事業名 | 繁盛店づくり支援事業 |
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商店街名 | 豊春駅西口商店会/埼玉県春日部市 |
講師が実際の店舗を訪問して改善アドバイスを行い(臨店研修)、その学びを店主同士で共有し商店街の活力にしていく繁盛店づくり支援事業。’22年春からこの事業に取り組んだのが埼玉県春日部市の豊春駅西口商店会だ。参加の4店舗は異業種ながら他店の臨店研修にも積極的に立ち会い、互いに刺激し合うことで確実な成果を生んだ。
「昔は商店会って半永久的に続くものだと思っていたんです。それが、近年は新しい店ができても加盟してくれなかったり、イベントも不参加だったり。商店会としてかつての活気を取り戻さなければいけないと思いました」
そう話すのは、豊春駅西口商店会会長で、「手焼せんべい うちだ」の店主でもある内田孝信さん。同じく商店会の未来に危機感を抱く、副会長で電器店「エルメックダイワ」店主の町島雄一郎さんと一緒に、この事業への参加を決めた。そのきっかけのひとつが、春日部市商工振興課を通じて同じ市内の春日部駅東口商店会連合会が同事業に取り組む様子を知ったことだ。「みんなで団結して学びあっている姿がいいなと思って。私たちもその雰囲気をつくりたいと、他店の臨店研修にも参加するかたちにしました」と町島さん。
豊春駅西口商店会は、駅の西口周辺に加盟店が点在しており、物理的にも少し距離がある。さらに業種も店主の世代もバラバラで、団結しづらいという実情がある。しかし、研修では、どの店舗も自店の改善に意欲的に取り組むのに加えて、業種の異なる4店が、他店の研修も真剣に聞いてメモを取る姿が見られた。
「自分の店は客観的に見るのが難しいですが、他店だとお客様目線で見られるし、自分の店にも応用できるのですごく参考になります。何より他店が頑張っているのを見るのは、大変刺激にもなりますね」と町島さん。
4店共通の課題は「入りやすい店舗づくり」。取材当日の臨店研修では、「一番に売りたいもの」をテーマに、それぞれの店舗が、主力商品や売りとなるサービスをわかりやすく、魅せる方法を学んだ。講師の並山武司さんのアドバイスを受けて、見る見る表情を変えていく店も。メッセージカードを手書きしたり、プチギフトを用意したりと、改善の実作業を担った内田さんの妻・恵子さんは、「今まで夫をたてて余計なことはしないようにしていたんですが、すぐできる改善を試しにやり始めたらおもしろくなって。お客様も気づいてくれるとうれしくて」と笑う。
臨店研修の終了後は、参加者全員で全体研修が行われた。「商品の重点化販売」についての講義とともに、各店の改善ポイントを振り返り、さらに全員で意見交換。ここでも異業種同士ならではの新鮮な視点が、お互いの改善意欲を高めあった。
今後の課題は、この取組みをどう他の店舗や商店街全体に波及させていくか。「各店のビフォーアフターを見てもらう機会をつくり、商店会や研修に参加することのメリットを伝えてはどうか」「他店も参加できるように、店同士のコラボレーションをしてはどうか」といったアイデアが上がった。
研修を受けた店が得た結束力やモチベーションを、商店会全体にどう広げていくのか、次なる進化が楽しみだ。
商店会内での家族ぐるみの付き合いがさらに増えました
自覚しにくかった店の売りを明確にし、ひと目でわかりやすい見せ方を工夫していった。かつて東京で創業し、父の代から75年変わらない味を表現した「江戸風味」をコンセプトに、主力商品の値札にPOPを追加し、目立つよう色紙などを用いて背景を着色。また、贈答用の化粧箱だけでなく、気軽に買える袋売りのプチギフトをレジ横に追加した。「2km以内配達無料」、「メッセージカードございます」といったサービスもわかりやすく表示した
毎回、発見がいっぱい!店主同士が付き合うきっかけにも
酒やタバコだけでなく、食料品、日用品、衣料品など多様なものが置いてある店内をわかりやすく整理。ビールや酒のポスターを貼り、「駄菓子」、「アイスクリーム」などのPOPを追加した。また、1971年から続く歴史ある酒店としての魅力を伝えるため、昔の店舗の写真を掲示。一方で「減塩」、「メタボ対策」などの健康情報で現代感も表現
他店の臨店研修に同行して目からウロコの発見がありました
家電量販店にはない、“街の電気屋さん”としての魅力を伝える工夫を実践。サービス一覧を店外にわかりやすく掲示し、実際に試せる商品に「体験できます」の表示、修理が得意な店をアピールする「修理工房」の表示を追加。携帯用ライトや充電器などには日頃の備えにしてもらえるよう、商品の特徴を表すPOPを手書きで目立たせた。また、法人向けサービスのチラシも作成してレジ横に置き、今後は地元企業に配布予定
ちょっとしたひと工夫で売れ行きの変化を実感!
季節の限定商品や店イチオシの商品などを、ビジュアルでわかりやすくすることに注力。原材料の卵やチョコレートへのこだわりなどをPOPで伝わるように表示した。また、売上の落ち込みがちな夏の定番商品として、爽やかなレモンのお菓子をアピール。店の入口に赤いテディベアを置いてパネルを掲示し、商品の棚にもレモン柄の紙を敷いたり、レモンのポストカードを置いたり、ひと工夫が効果を発揮した
本研修では、各店を巡る臨店研修はもちろん、全体研修もリモートシステムで中継された。
ホワイトボードカメラの他、チャット機能も活用し、運営スタッフが円滑な進行をサポート。
双方向のコミュニケーションも可能にし、参加者の満足度を高める工夫も。
★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2022 Autumn(秋号)に掲載されています。
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