特集 | 櫻田さんが活躍する街に行ってみた ― 特別座談会続編① |
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商店街、地域住民が力を合わせて、目の前にある課題を少しずつ片付けていく。その成功体験を日々積み重ねることが、大きな未来への課題解決に通じる。
閉店したまちの駅を再生した、コミュニティショップ「OCHABA」。
「高齢者が買い物に困らないように」という住民の声をきっかけに誕生した
盛岡市から車で15分のところに位置する雫石町。その中心部にある「雫石よしゃれ通り商店街」は、かつての国道に面し、町民の日常生活を支える商店街だった。だが、盛岡市へアクセスしやすいバイパス道路が開通すると、買い物客は市内へと流出。20年程前には組合組織も解散となり、商店街は衰退の一途をたどっていった。
そんな街ににぎわいを、と雫石商工会の青年部員を発起人に’05年から始まったイベントが、「軽トラ市」だ。
「農業従事者が多い雫石町は、農家の軽トラック保有率も高い。朝収穫した新鮮な野菜をトラックの荷台に積み込んで商店街まで持ってきて売ってもらうことで、商店街に人が集まりお店も知っていただけるのではと考え、始めました。軽トラ市の開放的な雰囲気によって、今まで入りづらかったお店に入る人も増え、店主たちとの会話やかかわり合いが生まれました」 と、しずくいし軽トラ市実行委員長の相澤潤一さんは語る。
実は、この地域には相澤さんのように、商店街を盛り上げようとする人が以前から存在していた。しかし、商店街の中には、そうした志高い人たちを結集させる場が長い間なかった。
そこに近年新しい組織が誕生した。「零石よしゃれ通り周辺JV※」である。櫻田さんが理事長を務める「NPO法人まちサポ雫石」も声がけを手伝ってできたこの任意組織は、’17年に活動を開始した。JVの副代表の諏訪泰幸さんは、こう話す。
※JVとはJoint Venture(ジョイントベンチャー)の略。異なる企業などが共同で事業を行う組織のこと。
「JVはやる気があってできる人だけでスタートしたこともあり、フットワークの軽さが特徴です。一方で、メンバー全員が商売をしていることもあり、無理せずに、身の丈にあったできる範囲の活動をしています」
決まりごとがある法人のような組織ではなく、ゆるやかにまとまり、無理のない活動をする。そのスタンスが、持続的な商店街活動につながるのだ。
そのJVの活動を継続的に支えている櫻田さんは、地域おこし協力隊とともに「雫石町まちおこしセンターしずく×CAN」を運営。親子でゆったり過ごせるカフェや交流スペースをもつこの施設には、地域の人々が気軽にやって来て、「こんなことをやってみたい!」「困ったことがあるんだけど、どうしたらいい?」など次々に相談を持ちかける。櫻田さんは、そうした声を丁寧に拾い上げ、JVや住民、協力隊と一緒に、撤退したまちの駅を新しいコミュニティショップに生まれ変わらせたり、既存の地域イベントと新しい商店街イベントをコラボさせ、より大きなにぎわいづくりにつなげてきた。ボードゲームやバーベキューなどのミニイベントも頻繁に開催し、商店街に関わる人たちを増やす活動も特徴的だ。
「商店街の店頭には、軽トラを模したプランターが置かれていますが、この取組みも『お花を植えて商店街を華やかにしたい』という要望を受け、みんなで話し合って材料をそろえ、汗を流してつくりました。地域の人々が、実現に向けて実際に動きながら成功体験を積み重ねていけるよう、サポートしていきたいと思っています」
年々高齢化が進み、若者の数が減少していく、この地方都市の厳しい現実に対し、「これからもこの土地で暮らしていけるよう、今から自分たちが主体となってきちんと考えて行動し、地域のつながりをつくっていかなければ」 と櫻田さん。目の前にある一つひとつの活動は、大きな未来の課題解決に通じる道筋なのだ。
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★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の 2019 Autumn(秋号)に掲載されています。
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