商店街名 | 中島商店会コンソーシアム/北海道室蘭市 |
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’18年9月、北海道胆振東部地震により3日間におよんだブラックアウト(全域停電)の影響で、店舗の休業など大きな被害を受けた室蘭市の中島商店会コンソーシアム。その経験から始まった、商店街ならではのユニークな防災活動を紹介する。
火を囲めば自然と話も弾む、つながりを生む焚き火の力。幅広い世代が集まり、最大で約700人、現在は毎回約300人が参加。
時には市長も火を囲む。商店街への誘客にもつながっている
金曜日の日暮れ時。室蘭市中島地区にある通称「お元気広場」では、地元の大学生や親子、商店街の店主たちが焚き火を囲んで焼き芋をつくり、たわいもない話で盛り上がる。キッチンカーやテントも並び、道行く人も自然と立ち寄る場所となっている。「URBAN TAKIBI」というこのイベントは、店主たちがサポートする市民団体「ウォーカブル・イン・ナカジマ」の活動で、大人も子どもも楽しみながら、火おこしや空き缶で米を炊く技術が身につき、〝災害への備え〞の側面ももつ。
「ブラックアウトを経験し、いざという時に商店街は何ができるかを考えたことが始まりでした」と話すのは、中島商店会コンソーシアム副幹事長の斉藤弘子さん。現在、室蘭市防災対策課や防災の専門家・北星学園大学の鈴木克典教授の力も借りながら、災害時の行動指針「商店街のBCP(事業継続計画)」の策定を進めている。
「策定にあたり大切にしたのは〝防災を楽しむ〞ことなんです」と斉藤さんは続ける。
まずは、地域にかかわる多くの人がつながり、自由な意見交換ができる場づくりを提案。グループワークを専門とする法政大学大学院の石山恒貴ゼミからオンラインで手法を学び、’20年4月、「防災ワールドカフェ」を開始した。そこには商店街の他、地元消防団や小学校の先生、町会、女性連絡協議会、市職員など多様な人が集い、気どらない会話の中で、共助の大切さを共有していったという。
この勉強会に参加していたのが「ナニナニ製菓」の店主・庭山貴行さんだ。’20年6月に前述の市民団体を立ち上げたメンバーで、多彩なイベントを実現した。庭山さんは「地域の誰もが参加できる焚き火は、楽しく防災を学ぶのに最適です」と話す。
現在、「URBAN TAKIBI」の運営を担うのは主に室蘭工業大学の学生たち。今ではその若い世代のネットワークから、「室蘭で飲食店を始めたい」という人も現れ、「URBAN TAKIBI」は次世代を担う商売の芽も育むという一面も。
’22年7月には集大成となるイベント「ナカジマ防災もしも?WEEK」を開催。石山ゼミ一行も室蘭を訪れ、総括となる防災ワールドカフェをリアル開催。「URBAN TAKIBI」も多くの来場者でにぎわった。
北星学園大学の鈴木さんは、「平時の商店街のイベントで、〝無理なく防災も学んでいる〞というスタンスがいい。BCPにこれらの活動を含める案も出ています」と話す。
BCPは’23年2月に完成予定だ。培ってきたつながりを活かしながら、活動はさらに広がっていくだろう。
★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2022 Autumn(秋号)に掲載されています。
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