事業名 | トータルプラン作成支援事業 |
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商店街名 | 松阪市よいほモール商店街振興組合/ 三重県松阪市 |
'67年(昭和42年)設立の松阪市よいほモール商店街振興組合。城下町にあり、明治創業の老舗から、生活に密着した商店までさまざまな業種が並ぶ、歴史ある商店街である。しかし商店街の集客を支えてきた市の公共施設が閉館するという事態に直面。この危機を跳ね返すための取組みが始まった。
松阪市よいほモール商店街振興組合の皆さん。研修には周辺商店街や市役所職員らも参加している。
「まちづくりは1 ~ 2年でできることではないので、20年先を見越した意見を交わしていきたい」と、長期的な取組みを期待する意見も
道幅が広く、すっきりとした印象の商店街。この外観は、’89年に商店街の近代化事業で整えられたもの。公的融資を活用して共同駐車場を取得整備し、カラー舗装、街路灯の設置、電柱地中化などに取り組んだ。しかし、近年は後継者不足や、郊外の大型店の進出などの影響で空き店舗が散見されるように。
さらに、商店街にある松阪市の男女共同参画学習施設「プラザ鈴」が利用者減や老朽化のため、’18年3月の閉館を決定した。このことで商店街の集客の低下、ひいては収入減が懸念されることから、店主たちは危機感を強めていた。「プラザ鈴」の跡地をどのように活用するかも、今後の課題だ。
そんな状況を打開すべく立ち上がったのが、松阪市よいほモール商店街振興組合の理事長、山田守人さんだ。相談先の三重県中小企業団体中央会から紹介され、「この機会にみんなで商店街の長期的なプランを作成しよう」とトータルプラン作成支援事業への取組みを決めた。時を同じくして松阪市が「豪商のまち松阪」中心市街地土地利用計画を発表。〝商店街を含めた中心部を市民にとって住みやすく、来街者にとっても魅力的にしよう〞というまちづくりの方針が決定した。こうして店主たちの商店街と地域の将来を見据え研修がスタートする。
まずはワークショップ形式で自分たちの強み・弱みを分析することに。ところが短所はたくさん挙がるものの長所はなかなか出てこない事態となる。講師を務める出口巳幸さんは「地元の人こそ自分たちの良さがわかりづらいもの。この商店街には歴史があり、まちには文化や観光資源がたくさんある。まずはそこへの気づきが活性化への第一歩なのです」と話す。
回を重ねじっくり議論を深めていくと、まちの歴史や特徴を全員で再認識、共有することができた。こうして3回の研修を経て、商店街は「技に厳しく、人にやさしい街 空と緑と文化と食と匠の街」をめざす方向性として決定した。4回目の研修では、付箋を使ったSWOT分析(※)。松阪牛や本居宣長、三井家発祥の地といった「地域資源の活用強化」や、商店街の財産でもある「個店の優れた商品をPR」するための具体策を全員で検討。
たとえば、「最近、外国人が増えてきた。今後は外国語対応の商店街ガイドマップを作ってみてはどうか」「写真映えする観光スポットが整備され始めた。SNSへの写真投稿に来店特典をつけてみてはどうか」といった意見が自由に飛び交った。今後はこれらの具体策を吟味し、実現に向けて次年度も研修を継続する予定だ。
「今まさに将来の商店街像を描く時期にきています。ここで核となる考え方の土台をしっかり作ることが大切です」と出口さん。山田さんも、「市中心部の商店街はどこも厳しい状況です。今、うちが頑張ることで起爆剤となり、周りにも良い影響を与えられればという思いです。どんどん周りを巻き込んでいきたい」と意気込む。
ここで生まれ育ち、まちを愛し、次世代に引き継ぎたいという思いはみんな一緒。意見を交換し合うことで連帯感が生まれ、アクションへとつながる。そんなプラスの連鎖が地域全体に広がり始めている。(※)SWOT分析…S:強み、W:弱み、O:機会、T:脅威の4つのカテゴリーで要因分析
この支援事業について詳しくは トータルプラン作成支援事業
★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2017 Autumn(秋号)に掲載されています。
「EGAO」をご覧になりたい方はこちらへ。