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活性化事例

市場の未来のために!防災のまちづくりにチャレンジ

商店街名 灘中央市場協同組合/兵庫県神戸市

’17年10月、兵庫県明石市の大蔵市場が火災で焼失した。それを教訓に、神戸市の働きかけで灘中央市場に「防災空地(ぼうさいくうち)」が設けられた。火災時に延焼を食い止める空地を活用しながら、災害に強くにぎわいある市場をめざし、取組みが進められている。

もしもの事態に備え真剣に訓練を行う店主たち

「防災空地」が拓く市場再生への道

 灘中央市場協同組合は、8商店街3市場から成る水道筋商店街の中央部に位置し、大正14年(1925年)から灘の人々の台所として親しまれてきた市場だ。現在は、建物の老朽化と店主の高齢化が進み、店舗数は最盛期の80店舗から30店舗ほどへと減少している。

 そんな市場が’18年、市の働きかけに呼応し、廃業して倒壊の恐れがある店舗を取り壊し防災用の空地「防災空地」として活用する取組みを始めた。’19年3月には、しましま・だんだん・かくかくという親しみやすい名前がついた3つの防災空地がオープンし(’22年11月現在計5カ所)、平時にはコンサートなども催されるコミュニティスペースとして機能している。

上)理事長の武長一仁さん(右)と、そのブレーンのまちづくりコンサルタント・角野史和さん。 下)近隣商店街のメンバーの協力もあり、マスコット「汗かきえびす君」が駆けつけた。水道筋全体が市場の取組みを応援

 実はこの市場には、いっそのことエリア全体を潰してマンションにしてはどうかという話も持ち掛けられていた。しかし店主たちは話し合いの末、今の市場を存続させることに決め、’21 年、「災害に強く、楽しみとにぎわいのある市場づくり」を今後の指針として掲げた。既存の建物を徐々に改修しながら、自主防災やにぎわいづくりの取組みを行い、市場を未来へとつなげていくという宣言だ。以来、〝できることから一歩ずつ〞をモットーに、防災空地を引き続き活用しながら毎月7〜8回もの小規模イベントを実施してにぎわいづくりに努めてきた。

地域住民に配布したイベントのチラシ

 そんななか、’22年4月に飛び込んできたのが、旦過市場火災のニュースである。灘中央市場協同組合理事長の武長一仁さんは、「明日は我が身。今すぐに自分たちのできる最大限の手を打たなければ」と、店主と地域住民がともに防災について学ぶイベントを企画した。

 ’22年8月に実施された「夏の防災訓練まつり」では、市場の(自衛)消防団がこれからを担う若手メンバーへと継承され、店主たちは消防士とともに消火器や消火ホースの使い方、消火栓の位置などの確認を入念に行った。また、地域住民にとってもこのイベントは、初期消火の方法やAEDの使い方など実践的な知識にふれる貴重な機会となった。

「こうした取組みを地域住民と続けていくことが、安全でにぎわいある市場の未来につながると信じています」。武長さんは静かに語った。


灘中央市場の防災空地と夏の防災訓練まつり

 それまで店主だけで行っていた防災訓練を、地域住民も参加できるイベントとして’22年8月に初開催した「夏の防災訓練まつり」。灘消防署の指導のもと、前半は店主の意識を高める消火や避難訓練、後半は住民が親子で楽しめるスタンプラリーや防災絵本の読み聞かせなども含んだ内容にした。防災空地を有効活用して実施したこの防災イベントは、地域が一丸となって防災の重要性を再確認する機会となった。

火災を想定した避難訓練
大切な命を守るAED体験
消火栓を使った消火訓練
訓練用消火器で的あて体験
消防士の話を真剣に聞く
市場の防災を学ぶスタンプラリー
防災絵本の読み聞かせ
子どもプールで涼しいひととき
防災空地も活用した市場づくり!住民と楽しく耕す「いちばたけ」

「いちばたけ」=「市場×畑」という名前の通り、市場内の空き区画を活用し、地域住民と一緒に畑として運用するこの取組みは、まちづくりの活動に携わる坂本友里恵さん(写真右下)と市役所職員の計3人を発起人に、’19年5月にスタートした。のちに隣接する防災空地も加わり、面積が倍増。取組みを支えるメンバーも増え、現在は中心人物は5人となり、活動の幅も広がっている。できた野菜を使ったイベントを店主たちと実施したり、市場の楽しみ方について情報交換したり、「いちばたけ」は、地域住民が市場へ足を運ぶ機会を創出している。

★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2022 Spring(春号)に掲載されています。
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商店街活性化の情報誌「EGAO」

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