事業名 | 空き店舗総合支援パッケージ事業 |
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商店街名 | 祇園商店街協同組合(福岡県北九州市) |
北九州市門司区にある、祇園商店街協同組合(以下、プラザ祇園)。全体の半数以上が空き店舗となっている問題に立ち向かうべく、’22年の秋に挑んだのは、新規出店希望者に向けた〝貸し店舗ツアー〞と〝期間限定お試し出店〞。近隣の商店街や地域の連携を密にスタートしたこの取組みは、戦後から地域を支えてきた商店街に、新しい風を吹き込もうとしている。
写真右)お試し出店に挑戦した「いやしらぼ。」の近藤紀子さん(右)、中島多規子さん(中央)、池田ゆかりさん(左)。
写真左)「BLAMAGI」の森永美雪さんには地元テレビ局の密着取材も。
プラザ祇園は’23年で72周年を迎える。昭和49年(1974年)に新築した建物には、当時一日4千人が訪れたこともあったが、時代とともに客足が減少、テナント数も徐々に減り、空き店舗問題が色濃くなっていった。 組合が建物を所有して運営する「共同店舗」システムなので、
「年間約400万円もの税金を、組合員から集める賦課金で支払っています。そういう意味でもテナントは増やしていかなければなりません」と話すのは理事長・虎清宏一さんだ。現在、28区画のうち15区画が空いている。情報収集や北九州商工会議所へ相談をするなかで、’21年秋、全国商店街支援センターによる空き店舗総合支援パッケージ事業の活用を検討していたところ、すぐ近くの門司中央市場商業協同組合が同事業の貸し店舗ツアーを行うとの情報をキャッチ。虎清さんも同行させてもらうことにした。
「SNS発信が功を奏したようで、参加者は想像以上の数でした。さらに出店につなげるには、物件や環境の魅力をきちんと伝える工夫が大切であることも勉強になりました」
’22年6月、いよいよプラザ祇園での空き店舗総合支援パッケージ事業がスタート。貸し店舗ツアーでは、〝オプション〞として門司中央市場の貸し店舗も見学できるコラボ企画も実施した。まず準備として天井や窓などの破損を直し、広さや水回りといった設備の有無などの情報をまとめた。
「これはツアーの準備でもありますが、組合内での情報共有としても有意義なものになりました」と虎清さん。
店舗の準備が整ったら、次は集客だ。門司中央市場の成果に学び、SNSに力を入れる。投稿は事務職員の山本逸美さんが担当。戦略の考案や組合内の調整役は副理事長の橋村和弥さんが担った。発信のノウハウについては商工会議所の支援を受けた他、門司中央市場の理事長・秋吉 修さんにもサポートをしてもらった。組織間の連携は商工会議所が細やかにフォローした。
同会議所門司サービスセンターの村里 元さんは「普段から地域にいる存在として、チラシづくりなど細かい実務のサポートに努めてきました」、センター長・神﨑千尋さんは「これまでさまざまな支援をしてきたノウハウが、お役に立てばと思っています」と話す。
そうして迎えたツアー当日の10月1日。参加者は18名にのぼり、他の商店街や不動産会社の視察、マスコミ取材などもありちょっとした人だかりができた。「以前はイベント集客といえば市政だよりなどが定番でしたが、今回はSNSが想像以上に効果的でした」と虎清さんは手ごたえを感じている。
橋村さんは「InstagramよりもFacebookの方が反応する年齢層が高い、といった違いも体感できました」と、今後につながる学びを得た。ツアーの参加者から2組のお試し出店が決定。同事業の講師・東 朋治さんの指導を受けて準備を進め、12月の歳末商戦時期を前に期間限定ショップとしてプラザ祇園に仲間入りした 。
お試し出店者のBLAMAGI・森永美雪さんは「商店街のみなさんが見守ってくださっている安心感があり、ずっと前からいるように居心地がいい」と笑顔で話す。温かい雰囲気のなか、喜ばれる店舗づくりやSNS発信などに力注いだ結果、集客も売上も予想以上となった。
指導にあたってきた東さんは「商店街主導で空き店舗対策に取り組む意義は非常に大きいと思います。新たな出店者が生まれることで組合活動が維持でき、来店者が増え、結果として既存の各店舗の売上も向上します。すぐに成果が出なくても、手を止めてはいけない」と話す。
「コツコツと継続することが大事です。今後もコラボレーションなど新しいことに取り組んでいきます」と虎清さんが言うように、商店街の未来へのチャレンジは続いていく。
プラザ祇園のツアーと同日に門司中央市場の貸し店舗も見学できるコラボレーション企画を実施(写真左)。
「プラザ祇園の方と話す機会も増え、有意義でした。今後も合同で何かやりたい」と門司中央市場商業協同組合の理事長を務める秋吉 修さん(写真右)。
門司中央市場は、プラザ祇園の隣に位置し、現在26店舗が加盟している。
貸店舗ツアーに参加した「いやしらぼ。」「BLAMAGI」の2組が、約1か月のお試し出店にチャレンジ!
店づくりや集客に励み、売り上げは予想以上になった。商店街の魅力に触れ、継続出店の検討も。
「商店街の先輩たちのやさしさが心に響きました」
マッサージの施術、手づくり雑貨の販売やワークショップなどを行う。イベントや自宅サロンで活動してきた女性3人組が、東さんや組合の面々から「気軽にやってみて!」と背中を押されてオープンした。
「他の店舗の方々が様子を見に来てくれたり、お客様を連れてきてくれたり。温かい心遣いに感動し、この商店街が好きになりました」。現在、商店街での開業に向け動き出している 。
「予想以上の売上に創業の成功を確信しました」
ハンドメイド雑貨が大好きな森永さんが「人が集まる楽しい場所をつくりたい」と開いたショップ。知人のつながりやスカウトで集めた計20名の作家による作品が並ぶ。Instagramでの発信に注力しており、写真を掲載した商品が予約で売り切れることもある。
「集客や店づくりなどの試行錯誤が勉強になっています。考えるのが楽しくて、眠れないほどワクワクが止まりません!」豊富な商品ラインナップと手頃な価格が好評で、売上は予想以上に好調。次の展開への期待も膨らんでいる。
この支援事業について詳しくは 空き店舗総合支援パッケージ事業
★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2023 Spring(春号)に掲載されています。
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