クァルト」をオープン。「熱海に通ううちに、この街が地元とも職場とも違う自分にとってのサードプレイスになっていきました。そして、自然と人間関係が広がり、店を出す際にもたくさんのアドバイスをいただきました。そんなコミュニティの強さに惹かれ出店した今、街の人たちの暮らしに溶け込み、地域に根差した店にしていきたいです」

関連リンク

商店街ニュース  1万人が100回訪れる街をつくる仕掛け―『ホテル ロマンス座カド』誕生

活性化事例  「活性化への第一歩は、 何を、 どうやる?」

★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2019 Autumn(秋号)に掲載されています。
「EGAO」をご覧になりたい方はこちらへ。

商店街活性化の情報誌「EGAO」

一覧はこちら
最上部へ