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最前線!商店街のデジタル技術活用術

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商店街名 目黒区商店街連合会/東京都目黒区、協同組合 西奉還町商店会/岡山県岡山市、しまね縁結び商店街/島根県松江市・出雲市

「ブロックチェーン」「NFTアート」「メタバース」の3つの最新事例を一挙にご紹介。さらに、商店街がDXに取り組む際のポイントをデジタルの専門家に聞いた。

ブロックチェーン技術を活かしてデジタル商品券を発行! 【目黒区商店街連合会/東京都目黒区 】
手間がかからず安全に運用できる

 ’21年11月、洗足商店街エリアで「第11回のんびりイベント散歩」が開催され、完歩賞に600円分のデジタル共通商品券が配られた。この発行には、複製や改ざんが難しい「ブロックチェーン技術」が用いられ、安全に運用することができた。印刷の必要もないことから低コストで実現した。
 10年を超えるこのイベントにはファンも多い。コロナ禍で2年ぶりの開催となった当日は、晴天のもと、多くの人が笑顔で商店街を歩いた。完歩賞を手にした参加者のほぼ100%がデジタル商品券を利用。その集計も素早く正確にできることもメリットのひとつだ。今後さらなる取組みも計画している。’22年9月より区内全域で使える「めぐろ生活応援券」のデジタル化も実施。今後さらなるDXへと挑む。

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イベントは申し込みからすべてデジタル仕様。密を避けるため複数のスタート時刻が設けられたが、デジタルを活用したことで参加者をスムーズに振り分けられた。地元の学生や事業者らがボランティアで協力。

NFTアートとAR技術を使って商店街のアーケードが最新式美術館に 【協同組合 西奉還町商店会/岡山県岡山市
仮想空間に県境や国境も超えたアートをデジタル展示

 加工や複製ができないデジタルの芸術作品が、世界中で取引され、なかには1億円を超える作品もあるという。それがNFTアートだ。そんな話題のアートが岡山市の西奉還町商店会で展示されている。
 「Neo西奉還町商店街メタバース化計画」と名付けられ、’22年7月2日から始まったこの展覧会は、AR技術を使って約150mのアーケードに120~150点の作品を展示。人気のNFTコレクションCryptoNinja Partnersをはじめ、国内外から54名の芸術家が集結した。
 事務局の北島琢也さんは、「交流会も開催して今後デジタルのコミュニティにしていきたい。商店街からもNFTアートの作品を出し、それを持っている方にサービスをするなど、さまざま企画中」と語った。

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人気のNFTコレクションCryptoNinja Partnersの作品。この展示で、西奉還町商店会の取組みは、一躍アート業界に知れ渡ることに。アーケードの柱に貼られたQRコードをスマホの専用アプリ「STYLY Mobile」で読み込むと作品が表示される。アーティストには7歳の小学生もいれば、韓国の芸術家も。3D、イラスト、グラフィックアートやキャラクターや動画、音楽、アニメーションなど、ジャンルも幅広い。取組み開始時は、店主の8割がNFTアートを知らなかったが、今は認知されてきた。取組みを継続し、メタバース商店街への進化をめざしている。

地域の魅力を広く発信するためメタバース空間に商店街をつくる  【しまね縁結び商店街/島根県松江市、出雲市】
デジタル空間へ集結し、リアルでの展開も

 ’22年5月20日、島根の魅力を伝えるメタバース商店街「しまね縁結び商店街」が期間限定で誕生。米や海産物などの特産品や、出雲そばや和菓子などのグルメが仮想空間に集まった。アバターで一店舗ずつ巡れて交流もできるため、その空間でセミナーや商談会も開催。さらに新宿駅と博多駅を会場に、体験会と物産会も開催。実社会での交流や発信も実現した。
 今回の成果を踏まえ、チームワークをさらに強化し、島根の魅力を発信する次の一手を計画している。

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店舗ごとに得意とする商品をPR。扉をくぐると壁面に備えたモニターで自動的に動画が流れる店舗も。コロナ禍にあっても国内外に魅力を発信できる。食品販売の他、造園や建築の事業者、大学や観光協会も参加。開催日を決めて仮想空間内でトークイベントやセミナーも開催した。新宿駅で開催したメタバース体験会&物産会では、会期の5日間で約3,000点の商品を販売した。


【column】商店街のDXで大切なこと 身近なデジタルにふれて、商いをバージョンアップさせよう

商店街が実際にDX取り組む場合、何から始め、どこに着目すればいいのか、デジタルの専門家に聞いた。

村上琢太さん
・PROFILE・
ITやガジェットを中心としたWEBメディア「ThunderVolt」編集長。
デジタル情報誌の編集長を12年にわたって務め、
アメリカApple社の本国での発表会に招待される数少ない日本人プレスのひとり

 DXに挑戦しようという人たちが、最初に陥りがちなのが、「何のためのデジタルなのか」を見誤るということ。DXはデジタル化することが目的ではありません。デジタルを前提に仕事全体を見直すことです。もしデジタル化されなくても、「日々の仕事がスムーズにできるようになった」「お客様に商品やお店、商店街の良さが伝わるようになった」となればいいのです。

 ところで私はまち歩きが好きで、「大江戸今昔めぐり」という古地図を今の地図に重ねられるアプリを使いながらよく東京の街を歩くのですが、たとえば銀座あたりにいると、かつては皇居の横まで海で、砂洲として通り道だった場所に銀座が発展したんだな、とか想像するとすごく楽しいんです。全国の商店街の多くは、人や物が交わるハブになる場所で誕生していて、つまりそれは、元々商店街は多様な要素から成り立っているおもしろい場所だということ。「歴史」という切り口のほかにも、「鉄道」や「川の流れ」、「アニメの聖地」などさまざまな視点から見ることができます。それをいろいろなレイヤーが重なっているととらえる「メタ観光」という言葉もあります。多種多様な“好き”が消費につながる今の時代、自分たちの街の成り立ちを知ってデジタル発信すれば、それはひとつの戦略となります。

「DXに取り組む」と聞くと、とてつもない予算をかけて最新技術を取り入れなければと思っている人も多いのでは。しかし実際はそんなことありません。今は無料のソフトも多いので、まずはそれを自分で使うところから。たとえば会社や商店街の情報共有をDXするならメッセージアプリ「Slack」。人を巻き込みコミュニティをつくるのが大切で、その役割を助けてくれます。何より日常の気づきやお客様のことを雑談できるのがいい。新たな課題の発見やビジネスチャンスにもつながります。

 ビデオ会議アプリの「Zoom」やオンラインエディタ「Googleドキュメント」も情報共有に有効です。飲食店は、「Google マップ」などののコメント欄をこまめにチェックし返答することも大切。万一悪いコメントがついても放置せず丁寧に返答してあれば、お店の信頼度は増しますよ。商店街の組合員で互いの店をきちんと評価しあうのもいいですね。YouTube やTikTok といった動画アプリに、個店ならではのちょっとしたアイデアや商店街のできごとを上げ続けるのも効果的。また、どういうかたちであれ、キャッシュレスの取組みは必要です。

 今、当たり前に使われているデジタルツールは、難しくないし、お金もかかるとは限りません。まず一歩を。

★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2022 Autumn(秋号)に掲載されています。
「EGAO」をご覧になりたい方はこちらへ。

商店街活性化の情報誌「EGAO」

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