事業名 | トライアル実行支援事業 |
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商店街名 | よしゃれ通り周辺JV./岩手県岩手郡雫石町 |
ʼ22年の秋、よしゃれ通り周辺JV.は、買い物や生活に不便を感じている地域住民を対象とする「よりそい買い物サポート事業」をスタートさせた。「トライアル実行支援事業」を活用し、持続可能で暮らしやすい地域の実現と商店街の存続に向けて〝地域の悩みを解決する商店街〟として取組みを進めている。
地域の暮らしを豊かにするためのアイデアを詰め込んだ通販BOOK
ʼ22年11月21日、岩手県雫石町郊外の空き店舗を活用したコミュニティスペース「OZASIKI」は、人やモノでにぎわっていた。入口には「移動販売」の日用品、お菓子、雑貨などさまざまな商品が並んでいるほか、古い写真の復元、スマートフォンの使い方といった相談も受け付けている。近隣住民やのぼりを見かけて立ち寄った人がおしゃべりに花を咲かせながら買い物を楽しんでいた。
「ここにあった店がずいぶん前に閉店して寂しかった。やっぱり店が開いているとにぎやかでいいね」と、お客様のひとりが笑顔を見せる。
「この辺りは交通の便が悪く、車で出かけられない高齢者はちょっと買い物に行くのも難しい。そんな方々にも商品やサービスを届けたいとメンバーから声が上がったのが、移動販売を始めるきっかけでした」そう話すのは、雫石駅近くにある商店街組織「よしゃれ通り周辺JV.(以下JV.)」の会長・畠山 操さんと、事務局担当の角田邦昭さんだ。
JV.では、OZASIKIでの移動販売をʼ21年から不定期で開催してきた。しかし今回の開催には別の目的もあった。ʼ22年秋にJV.が立ち上げた「よりそい買い物サポート事業」と、それにともない作成したカタログ「通販BOOK」のお披露目イベントを兼ねていたのだ。
雫石町の中心部にある「よしゃれ通り」はかつて国道で、道沿いに商店街が形成され、地域の暮らしを支えてきた。しかし80年代にバイパスが開通すると客足が流れ、まちなかは衰退。店舗間の連携も薄れていった。
そんな危機的状況を打破しようと、中心部の店主有志が集まり、ʼ17 年にJV.を結成。全国商店街支援センターの事業を通じて学びを重ね、ʼ22年、商店街の新しいチャレンジをサポートする「トライアル実行支援事業」を活用し、かねてより課題だった〝買い物に来られない人へのサポート〞に本格的に乗り出した。
「以前は車で買い物に来ていた常連客も、高齢で出歩くことが難しくなり、それが店の売上減にもつながっている。出張販売をしている店もあるが 個店でニーズに応えるのには限界があり、チーム(商店街)で取り組みたいという声が多かった」と角田さん。前の年に「繁盛店づくり支援事業」を受講し効果を実感したことも後押しになったと話す。
トライアル実行支援事業は、「よりそい買い物サポート事業」の実施計画を練るところから始まった。地域住民の事情に合わせて、カタログ通販を核に、①自宅で(通販)、②近所で(移動販売)、③店で(商店街)という3つの買い物の手段を提供。NPOや社会福祉協議会とも連携し、注文や配達時のやりとりを共有することで見守り機能も備える内容に決まった。
今回の事業で最も肝要な点は、ターゲットとする高齢者にどうやって情報を届けるのか、ということ。講師のアドバイスを受けながら検討を重ねて製作した「通販BOOK」には、便利に使ってもらえるよう、「遠くの家族にギフトを贈りたい」「トイレが詰まった」など、利用者がニーズに沿って索引できる 「お悩み別もくじ」が設けられた。「単に店と商品を紹介するのではなく、利用者目線に立ったものがつくれた」 と角田さんは胸を張る。
通販BOOKのお披露目イベントと称した移動販売とスタンプラリーも実施。冒頭に紹介した移動販売もその一環で、直接商品を手に取って選ぶ楽しみを提供するとともに、店の人との会話から〝顔が見える関係〞を築いてもらい、通販利用のハードルを下げることを狙いとしている。
スタンプラリーでは、通販BOOKをラックに立てかけられる仕様のA型看板を参加店舗の前に設置。親しみやすい文字や絵で、商店街を歩く人に、店の魅力をアピールするとともに、通販サービスの周知も図る。
「今は自分で買い物に行ける人も、いつか通販BOOKが必要になるかもしれない。サービスをたくさんの人に知ってもらうことは、誰もが安心して暮らせる地域づくりにつながっていると思います」と角田さん。地域に根ざす商店街だからこそ、できること。その役割を見出し、発信しながら、地域とともに豊かな暮らしをつくっていく。
この支援事業について詳しくは トライアル実行支援事業
★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2023 Spring(春号)に掲載されています。
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