商店街名 | 戸越銀座商店街連合会/東京都品川区 |
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近年都市型観光スポットとして多くの人々が訪れる戸越銀座商店街が、さらなる活性化への布石としてDX事業に着手したのは、’19年のこと。電子回覧板とAIによる人流データの活用で、コロナ禍でも、商店街は着実に組織力を向上させている。
多くの人が訪れる戸越銀座商店街。人流はAIで分析されて電子回覧板で組合員に送られ、個々の商売で活用される。コロナの脅威がシビアだったとき、商店街はデータから“密カレンダー”を作成してデジタルサイネージで表示。地域住民に向けて注意喚起を行った
地元密着型の3つの商店街組織(戸越銀座商栄会商店街振興組合、戸越銀座商店街振興組合、戸越銀座銀六商店街振興組合)が24年前に連合会を結成し、協力し合って独自のグルメブランドの開発や情報提供サービスの整備などを進めてきた戸越銀座商店街。’19年には、組織全体のより円滑な運営をめざし、地元のIT企業の協力と品川区の助成金を得て、電子回覧板とAIを活用した人流測定のプロジェクトをスタートさせた。
電子回覧板はアプリで組合員へ瞬時に情報発信。「確認」や「賛成」、「反対」といった返信がスマホで簡単にでき、紙媒体の〝お知らせ〞を作成・配布していた頃に比べ、合意形成のプロセスが大幅に効率化された。
「これまで組合員300軒にお知らせの紙を配るだけでも大ごとでした。電子回覧板の利用者は今のところ150軒ほどですが、負担は確実に減り、意思疎通のスピードも格段にアップして、商店街の一つひとつの取組みがやりやすくなりました」と、戸越銀座商店街連合会専務理事の亀井哲郎さんは話す。
人流測定は、2台のAIカメラで実施。カメラの前を通行した総人数が集計・分析され、時間別などに分類されて、週に一度、電子回覧板で組合員に配信される。商売への活用が想定されていたこのAIのデータは、コロナ対策でも大いに役立つことに。データをもとに〝密カレンダー〞が作成され、商店街の混雑状況は可視化。それを来街者に伝え、密を回避するよう訴えることができたのだ。
もちろんデータは、本来の目的である、既存店や新規出店希望者のマーケット分析の資料としても使われている。
「データ収集と情報発信は、私たち商店街が組合員と地域住民に提供できる、有用なサービス。やりようによっては、商店街組織がその価値、存在を高めるためのツールにもなり得る」と、亀井さんは考えている。
★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2022 Autumn(秋号)に掲載されています。
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