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事業名 トライアル実行支援事業
商店街名 まっとうまちなか協同組合/石川県白山市

相次ぐ大型店進出やコロナ禍による商環境の変化に立ち向かおうと、’20年、石川県白山市の中心市街地にある4つの商店街から新たに結成された「まっとうまちなか協同組合」。トライアル実行支援事業ではそのお披露目を兼ねて、ガイドブックと動画を作成。商店街の魅力を地域に広く発信する機会となった。

ガイドブック、動画制作、スタンプラリーの3本柱で商店街の絆を深めた

加盟店全店舗を巻き込んだ事業でつながりが深まる
加盟店全店の店主らの似顔絵フラッグが飾られた通り。お店の人の顔が見える商店街として、活性化をめざす

 北陸の主要都市・金沢から北陸本線で10分ほどの距離に位置する白山市・松任駅。中心市街地では、かつて大町、中町、安田町、茶屋町の4つの商店街が切磋琢磨しながら発展してきた歴史がある。70年代の最盛期には80店舗ほどの店がひしめき合っていた。しかし90年代に入ると大型店舗が短期間で次々と進出し、商店街へ足を運ぶ人は徐々に減少。さらには、北陸最大といわれる商業施設のオープンも発表され、商店街に不安が広がる。

 こうした環境の変化に負けないようにと、商店街では白山商工会議所とも連携しながらまちゼミの開催や、自主的に勉強会などを実施。’16年には協同組合の前身となる千代尼通り商店街協議会として、商人塾支援事業に取り組み、チームワークや発信力の重要性を学んできた。

まっとうまちなか協同組合 理事長 乙村貴正さん。「今後はさらに市や大学などを含め、地域の連携の輪を広げていきたい」と乙村さん

「今後商店街が輝きを取り戻すためには、4つの商店街をひとつの組織として集結させる必要性があると感じていました。そこで新たに『まっとうまちなか協同組合』をつくったのです」

 そう話すのは、同組合の理事長となった乙村貴正さん。組合ができた’20年4月は、コロナ禍の真只中。毎年行ってきたお祭りやイベントもできなくなってしまった。
「街に根づいたお祭りなど、子どもたちの記憶にも残る大切なものを守るためにも、私たち商店街は組織として強くなろう」と、乙村さんたちは決意する。

 再編成した商店街の活動機会があまり得られないなか、まず取り組んだのはオリジナルソング「I LOVE M A C H I N AKA」の制作。地元商店街だけではなく、全国の商店街に向け音楽を通じて元気を届けたいという思いでつくったと話す。白山市に縁のあるプロミュージシャンもレコーディングに参加し、ミュージックビデオには加盟店の店主らも巻き込んだ。

ガイドブックは初版に2,000部を刷った。加盟店はもちろん、市役所や商工会議所、近隣ホテルなどで配布

 同年には、商店街のさらなる活性化のため、繁盛店づくり支援事業を活用。6店舗が参加して研修を行い、個店の魅力づくりに取り組んだ。そして、この事業で出てきたアイデアが商店街の各店を紹介するガイドブックづくりだ。
「地元で長く続いていても、街の人にとっては入ったことのないお店もあります。組合員同士がお互いを知らなかったりする場合も。そこで、お店の人の顔が見えるような動画をつくり、その二次元コードを掲載したガイドブック製作の企画が生まれました」。
 
 ’22年にはアイデアを実行するべくトライアル実行支援事業を実施。「動画は素人にはハードルが高いのでは?」という声も上がっていたが、組合は商工会議所などの協力を得て動画制作についての勉強会を積極的に実施。乙村さんも自ら率先して自店の動画をつくり、店主らの不安を払拭し、そのノウハウを共有した。最終的には、全38店舗の紹介動画に加えて「靴に関する豆知識」、「おいしい中国茶の淹れ方」など13店舗がお役立ち動画も制作。専門店ならではの魅力をアピールした。

動画はスマホアプリを使って編集した乙村さん。その方法を加盟店にも共有し、多くの店主が自主制作した
理事長をキャラクター化

 さらに、「お店を知ってもらったら、今度は実際にお客様に来店してもらおう」と、ノリの良い店主たちの会話から生まれたのが、〝ウォーリーを探せ〞ならぬ、乙村さんをキャラクター化した〝オトちゃんを探せ〞スタンプラリー企画だ。動画内と実店舗に「オトちゃん」を忍ばせ、お客様に商店街を廻って探してもらう仕掛け。動画、店舗それぞれでオトちゃんを見つけたら応募でき、豪華景品がもらえるというキャンペーンだ。商店街の各店から集まった景品は85点にもおよび、1カ月の期間限定ながらも応募者は173名と盛り上がりを見せた。

「商店街の全店舗が一丸となって連携を図り、動画を駆使したガイドブックをつくることで、我々の絆は深まりました。その過程で、LINEなどのSNSを使って加盟店同士のコミュニケーションが活発になったことも大きな成果です」と乙村さんは話す。街の活性化に取り組んだことで、最近では商店街エリア以外の近隣の企業から、組合に参加したいと申し出もあったという。これまでは通りという〝線〞だった商店街が、街全体の〝面〞として一体感を得られるようになった。次の課題は、駅からの人の流れをどう掴むか、ということ。コロナ禍に出口が見えてきた今、新しい商店街のやる気は満ちあふれている。

\ガイドブック発行記念キャンペーン/店舗の魅力を伝えるスタンプラリー「オトちゃんを探せ!」


①二次元コードの動画から「オトちゃん」を探す

ガイドブックには動画に誘導するための二次元コードを掲載し、動画は店舗紹介動画の他に、化粧品店による「ハンドクリームの正しい塗り方」などのお役立ち情報動画も作成した。これらの動画のどこかにオトちゃんのイラストが隠されている。
「オトちゃんを探せ」の告知用チラシも製作。


②お店を巡って「オトちゃん」を探す

実店舗にもオトちゃんが隠されており、商店街を歩きながら探す楽しみがある。店頭看板で「このお店にいるかも?」とヒントを伝え入店しやすくする工夫も。連動して各店提供のキャンペーンも実施。たとえば「こめ倉珈琲」ではドリンクの割引サービスを行った

関連リンク

この支援事業について詳しくは  トライアル実行支援事業

★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2023 Spring(春号)に掲載されています。
「EGAO」をご覧になりたい方はこちらへ。

商店街活性化の情報誌「EGAO」

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