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活性化事例

女性の活躍と加盟店の急増。秘訣は、コミュニケーションにあり

地域振興

人材育成・組織力強化

コミュニティ

商店街名 セブン商店会/京都府長岡京市

一時は加盟店が29店舗まで激減し、空き店舗対策どころか解散寸前にまで追い込まれた京都府長岡京市のセブン商店会。しかし、そこから大逆転が起こる。たった数年で加盟店は3倍近くの79軒になり、女性の新規創業も増え続けている。この商店会が取り組んできたのは、店主や地域との「絆づくり」というベーシックなことだった。

会長・副会長も女性!絆が広がる商店会で女性たちが活躍中

崖っぷちだった商店会が絆の連鎖で再び元気に!
古くから続く店がある一方、新店も増えているセブン通り

 阪急電鉄の長岡天神駅からほど近い場所にあるセブン商店会。7の形をしたセブン通りを中心に、79の加盟店が点在する。この商店会で近年、特に目立つのが女性の新規創業だ。
 たとえば’18年には、子育て中のママである春山美穂さんがパンと焼き菓子の店をオープン。その翌年には、森本佐百合さんが姉妹でシフォンケーキ&ハンドメイド雑貨の店を開き、’21年には日髙克子さんが自家焙煎コーヒー店を開業した。

 この3人、実はいずれも週2〜3日しか店を開けていない。それでも、商店会から熱心に誘われて加盟したという。彼女たちは「営業日が少なくても受け入れてもらえてうれしい」、「ウェルカムな雰囲気で居心地がいい商店会」と口をそろえる。

 今では女性創業者が増え、華やかに活気づくセブン商店会だが、’16年時点では加盟店が29店舗しかなく、解散を視野に入れるほどだった。そこから復活するきっかけをつくったのは、’16年4月に会長に就任した、前会長の林定信さんだ。

前会長の林さん(左)と現会長の三井さん(右)。ママでもある三井さんは「今後は子どもひとりで買い物に来られるような『思いやり商店会』をめざしたい」と意気込む

 セブン通りは一歩横道に入ると暗く、夜道を歩くには不安だったため、林さんはまず、「安心して歩ける商店会にしたい」と防犯カメラの設置を検討。店舗を一軒一軒訪ね、「安全な商店会にするために加入してほしい。会費の一部は防犯カメラの資金にするから」と丁寧に説得した。すると、加入を快諾する店主が続出。昭和から続く「小野デンキ」の店主もそのひとりで、当時は商店会を退会していたが、「林さんの熱意に共感して再加入した」と話す。

林さんが作成した商店会への勧誘チラシ。「どんな商店会になりたいか」や「商店会として地域課題にどう取り組むか」などが記されている

 林さんはまた、同年8月から意見交換会「未来予想図委員会」をスタートさせる。「地域のニーズを拾い上げたい」と考え、誰でも参加できる会にしたところ、近隣住民や行政関係者を含む30〜40名が集まった。以降、月1回開催し、「どんな商店会にしたいか」という話し合いを継続。保育園が多い地域でもあることから、子育て世代からハロウィンイベントやマルシェ開催などの案が挙がり、理事会の承認を得て実行することになった。

 こうしたイベントを契機に、商店会に親子連れの姿が増え、保育園もこぞって商店会に加入。さらに、「楽しそうな街」というイメージが広まったのか、近隣の市からも移住してくる子育て世代が増加。コミュニティ全体が活性化するという好循環が生まれた。

 そんな順風満帆な状況下でも、林さんは地道な「絆づくり」を続けた。新店ができると知れば、飛んで行って加盟を勧める。「何度来ても加入しないよ」という店主のもとにも定期的に足を運ぶ。加盟せずとも、互いを知り、絆を深めることで、「お金ではなく『人の力』で盛り上げられる」と考えた。

 やがて、その絆のなかから商店会の運営に興味を持つ女性たちが現れた。フルート教室を営む三井奈美さん、サイクルショップの佐竹田映巳子さん、先述のパン屋の春山さんの3人だ。彼女たちは「広報3人娘」として商店会のPRに自発的に貢献。SNSやYouTubeなどを駆使して、低予算で商店会の魅力を広めていった。その後、三井さんは商店会の会長に立候補し、’22年4月から就任。また、佐竹田さんは副会長として活躍している。

 世代交代後も「絆づくり」を大切にする姿勢は変わらない。外部の企業や団体との連携も増え、絆は広がり続けている。

\ 新規出店者の声 / 気がつけば仲間になっていました!

パン+焼き菓子のお店 harru

自宅併設の小さな店なのに商店会の仲間になれてうれしい!

「自宅の窓を改装し、スタンド式のパン屋として営業しています。小さな店なので『商店会には入れないだろうな』と思っていましたが、オープン数日前に前会長の林さんが来てくださり、加入を勧めてくれました。商店会のイベントなども楽しんでます」
( 春山美穂さん )

oinai coffee

商店会の一員として気にかけてもらえて心強い!

「’21年に自家焙煎コーヒーの店を開き、林会長(当時)の紹介で商店会に入りました。今は別の仕事もあり、週2〜3日しか営業していませんが、仲間に入れてもらえて感謝しています。理事の方が情報をくれるなど、気にかけてもらえて心強いです」
(日髙克子さん)

「&filica」

商店会に加入してからは孤立感を感じなくなった!

「母から店舗を受け継ぎ、姉妹でシフォンケーキと雑貨の店をやっています。週3日の営業なので、商店会に入るつもりはなかったのですが、佐竹田さん(現副会長)の勧めで加入。うちはメイン通りから離れた場所ですが、孤立感を感じなくなりました」
(森本佐百合さん)

★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2023 Spring(春号)に掲載されています。
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商店街活性化の情報誌「EGAO」

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