事業名 | 繁盛店づくり支援事業 |
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商店街名 | 舘山寺門前通り振興会/静岡県浜松市 |
浜名湖有数の古刹、舘山寺の門前町として発展した舘山寺門前通り振興会。豊富な観光資源を抱える街の魅力をもっと発信しようと、「繫盛店づくり支援事業(情報発信コース)」に取り組んだ。コロナ禍の収束を見据えて、より活気と魅力あふれる商店街にするために、店主たちの挑戦が続いている。
個店が魅力を高め情報発信することで、商店街全体の集客へつなげる
’20 年春、トータルプラン作成支援事業への取組みを機に、新たな一歩を踏み出した舘山寺門前通り振興会。’21年には、コロナ禍で拡大するマイクロツーリズム需要に対応しようと、繁盛店づくり支援事業(実践コース)を活用し、商品の魅せ方やサービス向上に邁進した。
’22年9月からは同事業の情報発信コースに進み、SNS活用を含め、より効果の高い発信手法を学んできた。さらに新たな名物として、舘山寺土産の開発をはじめ、浜松の他地域とは異なる魅力発信をめざしている。
舘山寺門前通り振興会会長の山崎暁史さんは、「’23年は大河ドラマ『どうする家康』の放送、’24年には浜名湖花博の開催が決まり、浜松には多くの観光客が見込まれます。舘山寺門前通りならではの魅力や特長を活かして街を盛り上げたいです」と意気込む。
講師が店舗に赴き直接アドバイスをする臨店研修には5店が参加。全4回の研修のなかで、SNSでの情報発信やディスプレイの改善などを行い着実な成果が表れた。講師の矢吹ちおりさんは、SNSによる情報発信は潜在客と既存客を意識することが重要と説く。
「潜在客は店舗にまだ来店したことのないお客様。お店の存在を知ってもらい、来店したい気持ちへ高揚させることが大切です。既存客に向けた発信は、店を忘れさせないための発信。違いを意識して発信内容を意図的に考えていくことが必要です」
さらに店頭のレイアウトを変えることが情報発信に欠かせないニーズの把握につながることも店主たちの大きな気付きに。「〝売れ筋(売れている)商品〞と〝売り筋(売りたい)商品〞を区別したレイアウトが有効です。〝売り筋商品〞を店内のいわゆる〝見せ場〞に配置するなど、戦略的にレイアウトを考えていくことで、顧客ニーズを的確に把握できる売場になります」(矢吹さん)
ニーズの高い商品を見つけやすく工夫すれば、予期せぬ商品との出会いを意図的に生み出すことができ〝ついで買い〞を促せる。売りたい商品を売れる商品にすることが可能になるのだ。
研修最終日となった12月8日には成果報告会が行われ、それぞれの取組みを振り返った。商店街の入口に位置する大村酒店では、舘山寺門前通りのアンテナショップ化をめざした売場づくりが進行中。これに合わせて、手打ちうどん権太の出汁醤油「かけまいか」など、新商品の開発が相次ぐ。
特筆すべきは、ペット同伴可能なうなぎ専門店舘山寺園で、おしゃれ工房ルーベラの犬用アクセサリーを展開するなど店同士のコラボレーションが進んでいる点だ。互いの強みを活かすことは、新たなビジネスチャンスにつながる。この研修で培った店同士の絆から、今後もさまざまなコラボレーションが期待できそうだ。
それぞれの店舗の課題も、解決に向けて前進している。浜寿しでは長年の懸案だった看板リニューアルと、店舗のイメージチェンジに向け、新たな客層を獲得する方法を学んだ。おしゃれ工房ルーベラでは、ネット環境を使ったワークショップやライブ配信による集客などのきっかけづくりができたことが大きな成果となった。
山崎会長は今後の舘山寺地域の展望をこう語る。「各店舗の発信力が高まれば必ず『舘山寺門前通り』としての魅力向上にもつながります。地域全体の活性化をめざして今後も連携を図っていきたいです」
門前通りの観光案内所的な役割をイメージしてレイアウト変更。休憩中に地元みやげが目に留まるよう陳列も工夫。手打ちうどん権太の「かけまいか」やクッキー、うなぎ店・志ぶきの「うなぎボーン」など各店舗の商品も紹介。外からの視線も意識してショーウィンドウには季節感を演出。新商品「もっきりこぼれ酒」は、海外にも訴求できるよう、Instagramでも積極発信
(大村酒店・大村裕之さん、朋子さん)
ペット連れ可能なうなぎ専門店であることをアピールし、Instagramでは来店したペットの投稿動画が好評。おしゃれ工房ルーベラとコラボして犬のネックレスやネームプレートなどのグッズも展開。自慢のうなぎは楽天市場にも出店しており、卓上POPの他、Instagramでも情報発信している。新たな舘山寺土産として「うなぎ屋の大学芋」を開発。研修では試食と意見交換も行った。
(舘山寺園・舘 理恵さん)
人気のオリジナル出汁醤油「かけまいか」をレシピでアピール。店内では、料理画像の掲示と手づくりの「かけまいかレシピ」を配布し、購入率が増加。定番に加えて春夏秋冬のメニューもプラス。Instagramでは、継続している動画投稿をいつでも見られるようハイライトにまとめて情報を探しやすく工夫。浜名湖産の海苔を使った「おかみの手作りクッキー」を舘山寺みやげとして新たに展開。
(手打ちうどん権太・小山和孝さん、みどりさん)
SNSと連動した集客を実践。Instagramは、オンラインショップのハイライトを作成し、閲覧者から商品購入も。周辺はペット同伴の観光需要が増加していることから犬用グッズを多数展開。舘山寺園とのコラボ企画も。YouTubeではワークショップの内容を公開。カラフルな天然石を使ってハンドメイドできる犬用のネックレスは長さ調節も可能だ。
(おしゃれ工房ルーベラ・袴田久美子さん)
舘山寺門前の唯一の寿司店であり、地元の魚が食べられる店を広く周知できるよう、看板やロゴのリニューアルを検討中。繁盛店づくり支援事業・実践コースで試作した「舘山寺ロール」を継続して提供し、舘山寺でしか食べられない名物として店内メニューやSNSでプッシュしていく。また、舘山寺は観光客が夜に飲める店が少ないため、「ちょい呑みセット」などの新メニューを開発し、認知度と集客率向上を図っている。舘山寺の御朱印帳も手掛ける絵師に依頼して寿司をキャラクター化。若い世代にも親しみやすい雰囲気をめざし、湯呑の絵柄やLINEスタンプも作成。(浜寿し・山崎博史さん、利沙さん)
この支援事業について詳しくは 繁盛店づくり支援事業
★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2023 Spring(春号)に掲載されています。
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