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地域電子マネー を自ら運営し、「人・お金・商い」の循環を促進!

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商店街名 松山中央商店街連合会/愛媛県松山市

四国最大の都市、愛媛県松山市の中心部に位置する松山中央商店街連合会(以下、松山中央商店街)。この地で’18年に誕生した地域電子マネーのインフラ「まちペイ」に今、熱い視線が注がれている。キャッシュレス決済機能だけに止まらず、地域経済の流動性を向上させ、次世代のプラットフォームとして進化する、その姿に迫る。

市内約2,000カ所でスマホアプリやICカードを使って簡単に決済(左)3年ぶりに開催された「松山中央商店街土曜夜市2022」
AIカメラで通行量を予測(右上)QRコードを使って回遊を促進する「松山城下町ミュージアム」で楽しくまち歩き(右下)

※QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です。

イベントを企画する時こそ活用したいデジタルデータ
理事長・加戸慎太郎さんは27歳でUターンし、家業の衣料品店を継承。多様な商店街活動にも取り組む

 江戸時代初期から城下町として発展してきた愛媛県松山市。松山中央商店街は、松山城を囲むようにL字に連なる「大街道」、「銀天街」、「まつちかタウン」から成り、昔も今も往来の絶えない街。しかし、高齢化や人口減少の影響で、人やモノ、商いの循環は鈍化していた。

 そんな状況を打破すべく、’13年に商店街がまず着手したのがデータに基づくイベントの実施だ。主な通りの通行量を調査した結果、中学生の来街の減少が判明し、対策として「子どもの頃から商店街に親しめるイベントをやろう」とファミリー層向けのイベントを次々と開催。その結果、子どもを中心に来街者が大幅に増加するという成果を生んだ。

 データにいち早く着目し、松山中央商店街でのイベントを企画した銀天街の理事長・加戸慎太郎さんは、「数値から地域のニーズを客観的に把握できます。また、僕自身、’09年にUターンした若輩で、新たな挑戦には諸先輩方を説得しなければなりませんでした。データを示すことで納得感が得られ、よりスムーズにみんなが同じ目標をめざせました」と話す。

 データの活用はその後も続く。たとえば20時~深夜まで一定の人通りのある大街道では、潜在顧客を30代以上のビジネスパーソン層と分析。夜間限定の特設バルイベントを開催し、成功。開催曜日の比重を平日に置いたのもデータ活用によるものだ。

地域でモノやお金が動くプラットフォームづくり
暮らしに密着した3つの機能!
地域電子マネー ・マチカマネー」レジでアプリやカードをかざしたり、QRコード決済で使える地域電子マネー 、 「 地域共通ポイント ・マチピ」 買い物やイベント、健康ポイント機の指紋認証やボランティアで獲得できる 、「 商店街お買物券 ・マチケット」 従来のお買物券をアプリやカードに登録して使うこともできる

 ’17年に松山中央商店街の共通販促品として「商店街お買物券」を発行。これが地域電子マネーへと舵を切る嚆矢となった。約50万という人口を抱えているにもかかわらず、経済の循環が縮小していく状況を、「流動性を上げることで改善できるのでは」と考えたのだ。
 当時、大手事業者によるキャッシュレス決済導入はすでに個々の店舗で始まっていたが、「商店街として面的に取り組むことでより大きな一体感と効果が生まれる」と確信した加戸さん。地域のためのツールを地域自身がつくって運営することを提案した。地域自ら運営すればデータ計測や検証を迅速かつ最大限に地元に還元することができる。変化のスピードが速い今の時代にそれは不可欠なのだ。

 そうして、’18年、キャッシュレス決済を手段として、世代を超えて地域の誰もが使える独自のインフラ「まちペイ」が誕生した。松山中央商店街に属する商店街や地元企業、自治体などが株主のまちづくり会社「まちづくり松山」がインフラの維持を担当( ※ )。「まちペイ」は地域電子マネーの「マチカマネー」、買い物やイベントで付与できるポイント「マチピ」、お買物券「マチケット」の3つの機能を備え、スマホアプリやICカードで簡単に利用開始できる。電子マネーでの支払いなら100円で1Pがたまり、ポイントは全加盟店で利用可能だ。加盟店は、地元のサービスということから導入、運用面で細やかなサポートが受けられる。

 松山中央商店街から始まった「まちペイ」は’19年に道後温泉やJR松山駅の周辺にも拡大。QRコード決済導入で参加店は市内約1200店舗に急増した。
 ’20年の新型コロナ対策での松山市の飲食店支援事業「食べにいこうや!キャンペーン」にも採用され、一元管理できるアプリの活用は、紙のチケットの印刷コストの削減やタイムリーな情報発信にひと役買った。さらにアプリ登録やキャッシュレスでのポイント還元キャンペーンも功を奏し、現在、サービス利用者は若者から高齢者までのべ8万人を超えるという。

 この春からは、新規起業者向けの空き店舗マッチング機能や商店街のイベントの発信や検索、チャットを用いた利用者とのコミュニケーション機能などを提供開始。利用する楽しさを届けながら、地域の需要と供給を結び、人とお金、商いの流動性をますます高めていきそうだ。

※ 具体的には、まちづくり松山がつくった株式会社まちペイが運営管理を行っている。


利用者にも加盟事業者にもメリット多数!
店舗やチャージ機などでチャージフリーペーパーも発行。ガラポン抽選もデジタル対応に!抽選券配布の手間がかからず非接触で密を避けられる

加盟事業者

・地元運営なので、導入から細やかなサポートで安心
・松山独自の共通ポイントで地域一体での顧客囲い込み、新規顧客獲得が期待できる
・紙クーポンや抽選券の配布の手間が減り、集計・精算処理が正確・効率化

利用者

・電子マネー決済なら100円=1Pがたまり、加盟店で利用OK(市内約2,000カ所)
・クレジットカードでのチャージも可能!クレジットカードのポイントもたまる
・ポイント還元キャンペーンの還元率が高いのでお得


個性的な地域電子マネーがお金の地産地消を加速させる

 2030年には電子マネーなどを使ったキャッシュレス率が80%に達するという。そんななか、大手サービスに負けじと日本各地でさまざまな地域電子マネーが誕生。まさに群雄割拠の様相を呈している。

 その魅力は、限られたエリアゆえ可能な細やかなサービスにあり、地域の起業支援に活用される「ひがしかわユニバーサルカード」や、地域活性化のアイデアコンテストに活用される「アクアコイン」など、個性的なものが多数ある。子どもが登下校時、機器へタッチすることで親へ通知が届く見守り機能を備える「な・み・か」や、ウォーキングや特定健診受診でポイント抽選に応募できる「せたがやPay」、テイクアウト利用でポイントバックキャンペーンを行った「Okaya Pay」など、暮らしに密着したものも多い。チャージ上限を高く設定し、クルマの購入にも利用できる「さるぼぼコイン」や、子育て世帯への支援にも活用されている「あま咲きコイン」、来島者の観光利用に特化した「だっちゃコイン」と、それぞれ異なる特徴をもつ。また、もとからあるポイントカードに電子マネー機能が加わった「ハミングカード」のように、誕生の由来も多彩だ。ここで紹介した他にも多数の地域電子マネーがあるので、それらも参考に、我が街の地域電子マネーを育ててみてはいかがだろう。

★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2022 Autumn(秋号)に掲載されています。
「EGAO」をご覧になりたい方はこちらへ。

商店街活性化の情報誌「EGAO」

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