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活性化事例

商店街と保育園のシアワセな関係

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商店街名 基山モール商店街協同組合/佐賀県三養基郡基山町

佐賀県基山町にある基山モール商店街では、毎日のように明るい声が響き、活発に遊ぶ園児の姿を目にすることができる。商店街内に移転してきた保育園と良好な関係を築き、“商業の場”から“サービスの場”へ転換を図ろうとしているこの商店街のあり方に、全国から注目が集まっている。

“学び”と“集い”で持続可能な商店街へ
左) ちびはる保育園園長 杉原伸介さんと、
右) 基山モール商店街協同組合理事長 上田昭弘さん。

近年、人通りが少なくなり空き店舗が目立つようになった基山モール商店街。そこで’14年に全国商店街支援センターの「商店街よろず相談アドバイザー派遣事業」を活用して、商店街の課題を共有し、対策を検討。同年には空き店舗を活用して「まちなか公民館」を開設した。この施設は、周辺住民のサークル活動や小学生向けの将棋教室、写真展の会場などに活用され、地域の交流拠点として機能。これを機に買い物だけではなく、集い交流する場としての商店街へとかじを切った。

「イベントで集客しても一過性に終わってしまう。公民館のように、毎日誰かが来てくれる場所や仕組みをつくることで、商店街はにぎわい、持続的な集客にもつながるという考えがありました。ただ、さらに新しい顧客につなげるには、もう一手が必要でした」

そう話すのは基山モール商店街協同組合理事長の上田昭弘さん。そんなタイミングで、’16年、基山町役場の橋渡しにより、「ちびはる保育園」が商店街内の空き店舗に移転・開業することとなったのだ。
「保育園があることで、保護者のみなさんに定期的に来街していただける。各店にとっては子育て世代の新しいお客様になり得ます」
実際、商店街で利用できる商品券を配布し、保護者に店舗利用の機会を設けたほか、いくつかの店ではママ層をターゲットとした商品の充実を図るようになった。もちろん、メリットはそれだけではない。保育園から子どもの明るい声が聞こえてくることで、商店街の雰囲気は格段に華やぎ、店主たちや来街者も元気をもらっている。

同協同組合では商店街の歩行者専用道路「グリーンロード」にあった植え込みなどを撤去。それにより、園児が道に遊具を出して遊んだり、チョークで自由にお絵描きできるようになった。つまり、園児たちにとって商店街は格好の遊び場(園庭)なのだ。また、地域のお祭りに園児たちが商店街のメンバーとして参加するなど、保育園はすっかりこの商店街に溶けこんでいる。

ちびはる保育園園長の杉原伸介さんは、こうした商店街のサポートに「感謝の気持ちでいっぱいです」と話す。
「以前の場所は道路に面しており、事故の危険性もありました。終日歩行者天国の商店街では、そのリスクはほぼゼロ。また、毎朝あいさつを交わすなど、店主の方にも見守られている、という安心感もあります。園児の声がうるさいとトラブルになることもある昨今、みなさんが温かく迎え入れてくれたことは本当にありがたいです」

恩返しとして、保育園から商店街へ寄与する試みも行われている。
「週一回、お迎えに来た保護者の方に、商店街を回遊してもらっています。園児にとっても、すぐそばに仕事をしている大人がたくさんいて、その人たちと交われることは、教育的にも有意義だと感じています」
2月に実施した園内の発表会では、「仕事をしているひと」と題して、商店街のクリーニング店を取材。子どもたちが、さまざまな仕事を知る機会にもなっている。商店街と保育園は、あらゆる面でWIN‐WINの関係を築いているのだ。

現在、商店街には、保育園に加えて就労支援施設や学習塾、ダンススクールといった学びの場が増えつつある。これまでの商圏外から送り迎えに来る人もおり、新規顧客を得るチャンスはさらに拡大している。
「これからの時代に必要とされる学びや福祉の場を商店街の中に呼び込むことで、持続的な人の流れをつくっていきたい。そして、来街者のニーズに個店が応えていく。そうして、地域に根ざし、地域の人が行きたいと思っていただける商店街になれたら」と上田さん。
保育園から響く歓声は、商店街の未来を明るく照らしている。

左)保育園は商店街を回遊するお迎えルートを採用し、親子が各個店に触れる機会を創出
右)「和洋菓子あびによん」では、感謝の思いが印されたお菓子がママ世代に人気

★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2018 Autumn(秋号)に掲載されています。
「EGAO」をご覧になりたい方はこちらへ。

商店街活性化の情報誌「EGAO」

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